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2018/7 塾ジャーナルより一部抜粋

小学校での英語教育の背景について

 

AJC全国学習塾協同組合  理事長 森 貞孝

 
     

 小学校で教科としての英語教育の先行実施が始まった。都道府県ごとにここ数年いろいろな準備がなされてきた。オリジナルな教材作りを行ったり、教員の研修、新規に補助要員を募集したり、海外に派遣したり、自治体によって様々な工夫がなされてきた。学習塾も積極的に動いたところも多い。小学生向けの教材も一斉に制作された。

 塾の経営者にとって、小学で指導が始まるからとか、他の塾でも小学生に英語のコースが出来たから当塾でも指導を開始するという話では保護者に強いインパクトを与えることはできない。今回は小学校英語をスタートさせる必要性と背景についてまとめてみたい。

グローバルな環境が大きな変化を遂げた

 コンピューターを含む電子技術の急速な進歩はここ20年で世界を一変させた。ウインドウズ98SEが出てくるまでは、まだ特殊な技術だと思われていたのに、今ではほとんどの事務机の上にノートパソコンが置かれ、14インチのブラウン管テレビが、37インチや50インチのデジタルハイビジョンタイプのテレビに置き換わった。世界の各地で起こったことが瞬時に映像として見られる時代になった。つまり今までは国内のニュースが中心だったものが、世界が国内のニュースと同次元で飛び込んでくるようになったのだ。

 さらに電子技術の進歩は、世界中のどこの都市に工場を新設して製品を作っても同じ製品を生産出来るロボットやオートメーションの技術革新が進化をとげつつある。

 先進国の企業は、より安い労働力を求めて、アジア諸国や中南米の各地に工場を展開し、それらの国々が急速に経済力を蓄え、生活水準を高め始めた。ブリックス、ネクストイレブンといわれるGDPが急成長している国々である。

共通言語の必要性が高まる

 それぞれの国がそれぞれの言語を持ち、地域で経済圏を作っている状態から、電子技術の進歩や世界各地に工場を分散させ、グローバルな大企業が続出するようになると、共通な言語の必要性が高まってきた。

 韓国の金泳三(キムヨンサム)大統領が1997年に国家戦略の中心に英語教育を置いたのは、世界各地に韓国企業が進出して経済大国としての地位を築くためには英語力が不可欠だと判断したためだ。この年、韓国はアジアの通貨危機の影響でウォンが大暴落し、倒産する企業が続出し、事実上の国家破綻に追い込まれた。金大統領は海外に活路を求めようと、小学校の3年生から英語教育をスタートさせた。

 かって先進諸国は植民地政策を取り、プランテーションで採れるコーヒー、胡椒、紅茶や綿などを本国に送っていた。

 今は安い労働力を求め、現地生産によって関税を含むコスト削減を狙って、世界のいたるところに工場団地が出来ている。しかも労働者も国境を越えて出稼ぎをしていくのが当たり前になってきている。

 どこへ行っても通じる言語があれば、労働者は国を超えて移動することが可能だ。ドイツ・オランダ・フランスなど母国語以上に英語は通じる時代になった。

 世界の共通語として、誰もが認める英語でコミュニケーションできることが、国際人として生きていくためには必要なツールになるのではないか。

英語を公用語としている国々

 英語を公用語としている国あるいは準公用語としている国は、調査の仕方でいろいろな数字が挙げられている。50ヵ国とも53ヵ国、さらには地域も含めれば89の国と地域ともいわれ、6億人から21億人前後と幅が広い。いずれにせよ、桁違いに英語を話せる人口が多く、世界の共通語といわれる。今から50年も前には、世界の共通語としてエスペラントを学ぼうという人々もいたが、今は話題にもならない。

 EFーEPI(英語能力指数)という調査がある。英語圏以外で英語能力の高さを比較したものを見てみると、ヨーロッパの国々は、オランダやスェーデン、ドイツをはじめとして高い国が多い。これを見る限り英語が世界の共通語として定着していることが理解できるのだ。

 2011年から調査を開始しているが、日本は毎年順位を下げている。調査対象が拡大し続けていることもあるが、他の国の英語力の底上げが続いている。その重い腰をようやく日本は上げようとしている。

