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2018/5 塾ジャーナルより一部抜粋

生き残るため「垂直展開」と多角化へ
外国人社員に触発され、社内が活性化

 

株式会社 学凛社 代表取締役 中野 耕治さん

 
     
 東京・国立市に本社を構える学凛社。同社が運営する「ファインズグループ」は幅広い年齢層を対象に、集団指導塾や個別指導塾、学童クラブにe-ラーニングなど様々な教育事業を展開している。今年4月には日本語学校を開校。留学生の受け入れを推進する一方、社内では外国人社員を積極的に採用するなど、国際化も進めている。開塾から15年、常に新しいステージを目指す代表取締役の中野耕治氏にインタビューした。

53歳で起業様々な教育事業を展開

―― 開塾のきっかけを教えてください。

中野 開塾は2004年、53歳の時でした。元々大手塾で働いていたのですが、54歳までに起業しようと決め、準備をしていました。当時すでに少子化により、塾業界のマーケットは縮小していくと考えられていましたから、周囲からは「塾は衰退産業だ。独立なんて何を考えているんだ」と猛反対されました。でも、私はかえって反対されることの方が成功するだろうと、前向きに考えていました。

 起業までの数年間は塾で働きながら、米国の経営学誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」を読んで、経営について勉強しました。間違って英語の原書が届いてしまったのですが、辞書を引きながら読んだことで、かえって内容をじっくり読み込むことができたと思っています。

―― 開塾されてからは、少人数クラスの「次世代ゼミ・ファインズ」、「個別指導・フィオネス」、個別とミニ集団、映像を組み合わせた「フィスゼミ」と様々な形態の塾を開校されています。同時にe‐ラーニング教材の開発やオリジナル映像授業の配信、さらには学童保育と幅広く教育事業を展開されています。

中野 後発の私達が、校舎数を増やすことで事業を拡大していくことは資本力や人材面からも無理だと思っていました。そこで、生き残るために考えたのが「垂直展開」です。2007年から学童クラブ「アウラ」を始めましたが、学童保育はまさにその発想です。

 学童クラブは現在、都内をはじめ神奈川、千葉、埼玉に10ヶ所まで増えました。預かるだけでなく、英語やそろばん、ロボット教室、習字といった習い事も行っています。中学受験を希望しているお子さんには、ファインズを利用してもらい、授業がある時にだけファインズに移動し、その後はお迎えまでアウラで復習することも可能です。保護者の方には「学習塾が母体の学童クラブ」という点が支持されていると思っています。来年もすでに3校の開校が決まっています。

今こそ塾でアクティブラーニング

―― 御社のチラシには「異次元教育開始 教育制度改革のその先をファインズは目指します」と書かれていますが、どのようなことに取り組んでいるのでしょうか。

中野 今、塾ではアクティブラーニングをやろうとしています。講師が一方的に教えるだけのプッシュ型授業では、これからの時代、塾として生き残るのが難しいと考えているからです。

 取り組みの一環として、昨年から塾内のアクティブラーニングの模擬授業大会を実施しています。また、アクティブラーニングを取り入れた年間の教案を各教科の講師同士で話し合って作るよう、本部主導で進めているところです。 当塾では昨年から、教育開発出版の新中学問題集「数学」の英語のテキストを使い、ダブルティーチングとして中学生に英語で数学を教えています。月曜日に数学で正負の数をやったら、水曜日に全く同じ内容を英語で授業するといったスタイルです。 「1×1」や「何分の1」を英語でどう表現することから教えていますが、中学1、2年生が数学の専門用語を覚えるまでには、まだまだハードルが高いですね。軌道に乗るまでには4、5年はかかると考えています。

―― なぜ、塾でアクティブラーニングをやろうと?

中野 学校が荒れていた時代、熟は学校よりも授業がわかりやすく、成績を上げてくれるところとして支持されていました。しかし、今は学校も工夫をこらし、面白い授業をしています。

 加えて、学校でアクティブラーニングを行うようになったことで、今では塾は学校の基礎学習を補完する役割を担うようになってしまいました。アクティブラーニングを有意義なものにするには、基礎知識が必要です。しかし、今の学校の授業時間数では基礎的なレベルの学習をやるには時間が足りません。その足りない部分を塾が補っていると感じています。

 そうした補完塾に徹する考え方もありますが、基礎レベルの授業ばかりやっていると、講師のレベルが上がりません。私はそれが嫌なんです。長い目で見た時、うちの塾ではそれは好ましくないと考えています。

介護施設で働きながら、日本語学校で学ぶ

―― 昨年10月、ダッカに日本語学校を開校されました。経緯を教えてください。

中野 以前、開倫塾代表の林明夫先生に誘われ、経済同友会の教育経営品質研究会に参加させていただいたことがありました。そこで「日本は今後教育サービスを輸出していくべき」という話を聞き、非常に刺激を受けました。そのことはずっと心の片隅に残っていました。

