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2018/11 塾ジャーナルより一部抜粋

受験生は知らない、
少子化の中での私立大学の
事情と奨学金問題

 

個別指導学習塾 塾長 山本 陽一

 
     

 学校や学習塾、教育に関わる企業の関係者の方は、2018年問題についてはご存じであろうかと思うが、その2018年問題と政治的な動きを照らし合わせながら、近年の大学の事情を整理し、またお金に関わる奨学金問題、受験料、授業料など、塾経営者であり大学講師という立場から考えてみたい。

2018年問題とアベノミクス

 日本の18歳人口は、1992年の205万人から2009年には121万人へと激減したが、大学進学率27%から50%に伸び、 進学者は逆に増加した。2018年以降からは減少に転じて、2031年には104万人まで減るであろうと推測されている。 そして、大学進学者数については、2018年の65万人から2031年には48万人にまで落ち込むと見られていたのだが、 大学の数は1992年の523校から2018年では780校まで膨れ上がってしまった。 1991年に大学設置基準を緩和して以降、無作法に大学設置を認めてきたことのつけが今、回ってきている。 2017年の文部科学省調査では、定員割れをしている私立大学の割合は39・4%で、打開策として私立大学の統廃合・公立化を加速する動きもある が、それは時間がかかることである。

 しかし、大学経営に暗雲が立ち込めるなか、近年、状況が変わってきた。 それは、2012年第2次安倍内閣において表明された、「アベノミクス」である(表①参照)。

3の矢と大学についての関連

ここからは「アベノミクス」と大学についての関連を説明していくので表①を見て頂きたい。 まず、私立大学の経営に関わるのは3の矢「投資を喚起する成長戦略」である。景気を浮上させるには3の矢「投資を喚起する成長戦略」が 一番重要であったはずだ。しかしながら、柱とすべき大きな成長戦略は打ち出せず、「国家戦略特区」等では、景気を浮上させるには至らなかった。 その証拠に消費税は引き上げられないままである。

 「アベノミクス」が良かった点は、1の矢「大胆な金融政策」と2の矢「機動的な財政政策」で株価と地価を上昇させたことである。 しかし、それは政治的決断でできるものであり、国債の発行などは後につけを残すものである。

 そして、想定外であったことは、グローバル経済圏(都市圏の大企業)中心に焦点を当てても、中小企業、地方圏の方向へと トリクルダウンは起こらなかったことである。その反省からか2014年に3の矢「投資を喚起する成長戦略」に 「ローカル・アベノミクス」を付け加え、地方の人口減対策を打ち出した。

 その後、「アベノミクス」が道半ばなのか、失敗なのか、結論を出さずに、2015年に「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」3つの矢とした「新アベノミクス」が提唱された。

 特に「夢をつむぐ子育て支援」が教育行政に関わる事項で、出生率を上げるために子育てにかかるお金の負担を軽減させようと、 教育の無償化、奨学金の充実へと繋がっていく。

 また、追随するように2016年「まち・ひと・しごと創生基本方針2016」を示し、特色のある大学を地方につくり、学生を都市圏に集中させず地方に分散させることを打ち出した。

 このような政治的変遷が、後に述べる大学の定員問題や奨学金に関係することになる。

今、大学受験で何が起こっているのか

前述のように、学生を都市圏に集中させず、地方に分散させ、地方を元気にする方針を決め、また、文部科学省は東区内の私立大学に対して、 2019年度の定員増と学部新設を原則認めないとする大学設置基準を告示した(表②参照)。

そして、定められた定員を超えると補助金をカットすることを2016年から段階的に実施したのである。しかしながら、 その施策は地方圏の大学を活性化させるだけではなく、都市圏の大学にも波及することになる。 表②を見ると2019年まで、受験生にとって大学の合格がより狭き門となることが想像できる。 高校・塾の先生方は感じておられると思うが、昨今、この入学定員の絞り込みの影響で、明らかに大学の難易度が上がっている。

塾長の私には、塾生の通っている高校の難易度や、その子の成績を基準として、志望校への合格へ導くにあたり、どれだけの時間を受験勉強に費やせば よいかという経験則があった。しかし、ここ2年ほどはそれがあてはまりにくくなってきている。 また、受験生のご庭においても同じことが言える。

