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2018/9 塾ジャーナルより一部抜粋

小学校英語教育第5回

 

AJC全国学習塾協同組合 理事長 森 貞孝

 
     

 文部科学省では小学校英語指導教 科化への先行実施の状況を調査した 結果、平成3 0年度は約3 0%の小学校 が全面実施時の授業時数でスタート したことが明らかになった。

 本年月から始まった小学校英語教 育の教科化への先行実施の状況につ いて文科省は5月8日調査結果をま とめ、公表した。発表によると、3 0 年度については3、4年生の移行措 置期間中の授業時数とされる「1 5時 間」が5 4%、全面実施の授業時数と される「3 5時間以上」が3 5%の小学 校で行われている。また3 1 年度は 「1 5時間」十数%減り、「3 5時間以上」 に移って、4 8%に増えるとしている。 5、6年生では、3 0年度は移行措 置期間中の授業時数とされる「5 0時 間」が6 3%、全面実施の授業時数と される「7 0時間以上」が2 9%の小学 校で行われているが、平成3 1年度に は「5 0時間」が小学校5年生では4 7%、 小学校6年生では4 8%に減って、「7 0 時間以上」が4 2%に増えるとしている。 (図①)

 2年後から完全実施する外国語教 育については、小学校3、4年で外 国語活動を行い、5、6年で外国語 科として教科化する。

 文科省では5月、全公立小学校1 万9千3百校余りを対象に移行措置 期間中の実施状況を調査した。

 平成3 0年からの2年 間については移行措置 期間中であるため、全 面実施後の時間数で指 導する必要はないもの の、3 0年の時点で、2 9 %もの小学校で全面実 施時の時間数で指導を 始めていることは、各 小学校で外国語指導に 積極的に取り組もうと している様子がうかが える。また外国語の時 間増のために、総合的 な学習の時間を減らす ことによって充てた小 学校は、小学校3、4 年生は平成3 0年度に2 9 %、平成3 1年度に2 5%。 小学校5、6年生では 平成3 0年度は2 8%、平 成3 1年度は2 4%といず れも3 0%に達していな い。 もう少し総合的な学 習の時間を利用するか と思われたが、やや意外な感じがした。


図① 文部科学省 移行期間中の授業時数調査の結果について

各県の取り組み方には差が

 ところで、中学生の英語力を見る と地域間の格差が非常に大きく、さ らに今回の先行実施についても取り 組み方の積極性が違うように感じら れる。

 文部科学省の発表した平成2 9年度 「英語教育実施状況調査」の結果を見 ると、英検3級以上相当の英語力を 有すると思われる生徒数の割合は、 福井県が6 2・8%、第2位がさいた ま市5 8・9%、第3位横浜市5 4%で、 割合の少ない島根県や浜松市、堺市 などの2倍を超えている。そのトッ プの福井県は、高校入試の際、英検 3級で+5点、準2級で+1 0点、2 級で+1 5点が入試の学力点に加算さ れることで英語に力を入れる生徒が 多いのだが、今回の先行実施につい ても、すべての小学校で先行実施を する。県内一斉の先行実施は都道府 県では福井が初めて。力の入れよう がわかる。

 福井県では、グローバルな社会で 活躍するための「使える」外国語教 育の推進を掲げて、小学校外国語教 科化を国に先行して実施するための 指導体制を整備し、指導案・教材の 作成、研修会などだけでなく中学生 高校生の外部検定受験を支援すると ともに、校内スピーキング評価を活 用する。中3生7319名、高校生 4322名の英検、GTEC等の受検 の支援を行っている。

 小学校から高校まで、積極的に英 語力を伸ばす試みが続けられている。

 今後このように積極的に取り組む 都道府県と積極的でない県との間に ますます格差が広がってくるのでは ないか。ただ現場の教員からは、慣 れない英語の指導や研修に多くの時 間を割くなど負担増の声もきかれる。

 2年後から実施される新学習指導 要領の最大の目玉がこの小学校の英 語教育改革。5年後、1 0年後にどの ような成果が、各県毎の英語力の違 いが出てくるのだろうか。

移行期間中の指導内容や教員の育成について

 7年前にスタートした外国語活動 は、音声中心で生徒の学習意欲や積 極性を引き出すなど高い評価を得て いるものの、中学生になっての文字 への学習に円滑に接続されていない との指摘も多い。発音や文構造の学 習にも課題があるともいわれている。 中学生として思考力や体系的な学習 を始める時期であり、従来の成果に 加えて、小学校高学年から「読むこ と」「書くこと」も加えた総合的な教 科学習を行い、中学での学習への接 続をはかる。また中学年では、「聞く こと」「話すこと」を中心とした外国 語活動を行うことで、高学年での外 国語学習への早期からの慣れ親しみ や動機付けをはかっている。

 今回の英語教育改革の大きな課題 は、授業時数と指導教員の育成だ。

 授業時数は3年から6年まで各週 1コマの増加に当たるが、これの対 策として、海外の各国でも実施され ているモジュール授業(1 0分から1 5 分程度の短時間学習)や、夏期・冬 期の休業時間の短縮、土曜日の活用 などを提案し、その対応については 各小学校に任している。総合的な学 習の時間をさほど削っていない状況 から、それぞれに工夫をして、他校 の出方を待っているのだろうか。

 教員の育成については、中高の英 語教員免許を有する教員を中心に研 修を重ね、指導力の専門性を向上さ せるとともに、学級担任とネイティ ブスピーカーとのティームティーチ ングなどの指導を行うことなどで当 面進みながら、計画的な研修、研究 など指導力の専門性を向上させる。 現場の教員の研修を繰り返すことで 乗り切っていく方向だ。

移行期間中の授業時数について

 移行期間中(3 0年度・3 1年度)の 授業時数は、文部科学 省が外国語教育におけ る新学習指導要領の円 滑な実施に向けた移行 措置案(参考資料) (図②)によると例え ば 29 年度小3生は、 30 年度4年生になった時 15時 間 、 31 年度5年生 の時は5 0時間、6年生 からは全面実施で 70 時 間としている。

 全面実施後に小3生 になる生徒は4年間で 210時間の指導を受 けるのに比べ、7 5時間 ほど少なくなっている。 ただし、各県ごとに独 自の時間配分を考え実 施している状況で、移 行措置案通りに行って いるとは限らない。


図② 文部科学省 外国語教育における新学習指導要領の円滑な実施に向けた移行措置(案)


森 貞孝(もり さだたか)プロフィール

 慶應義塾大学 (経)卒、私塾協 議会会長、全国 学習塾協会理事 長等歴任。全国 学習塾協同組合 理事長現職。著 書「英語ショッ ク」(幻冬舎刊)

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