「困った、困った、こまどり姉妹」「しまった、しまった、島倉千代子」は、パチパチパンチで有名だった吉本の芸人、故島木譲二さんの持ちネタだ。
塾生に「寒うぅ」と言われながらも、私は困惑したときによくこれらの言葉を発する。そして最近は、「困った、困った…」「しまった、しまった…」と頭を抱えることが多い。
新聞チラシが効かない
今年の春の塾生募集ちらしは、私にしては非常に良いできであった。知恵をしぼったキャッチコピーは近来にない訴求力。写真は写りもキャッチとの整合性も完璧。ごちゃごちゃしているのがうちのチラシの欠点だったが、今年は簡にして要、だれが見てもこれなら問合せ殺到…。
そう思った私は、二月に四回、新聞に折り込むことにした。印刷費に三十万円、折込み代に二十万円で、計五十万円。安い軽自動車が買える金額を投入して、外装がボロボロに剥げたクラウンに二十年以上乗り続けているこの貧乏人が、勝負をかけた。
結果、期待していた「チラシを見ました!」の電話だが、何時間待っていてもシーン。やっとお一人、孫のためにとおじいちゃんが問合せをしてくださっただけ。もしお孫さんが入塾してこられたら、「おお、わが軽自動車君!」と呼んでしまいそうだ。
わが塾生の新聞購読率は3割以下、特に核家族の購読は稀で、新聞を読んでいるのは圧倒的にお年寄りが多い。わかってはいたが、他にどんな有効な宣伝方法があるだろうか。
しかも、特別成績が良い途中入塾者のご家庭に限って、新聞をとっておられることが圧倒的に多いときている。
ううん、この中年に、どないせえっちゅうねん?
そして新聞チラシは高すぎる
新聞の折り込みチラシの世界は業界ぐるみの詐欺が疑われる伏魔殿だという記事を、時々週刊誌等で見かけることがある。例えば発行部数約六百万部を公称する朝日新聞だが、その約三割はいわゆる押し紙だと証言する人もいる。噂通りだとすると、実際に家庭に配達されているのは約三分の二の四百万部だということになる。
私も過去に、折込み代を支払いに立ち寄った販売店で、前日に折り込まれたはずの自塾のちらしが作業場の隅に相当部数積んで放置してあるのを見たことがある。
ところが、新聞広告の掲載料は公称発行部数をもとに算出される。折り込み広告を出す私たちも、新聞販売店が公表している配達部数(それを証明する書類や証拠はない)に応じた折り込み料を新聞販売店に払っている。
さらに、印刷会社は折り込み仲介業者が外部に発表している部数分を印刷して、それに応じた印刷代を私たちに請求する。
大損をしているのは私たち広告を依頼したものだけで、新聞社も、広告代理店も、新聞販売店も、折り込み代行業者も、印刷会社も、嘘の数字を基礎にした売り上げで成り立っているのではないかという疑念は、拭いきれない。
嘘の広告代を払うそ(払うぞ)なんちゃって。
資料請求に喜ぶなかれ、よくよく思料せよ
一年前、塾のホームページの作成業者さんを、一月の関西教材フェアに出展されている㈱ノアングの『エディブロ』に替えてみた。するとなんと、以前のホームページだと数か月に一回だった問合せや資料請求が、目に見えて増えてきた。多い時は一週間に一件くらいの割合で資料の請求がある。
しかし、前のHPのときも感じていたのだが、塾のサイトを通しての資料請求の場合、引き続いて体験授業の申し込みがあったりすることはあまりない。メールで返信しても、リーフレット類を郵送しても、なしのつぶてがほとんどだ。
こちらからの返信メールの文面に失礼があったのだろうか、あるいは問合せの翌日に郵便局から送った資料一式がよくなかったのだろうかと、最初は思い悩んでいろいろ試行錯誤してみたものだが、今は相手側にも原因があるのではないかと思うようになってきている。
業者が勝手に送りつけてくるダイレクトメールと違って、ご依頼があったから郵送費もばかにならないのに手間ひまかけて送っているのに、その後、完全無視ってひどくないですか?
実際の生活で資料を家まで届けたら、どんな人でもありがとうの一言くらいはあるだろう。Twitter などのSNSで、匿名に甘えて実生活ではさらけ出せないような人間性を垣間見せる人にたまに遭遇するが、それと同じような違和感を、ちょっとだけだが感じてしまっている。
『塾ナビ』で、資料請求や体験申込みがあるたびに高額の手数料を運営会社に払っている大手塾さんは、こういった感想を持たないのかな?
資料請求は『塾検索サイト』の飼料?
尽くしすぎたら下に見られる
私は本当に人を見る目がない。また、「義を見てせざるは勇無きなり」で、ついついしなくてもよいお節介をしてしまう。
さらに、よかれと思ってしたことがかえって相手を増長させてしまって後で苦い思いをするという経験を、何回繰り返してもまたやってしまう。
数十年前のことだが、クラスの中で成績が芳しくない数人のお母様方が、そろって相談にこられたことがある。「特別に補習をしてもらえないだろうか?」というご相談であった。
偶然だが全員が上の子も元塾生で、下の子も是非ということで入塾されてきたという経緯があった。常連さんを大事にというのはサービス業のイロハのイであるし、成績が良くならないのはすべて塾の責任だと思っていた私は、体があいている土曜日の午後に、毎週無料で二時間、補講をした。そして数か月後、突然一本の電話。
「先生、子どもたちが皆、行くのが嫌だと言っています。」の一言だけのお電話で、あっけなく全員が退塾。
さらにその何年か後、そのうちのお一人の方が、「先生、末の子を入塾させたいのですが。」とにこやかな顔でお越しになってこっちはポカーンというオチまでつくのだが…。
これに類した失敗を羅列したらキリがない。
数年前も、特進クラスでの残留が危うい私立中学生を、またまた休養日の土曜日に無料で追加で見ましょうとやってしまった。その子は来たり来なかったり、進級テストの前の週も学校で友達と勉強するからと欠席。結果は降級。
数日後の授業後、かかってきましたがな、お父様からのお怒りの電話。「お前が見ていた数学はましやったが、英語はさっぱりやないか!担当していた英語の個別講師をいますぐ連れて謝りに来い!玄関で土下座せェ!」
最後に「責任を認めるなら誠意を形で見せんかい。」と禁句をおっしゃったので、強要罪、恐喝罪を匂わせて無事話を打ち切ったが、何度失敗しても懲りない自分のほうに腹が立った。
また下に見らることをした、てへ、ペロ(舌)
こんな私が、「塾長、附属高校から大学への進学があやうい塾生を見てやっていいですか?もちろん無料で、バイト代もいりませんから。」という学生講師に、「君な、サービス業でいちばんやったらあかんのは無料奉仕なんやで。」と偉そうに語っているんだから、笑うでしょ?
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