例えば、兄と弟が3歳違いで地元の同じ公立高校に通っていたとした場合、 「京都産業大学に合格をした兄とべて、弟の方が成績は少し良いので、弟も京都産業大学に合格できるはずだ」という想定があてはまらないのだ。 なぜ、そうなるのかは、表③を見て頂ければ理解してもらえると思う。分かりやすくするために、ここでは京都市内だけの モデルケースで説明をしてみたい。大学の入学定員は以下のようになる。

実数を示すと、同志社と立命館の入学定員の合計は13654人となる。2015年までであれば×1・2倍の16384名までを合格者として入学させることが できたのだ。その差は2730人。その2730人は同志社、立命館よりも難易度が低い龍谷、京都産業あたりに降りてくる。 また、龍谷、京都産業大学も他の大学と同様、合格定員の厳格化を強いられるので、合格者を絞らざるを得ない。 このように、下へ下へと降りてくるのだ。また、難易度が低い大学ほど入学定員は少ないという、受験生にとっては困難な事態となる。 とりわけ京都では大谷、京都橘が難しくなったといわれているが、それも納得できる。

また、日経トレンディ8月号では、全国規模で考えると、東京在住者ではなく、地方の優秀な学生が、東京の早慶上智をあきらめて関関同立を目指す学生もいるであろうと記 されている。正確な数は掌握しにくいが、東京よりも生活コストが安い関西圏の大学を選ぶことは、あり得る話であろう。

私は仕事柄、いろんな高校の先生と話をさせて頂く機会が多いので、大学の難易度が上がったことによる影響を高校の先生に聞いてみた。

京都の公立高校御三家の先生からは、「多くの学生が国公立大学を狙い、滑り止めとして有名私立大学を受験しますが、あまり大学定員の厳格化の影響 は感じません。」という返答をいただいた。また、ある京都の私立高校の先生は「明らかに京都産業大学、佛教大学の合格が難しくなったと思います。」 と述べられている。それらを踏まえながら、私の塾の塾生の合否も含めて考えると、「偏差値が60を超える学生が受験する大学よりも、いわゆる偏差値 45前後〜55前後のボリュームゾーンに位置する大学の方が影響は大きい」ということである。それは表③の各大学の定員数と重ね合わせて考えれば納得がいく。

このように大学入試が混乱を極める中、2019年度はどれだけ厳しいことになるのだろうかと危惧していたところ、少し方向性が変わってきた。

9月20日の日本経済新聞に「私立大学の入学定員超過 罰則『助成減額』追加見送り」という見出しで、合格者抑制の混乱を回避する為、2019年度の厳格化を当面見送り、 3年後をめどに実施の是非を判断すると報道されたのである。詳細は不明であるが、 「『助成減額』追加見送り」の言葉どお り「追加」という言葉に着目すると、 2018年の条件を維持しながら、 2019年はさらなる厳格化を求めな いという内容と解するのが正しいのだ と思う。 まだ情報が断片的で現段階での解釈 は難しいが、これ 以上、大学の難易 度が上がらないと 喜ぶのではなく、 十分に注意を払っておく必要がある。

お金の話・奨学金利用について

受験生に留意してほしいことは他に もある。それはお金の話だ。上記で述 べた「新アベノミクス」での「夢をつ むぐ子育て支援」は、出生率の上昇、 教育の格差是正をあげ、幼児教育の無 償化、大学等の進学に際して給付奨学 金の充実などが盛り込まれていた。大 学進学者には朗報かと思われたが、財 源不足を理由に、給付型の奨学金を受 給できるのは、住民税非課税世帯、生 活保護世帯の人、社会的養護を必要と する人のみとした(変更なし)。