英語を学問としてとらえるのか

 今更ではないが、英語を学問として捉えるかどうかも重要なことだ。

 母国語として英語を身につける国民は、通常会話としての英語は年少期に身につけている。日本人の場合も日本語は1、2歳位から幼児語を話し始め、4歳位には通常会話には事欠かない。文字よりも会話で覚える。幼稚園に上がる頃には、名前だけでも平仮名で書けたらという順序になるだろうか。勿論英語を母国語としている人々も同じだ。英語の単語の綴りを覚え、文法を学ぶなどということは、エレメンタリースクールに入った頃には全くあり得ない。日常会話は自在に操れても、綴りは間違える、大文字や小文字、筆記体もきちんと書けない子も多い。それでも親や友達とのコミュニケーションは問題ない。どころか十分過ぎるほど冗舌な子どもも沢山いる。

 今政府が考えている英語力とは、日本人が海外で共通語としての英語力を駆使して十分なコミュニケーションを取れることをまず目標にしている。現状、日本人は英語で意思を伝えることは出来ても、相手の相談に乗ったり、心から打ち解けて話し合ったりするコミュニケーション能力がたりない。文法的に正しい素晴らしい英語を書くことができ、話すことができる。素晴らしい。けれども一歩踏み込んで、心の悩みを打ち明けて相談するなどという英語は苦手だ。それではグローバルな人材とは言えないのではないか。英語を学問として中学から学ぶ従来のやり方では、単語のスペルを覚え、文法を学び、そして基本のセンテンスを身につける。第一の目標は学力、そして入試に合格する英語力だ。それをこの際一気に方向転換していこうと考え、話せる英語力を身につけさせる方向で英語教育改革が進んでいる。

本年から先行実施スタート

 都道府県ごとに差があるものの、3割を超える地方自治体が先行実施に踏み切り、文部科学省もそういった方向を奨励しているように見える。

 韓国も始めたときは、教師の英語力が追い付かなくて、保護者の批判も多かったようだ。それでも学院(塾)も積極的に乗り出し、20年たった今は、教師たちの英語力もぐんぐんついてきて、小学校の英語指導も充実し李明博大統領の時に英語指導のためのビジュアルな施設もすべての小学校に設置して、英語村も20を超えて韓国内に出来てきている。

 日本も現段階で、完全な体制はとても取れないものの、韓国同様スタートして試行錯誤を繰り返しながら、できるだけ早く共通語としての英語を、コミュニケーションを取れる英語を指導していきたいと考えているようだ。

 インバウンドの外国人観光客がまもなく三千万人を超え、東京オリンピックの頃には目標の四千万人に近づくと考えられている現在、共通語としての英語力を身につけてたグローバルな人材が、次々に輩出できる素地を官民一体となって今作りつつある。

シンギュラリティの時代はむしろチャンス

 2040年頃にシンギュラリティ(技術的特異点)の時代がやってくるといわれている。AI(人工頭脳)が今まで人がやってきた仕事を肩代わりするようになって、人が今までやってきた多くの仕事がなくなる。大量失業の時代を迎えるという。

 一方で日本は出生数の落ち込みが続き、50万人台という危機的な数字も現実的なものとなりそうだ。少子化の結果大量失業ではなくて、限られた子どもたちの双肩に大きな活躍を期待したい。

 この時に世界の国々の人々のリーダーとして活躍できる人材として、共通語の英語を駆使できることは大きなメリットがある。大きな未来へ向かって今一歩を踏み出すチャンスとして小学生の英語教育をとらえたい。

 保護者会で、小学生の英語教育をスタートさせるときに、塾はどういう考えで英語教育をやっていくかについて話す材料として、まとめてみた。なお、拙著「英語ショック」(幻冬舎刊)を書店やアマゾン等でお求めいただければ、いろいろな環境や背景がより詳しく理解できます。


森 貞孝氏プロフィール

■慶應義塾大学経済学部経済学科卒業

■ 全国進学指導協会・事務局長、会長、私塾協議会・会長、公益社団法人全国学習塾協会・副理事長、理事長を歴任。現在、全国学習塾協同組合・理事長。塾ジャーナルに「コラム」執筆中

[現職]

 全国学習塾協同組合・理事長、私塾三田会・顧問、株式会社日進研・名誉会長

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