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中学・高校受験:学びネット

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2018/11 塾ジャーナルより一部抜粋

教える人がいなくても、自分でエンドレスに学び続けられる力を

 

神奈川県でも極めて低学力地区の川崎区。そこで「成績上位の子から下位の子まで、全員の成績を伸ばす」挑戦をしているのが岩沢学院(川崎市川崎区)だ。岩澤慎学院長は、ワンフロアで勉強する学年・教科もバラバラな生徒たちを、ほぼ一人で指導する。「すごい低学力地区なので、どうしても学習時間がかかります」と、小学生のうちから長い期間・時間をかけて『塾のいらない子ども』を育ててきた。川崎区の中でも勉強に関してはいちばん厳しい塾、と自認する岩澤学院長が、痛切に必要と感じることがある。「生徒が自ら学ぼうとする意志を持つこと。すべてはそこからです」。

 
     

岩沢学院(神奈川県川崎市)
学院長 岩澤 慎さん

プロフィール
53歳。地元で生まれ育ち、200m圏内にある実家は、母が主宰していたそろばん塾。「僕自身はそろばんに全く興味がなくて」。大学卒業後はイギリスに留学。(TEFL)外国語としての英語教授法を学ぶ。帰国後、「学校の先生より自由度が高い」と創設した塾は再来年で30周年を迎える。「自分の目が届かない生徒たちの成績が伸び悩むのは許せない」と全員に目が届く範囲の塾生数をキープ。

集団でも個別でもない
1対35の自学自習スタイル

 ある日の「授業」風景。教室中央に立つ岩澤慎学院長のミニカウンターに生徒が次々とノートを持ってやってくる。学年も教科もバラバラ。学院長がノートに目を通す時間は生徒一人当たり30秒程度。正しく採点されていないと「どこが違うと思う?」、正解していても「どうしてこうなるの?」、理解不足なら「これは教科書のどこに書いてある?調べて解説を書いてごらん」。矢継ぎ早に質問し、指示を出す。「基本的に生徒には自分で(勉強を)やってもらいます」。試験前の土日など満席になると生徒30〜35人を、朝から晩まで学院長一人が対応する。

 「いま神奈川県の公立高校入試問題は複雑で難しい。一問一答では容易に解けない、一つの誤答の裏に単元全体の未理解がある場合が多いんです」。それを生徒が「自力で」調べて、「自分で」理解できるように仕向けていくのが岩沢学院の「授業」だ。「集団指導のように『これが重要だぞー』とか『これはこう解くと楽だぞー』という指導は一切しません」と言い切る。現在の授業スタイルに移行したのは5年前。

 「トップ校を受験する生徒と、学力が低い生徒が同学年にいると、団体授業でも個別指導でも、学力差を埋めることはできないんです。学力の低い子に個別指導をしても、ものすごい時間が必要になる。現状のスタイルだと、各自のレベルに合わせたものが提供できますし、集中力も上がるんです」。

 小学生も中学生も「自分で調べる」授業スタイルの土台をつくるために、国語は記述問題中心のテキストを使い、音読も重視する。「できない子は正確に文を読むことができない、内容を理解することはもっと難しい。だから『自分で読む』力を身につけてもらいます」。生徒は語彙を調べ、ストップウォッチ片手に「正確に、時間内に」音読する訓練をしてから学院長の元へ行く。その上で「その生徒が知りたいことを知るための手段を的確に教えないといけない。生徒のやる気を削がないように『メンドクサイ』ことをやらせるために、僕もスキルアップしないといけないと思っています」。

●指導のポイント
どんなに長い文でも生徒自身で読むようにさせる。内容を理解できる読解力を身につけさせる。
「習うだけではダメ!

学校や他塾の先生から、薦められる塾!?

 岩沢学院の授業時間は長い。中学生は180分を週3回、復習が必要な生徒や、もっと先に進みたい生徒は更に3日通塾し週6日。小学生でも150分・週2〜4回の演習時間をかける。「なので『家では全然勉強しない』でいいんです(笑)」。この長時間に耐え得る演習量を提供するのが吉備学習システムだ。生徒は自ら演習プリントを出力する。難易度を自由に設定でき、弱点治療のための類題も豊富なので、定期試験前には1日でA4用紙500枚のひと束を生徒一人で消化してしまうことも。年間スケジュールをもとに学習進度を生徒と先生が共有。「何を勉強したら良いのか、今日はどの単元を学習すれば良いのか」中3の後半にもなると、生徒自身で全教科の学習管理ができるという。

 岩澤学院長は、ブログやツイッターで自ら情報を収集し、日本全国の「気になる」塾を見学訪問している。現在の「生徒が自分で勉強する」スタイルは試験前に採り入れていたが、同様のスタイルを行う沖縄県糸満市の塾「共学院」を見学した時に、成功の確信を得て「もうやるしかない」と年間スタイルに移行した。同時にそれは集団指導との決別になる。

 「今まで自分が積み上げてきたのは、『いかに生徒に理解させるか、定着させるか』。それまでも集団指導の技術や手法、システムを捨てることは正直、怖かったですね」。

 長時間学習へ変更したとき、集団指導の生徒は全員残ったが、個別指導の生徒には「そんなに勉強できない」と退塾者も出た。預かる時間の長さに比例して授業料も値上げしたが、変更前と比べると実は割安、と岩澤学院長。変更後に目に見える変化があったという。「生徒が自分で勉強できるようになりました。進歩を自覚できると次の段階に進める。『塾の要らない子』を育ててきましたが、より顕著になった。卒業後も独学で大学進学した生徒が何人もいます」。

 驚きなのは、公立中学校で「岩沢学院に通っているの? すごいね!」と同級生や先生から、塾生が褒められるということだ。「学力の低い子が、成績が上がるにつれて自信がついて、生活での素行が良くなっていく。その現象が代々続いているので学校の先生もウチの名前を覚えてくれたみたいです。他塾の先生が、ウチへの転塾を薦めてくれたり。ありがたいことです。どちらの先生も、僕は存じ上げないんですけど(笑)」

●指導のポイント
時間をかけて自分で学んだ分だけ、生きる学力がつく。学力の低い子ほど時間と演習量が必要。
ただし決して「教えすぎない」

 一昨年から高等部を開設。自習室と映像授業を用意したが、「ウチ育ちの子は『映像を見るのがメンドクサイ』って(笑)。自分でテキストを読む方がピンポイントで知りたいことを調べられるから速い、と言うんです」。だが高校の学習内容は難度が高く、勉強時間を確保する難しさがある。そこで、大学受験指導のスペシャリストを招き、自力で解決が難しいことを短時間で習得できる「スーパー個別指導」を導入。効率的に問題解決でき、自習のスピードと質が向上した。また、高等部の先生による特別講座「スイーツで学ぶ生物と世界史、味覚障害体験」・「ヘアメイク・アレンジから学ぶ化学と地学」を中学生向けに開講。「おいしいマカロンをどう作る?」から世界史や地学・化学に展開、中学生の好奇心と知識欲が大いに刺激されたようだ。

 「化学に全く興味が無かった子が『もっと勉強したいな』と思える内容でした。一つでも好きなこと・興味を持てることが出来たら、そこを突破口に勉強への意欲が生まれるはずです」。

 生徒が自分で学べる人間になるために――岩沢学院の挑戦は続く。

●運営のポイント
高等部は、学習内容の難度も高く、時間が足りない高校生に最短ルートで目標を達成できる学習環境をつくる

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