日本学生支援機構 (JASSO)の奨学金

ここからは日本学生支援機構 (JASSO)の奨学金についての話 をする。大きく分類をすれば、先に述 べた給付型奨学金と貸与型の第一種奨 学金(無利子)・第二種奨学金(有利 子)がある。 現在、貸与型の奨学金の利用者は、 第一種奨学金(無利子)が約5 2万人、二種奨学金(有利子)が約8 2人お り、大学生の2・6人に1人の割合で 日本学生支援機構(JASSO)の奨 学金を利用していることになる。 グラフ①から分かるように、ここ5 年は第一種奨学金(無利子)利用者の 割合が増えている。それはローカル・ベノミクスを受けて、大学生の地方 定着の大義のもと、各都道府県で 100名の地方創生枠を別枠で設定し たことや、第一種奨学金(無利子)を 所得連動返還方式で返済ができるよう に改定したこと等によるものと推測で きる。

大学でかかる教育費負担

 次に、大学4年間でお金がいくらか かるのかを見ることにする。

前頁の表④のように、大学進学には 多大なお金が必要であることがよくわ かる。

2014年の国税庁の民間給与実態 統計調査結果によると、平均年収は、 1997年の467万円であったのに 対して、2014年では415万円と なっている。

そして、私立大学文系の授業料の平均を見ると、1 9 9 7年の62万9520円に対して、 2014年では74万4289円となっている(総務省統計局の年次統計)。年収と対比すると授業料の負担割合は上がっているのだ。

そう考えると奨学金の果たす役割は大きく、進学する目的をしっかりと持ったうえで奨学金を利用することが大事であることは言うまでもない。

奨学金を借りるまでのスケジュール

実際に奨学金を借りる場合、どのようなスケジュールとなるのかを見ていく。

前頁の図⑤ように、奨学金の利用希望者は、予約採用という形で高校3年5月〜6月に第一種・第二種奨学金を申し込むことができる(窓口は高校)。 また、10月〜11月には第二種のみ申し込みが可能となる。

もし春の予約採用の期間に進学を考えていなくて、秋の段階で進学することに改めた場合などは、秋に第二種の予約申し込みを高校で行い、 進学後に大学等で第一種へ移行することも可能である(在学採用:窓口は大学)。(※2019年入学者より秋に第一種奨学金の申し込みが可能になりました) ここで2つの注意点の指摘をしたい。

振り込まれる時期に注意

一つ目の指摘は、奨学金が振り込まれる時期である。 予約採用申込は4〜6月、在学採用者は4月〜7月のいずれかの月に本初回の奨学金が振込まれるということである。

結局、受験費用、入学金、春学期の授業料の振込時には間に合わないのである。よって、個人差はあれど、概算で約120万円から220万円程度のお金をつなぎ資金として準備しておか なくてはならない。

奨学金の借り手側の リスクを認識

二つ目の指摘は、無利子の第一種奨 学金を借りるのであれば、高校の早い 時期で3・5以上の内申点の保持が必 要ということである。ゆえに高校は早 いうちに奨学金についての説明を行い、 学生に早い時期から勉強を頑張らせる 必要がある。

また、第二種奨学金(有利子)につ いての利息について述べておきたい。

第二種奨学金は市場金利がどれだけ 上昇しようとも上限金利を3%以上に はしないという規制がある(借り終え た時点で適用金利が決定する)。ちな みに2018年3月に大学を卒業した 者の利息は0・2 7%である。これであ れば1 2万/月×1 2カ月×4年間=総額 576万円を借りたとした場合、利息 が0・2 7% であれば返済総額は約 596万円であり、上限の利息3%で 計算をすれば返済総額は約775万円 となる。この差は大きい(直近の1 0年 間では1・9%が最高)。 金利予想 はプロでも難しく、借り終わった時点で適用金利が決定されることにも注意 が必要である。

当然、奨学金を返済できるかどうか は、返済が可能な収入を得られるかど うかがカギを握り、ボーナスが出ない 派遣社員では奨学金の返済は困難であ ろう。

奨学金の利用は借り手側のリスクで あることを認識しておかなければなら ない。

塾は何をすべきか

親子間でのお金の話は難しい。奨学 金は本人が借りるものであり、他の教 育ローンなるものは親が借りることに なる。進学のお金を親が払うのか、受 験生本人が払うのかを十分に相談をし て進路を決めることが望ましい。また、 大学の授業料にかかるお金は想像しや すいが、入試にかかる費用が思いのほ か高いことに驚愕されるご父兄が多い。

