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2018/7 塾ジャーナルより一部抜粋

医学部の募集人数と地域枠について

  私立・国公立大学医学部に入ろう.com 平野 晃康  
     

 5月号で、医師数は増えているにもかかわらず、へき地や不人気診療科では医師数が減少し続けるという医師の偏在について、医師の活躍の場の多様化について、医学部募集定数推移の予想について、そして、募集定数を減らしながら偏在を是正するための方策の一つとして実施されている地域枠入試について説明をしました。

 地域枠入試は、将来、指定された地域で医療に携わる意思がある受験生を対象とする入試で、全国の医学部が採用しています。自治体から奨学金が貸与される枠が多く、貸与額は私立大学では学費の半分以上(兵庫医科大学などでは全額)、国公立では学費全額に加えて生活費に相当します。ただし、奨学金の貸与を受けた場合は卒後に一定期間の就労義務があり、貸与を受けた自治体で9年程度の期間、医師として従事しなくてはなりません。

 医学部は6年制ですから、卒後9年が経過すると、現役で入学した学生は33歳になります。婚姻の平均年齢は男性が33・3歳、女性が31・1歳(平成27年:厚生労働省)ですから、義務年限中に生活の基盤が固まり、結婚をして地域に残りやすくなります。実際、厚生労働省の統計でも、出身大学の所在する地域で臨床研修を行った場合、その地域に残る割合が高いことが示されています。こうしたことから、地域枠には医師の偏在を是正する役割が期待されており、今後も一定数が地域枠で募集されると考えられます。

 本稿では、この地域枠入試について掘り下げ、その制度と将来のキャリアについてお伝えします。

地域枠入試とは

 地域枠入試の制度を分類すると、次の4つに分けられます。 (1) 出身都道府県の制限がなく、奨学金の貸与がないもの、 (2) 出身都道府県に制限があり、奨学金の貸与がないもの、(3) 出身都道府県に制限がなく、奨学金の貸与があるもの、(4)出身都道府県に制限があり、奨学金の貸与があるものです。募集人数のほとんどが 奨学金の貸与が行われる(3)、(4)の枠です。

 4分類の例をそれぞれ挙げます。

 (1) の例として、弘前大学の前期日程の青森県定着枠があります。この枠では、受験生の学年や評定平均値、出身地域には制限がありませんが、卒業後、弘前大学の定める研修プログラムに沿って臨床研修を行い、その後少なくとも12年間、弘前大学医学部附属病院または医学研究科関連施設で医療に従事する意思を持つことが出願の要件となっています。

 (2)の例には、佐賀大学推薦入試の佐賀県枠があります。この枠では、受験生は1浪までで、佐賀県内の高校を卒業または卒業見込み、かつ、佐賀県内の小学校または中学校を卒業した者を対象としており、卒業後、佐賀県内の臨床研修病院において初期臨床研修を受けることを確約する必要があります。

 (3)の例には、群馬大学推薦入試の地域医療枠があります。この枠では、受験生は現役で、評定平均がA段階以上という制限がありますが、出身地域には制限がありません。在学中は、群馬県から月額15万円が貸与されますが、卒業後、群馬県内の特定病院において、10年間診療業務につくことが義務付けられます。

 (4)の例には秋田大学推薦入試の秋田県地域枠があります。この枠では、受験生は1浪までで、評定平均がA段階以上、かつ、秋田県内の高校を卒業または卒業見込みの者を対象としており、秋田県から、入学金相当額28万2千円と、月額15万円(自宅通学者は10万円)が貸与されますが、卒後9年間、秋田県知事の指定する医療機関で医師として従事することが義務付けられます。

 奨学金が貸与される枠ほど義務が厳しく、仮に卒後の就業義務を果たせなかった場合は、貸与を受けた全額に利子を付けた金額を一括償還しなくてはなりません。

 また、地域枠入学者以外でも各自治体は奨学金受給生を募集しており、入学後に審査を受けて合格すれば、一般枠であっても受給することができます。

卒業後のキャリア

 医学部卒業後の9年間はキャリア形成にとって極めて重要です。地域枠あるいは自治体奨学金を受給して卒業した後に、医師として地域医療に従事する場合、その9年間のデザインは自治体によりまちまちで、何のデザインもされておらず、ただ、若手医師を地域に貼り付けることしか考えていない自治体もあれば、兵庫県や愛知県のように、技術習得と地域医療従事の期間をバランスよく配置している自治体もあります。

 例として愛知県の奨学金を受給した場合の卒後キャリアを挙げてみます。

 【愛知県】
医師免許取得後、すぐに愛知県が定める病院の中から初期臨床研修病院を選び、初期臨床研修を受ける必要があります。初期臨床研修を行う病院は赤十字病院や大学病院など充実した設備を備えており、高いレベルの研修を受けることが可能です。

 初期臨床研修後のキャリアは3パターン用意されており、〈表②~④参照〉診療科に制限はありません。ただし、内科系、外科系、救急科、麻酔科、小児科、産婦人科が望ましいとされています。

 赴任先病院も大都市である名古屋へアクセスしやすい場所が多く、研鑽を積むことができます。このように、地域枠を受験するかを決定する際は、卒業後の義務年限はあるのか。あるのなら、どのような臨床研修病院を選べるか。卒後9年間、へき地にずっといなければいけないのか。あるいは、後期研修などで大きな病院に赴任する期間もあるのか。などをしっかりと調べる必要があります。

 次回は、新専門医制度から見た受験校の考え方について解説します。


平野晃康 プロフィール

 名古屋セミナーグループ医進サクセス室長を経て、現在は私立・国公立大学医学部に入ろう.com代表。医学部受験の指導と正しい入試情報の普及に努める。入試情報誌「私大医学部入学試験を斬る2013」(名古屋セミナー出版)を編集・執筆、医療系データブック(大学通信)にコラムを寄稿。

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