 その後、ある大学から留学生の受け入れについて相談を受け、バングラデシュの方を紹介されました。その方はバングラデシュ独立の時に両親に連れられて来日し、その後、日本の大学を卒業して事業家として成功した方でした。

 その方がダッカの自社工場地に日本語学校を作りたいということで、2年半前に初めてバングラデシュを訪れました。現地では日本では東大に当たるダッカ大学を卒業しても、仕事がなく畑仕事などをしているような方も多くいました。その時現地で面接を行い、5人を日本に留学させました。

 2017年10月にはダッカ学習センターをオープン。今年4月からは日本でも日本語学校をスタートさせました。国内では東京都・羽村市、名古屋に市も順次開校予定で、3校体制にしたいと思っています。

―― 御社の日本語学校の特色は何でしょう。

中野 留学生には日本の介護施設で働くことを条件に授業料を抑え、分割払いにできる制度を設けています。

 今回、ベトナムからの留学する学生達には来日前に面接を行い、実際に働く介護施設も決めています。奨学金も与えました。

 さらに人材サービス会社と提携し、留学生を採用した企業が、卒業後の就労年数に応じて授業料を代わりに支払うシステムも作る予定です。授業料を免除してもらう条件として、留学生は日本語能力検定試験や資格取得をクリアする必要があります。

 こうした育成の仕組みを作ったのは、優秀な学生が貧しくて留学できなかったり、大学を卒業しても就職できなかったりする現状をアジア各国で目の当たりにしたからです。

 今のままでは留学できるのは現地の富裕層だけ。その他の学生は学費のためにアルバイトに精を出すしかなく、結局、不法滞在者を生み出してしまいます。彼らの本当の願いは、日本で就職し働くこと。それを叶えてあげたいと思っています。

 また留学できない生徒のために、日本語のe‐ラーニングも開発しました。解説は日本語、英語、ベトナム語、ウズベキスタン語、ロシア語で見ることができます。今後はミャンマー語、インドネシア語も追加する予定です。

 これを使えば、現地にいながらスマホで日本語を学ぶことができるようになります。9月までには日本人のネイティブによる解説授業も見られるようにしたいと思っています。

今後はワールドワイド学凛社へ

―― 日本語学校を始めたことで、グループ全体に変化はありましたか?

中野 3年前の1月、私は「これから学凛社はワールドワイド学凛社になる」と宣言しました。当時は社員の多くは「何言っているの?」と思ったでしょうが、半年後には外国人社員を2名採用しました。

 現在、社内には外国人の正社員が4人います。2人がベトナム、あとはミャンマー、ウズベキスタンの出身です。その他英語講師として7名外国の方がいます。全従業員数は110人ですから、今では1割が外国人。e‐ラーニングアプリも彼らが留学生目線に立って開発してくれています。

 そうした社内になったことは、日本人の社員にとってもいい影響がありました。様々な宗教の方がいることから、まずお互いを認め合うようになりました。それに日本人は曖昧な表現をしますが、それでは彼らには通じませんので、はっきり表現するようにもなりましたね。

 また、彼は日本人が置き忘れてしまったものを持っています。がむしゃらに頑張る姿勢、上昇志向と表現したらいいでしょうか。

 あるベトナム人社員は6人兄弟の長女です。上の兄3人と父親は農業に従事し、そのお金で彼女は大学に行くことができました。兄弟の中で大学進学を果たしたのは彼女だけです。彼女は家族の期待や応援に応えるため、もっと認めてもらおうと努力し、アピールをしてきます。

 私は、それは素晴らしいことだと思い、わざと日本人スタッフの前で言わせています。すると日本人社員も啓発され、会社の中が少しずつ変わり始めました。このことが外国のスタッフを入れて一番よかったと感じていることですね。

―― 最後に今後の展開について教えてください。

中野 日本語のe‐ラーニングシステムを海外の大学や高校、団体に広げていきたいと考えています。将来的にはこの事業の売り上げが塾事業の売り上げを上回ると考えています。

 10年ほど前から、経営方針をまとめた冊子をパート・アルバイト含めた全員に配布しています。これは社内の末端まで、私の考えを浸透させるために作ったもの。朝礼で読むだけでしたが、今では自分の意見や感想を1つ1つ発表するようになりました。

 中小企業は後継者難。我が社もそれに漏れません。小さな会社ですが、事業数が多く、全部を統括するのは難しい。私の考えを理解した上で会社運営をしてくれるなら、国籍は問いません。外国人社長もありえると考えています。

 海外に目を向けたことで、そうした考えが生まれました。日本の教育においてアクティブラーニングの重要性も切実に感じるようになりました。外から日本を見ることは大事なことだと実感しています。

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