たとえ「私立大学の入学定員超過  罰則『助成減額』追加見送り」が公表 されたにせよ、ローカル・アベノミク スが消えたわけではない。

混乱を避けるためにソフトランディ ングに導くための措置であると考える べきだ。

私はこれまで非常勤ではあるが、講 師として複数の大学で教鞭を執ってき た。今、大学入試が政治に左右されて しまっていることが気になって仕方が ない。

それらを踏まえて、最後に大学進学 の際の注意点、塾としての役割を箇条 書きで示してみたい。

①入試の時には、大学の思惑に巻き込 まれないこと

大学は生き残りをかけて、少しでも 多くの学生を獲得しようと試験の種類 を増やしている。回し合格をさせ、他 の学部に合格をさせるなどしている。 合格をすればよしと考えるのではなく、 入学する大学・学部が自分のやりたい ことと一致するかどうかをしっかりと 考えてほしい。

②入学してからは、就職をするイメー ジを自分自身で描くこと

大学に進学をした後で、シラバスを 一読しても理解ができず、履修科目の 相談に来る塾生も多い。入学の時期は 大学の事務局も忙しく、学生の相談に 手が回らない。それを手助けするのも、 大学に進学をさせた塾の役割であり、 ゼミの重要性なども理解させたいと思 う。また、卒業論文のテーマは、就職 活動の面接時に必ず聞かれることなの で、大切なことだと伝えたい。

③正社員としての就職を勝ち取るため の大学選び

2019年はさらなる厳格化を求め ないとしても、一番影響を受けるのは 一般入試の前期試験であろう。大学は ここで合格者を絞り込む。後期試験に ついても、合格者の大盤振る舞いはせ ず、他の大学の様子を見ながら補欠合 格を出して数合わせをすると推測でき る。やはり、長期戦の覚悟が必要であ ろう。

塾としてしなければならないことは、 まず、国公立大学も視野に入れて勉強 すべきか、科目を絞りこみ私立大学の みとすべきかを塾生と一緒に考える。

そして、最近、いろんな大学で実施さ れている、高得点配点方式での出願も 視野に入れるべきかどうかも考えなけ ればならない。また、大学の中には、 苦手な科目の点数の配点を下げて、採 点を行う試験を実施しているところも あるので、塾生の科目の優位性をしっ かりと判っていなければならない。 そして、大学の難易度の上昇により、 やむを得ず、滑り止めの大学に進学す る場合も想定して、塾生にとって、適 している大学であるかどうかの情報収 集と検証をしなければならないと思う。 それをしておかないと、塾生は就職活 動で苦戦して正社員を勝ち取れず、奨 学金の返済に苦労をする。そんな辛い 目には遭わせたくない。

やりたいことを決めるのは塾生自身 であるが、進学に関わるお金のことも 含めて、その相談にのれるように、ま ずは私自身の研鑽を重ねたいと思う。

塾生の中には小学生の時から入塾し て、大学受験までを塾に通ってくれる 子もいる。我々は、その塾生の人とな りを、または、その子の成長をみてい る。だからこそ、塾は有効なアドバイ スができ、塾生もそれを受け入れてく れる。

これからの塾は進学のために学力向 上だけを考えるのではなく、必要とあ れば人生の選択にも立ち会えるだけの 機能を有し、「学校」の補助的な役割 だけではなく、本来の「塾」・「寺小 屋」という言葉の語源に立ち返る必要 があるのかもしれない。


山本 陽一 氏 プロフィール

 1962年生まれ  大阪経済大学卒業、摂南大学大学院・同志社大学大学院修了 個別指導学習塾(堀川紫明・一乗寺)塾長 京都学園大学経済経営学部非常勤講師(准 教授) CFP®ファイナンシャルプランナー 日本FP学会・日本ソーシャル・イノベーション学 会会員 2018年より日本学生支援機構から派遣要請を 受けて、スカラシップ・アドバイザーとして、大学・ 高等学校の生徒・保護者に向けて奨学金の詳 細を講演している。

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