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2018/3 塾ジャーナルより一部抜粋

~永遠に未完の塾学~

第21回 老兵は死なず、ただ消え去るのみ

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

 私の手元には定期的にフリーペーパーの『塾と教育』や『私教育新聞』が送られてくる。業界の近況が要領よくまとめられていて大変参考になるのだが、掲載の広告や挟みこまれたリーフレットの中に「塾の生き残りをかけて」云々の文言があると、カチンとくる。

 「なんやねん、俺たちはもう死にかけかいな…。」と思ってしまうのだ。「死にかけ」と評価されているからこそ、「生き残り」の言葉がキャッチコピーになると思われているのであろう。

しかし、死にかけではあるな

 しかし、よくよくわが業態を観察してみると、どう見ても死にかけではある。

 まず、フランチャイズ塾や大手塾の出店以外に、若い人の新規の参入がほとんどない(少なくとも、私の住んでいる市ではこの二十五年間、新しくできた個人塾は皆無だ)。

 また、以前は塾長が老いるとその子が後を継いだものだが、最近は塾長の引退で塾も閉まる。

商店街壊滅→イオン→アマゾン

 どこの地方の街にもあったアーケード屋根の個人商店街が、店の扉がおりたままのシャッター通りと揶揄され始めたのは二十年ほど前だっただろうか。

 大型店舗を規制していた「大規模小売店舗法」が廃止され、新法の「大規模小売店舗立地法」の制定でイオンなどの郊外型ショッピングセンターの出店ラッシュが始まったのが1998年だから、おそらく私の記憶で間違ってはいないはずだ。

 個人商店が淘汰され、郊外の、大型でおしゃれなイオンモールが近隣の庶民の社交場となった時代の到来である。

 ところが、その一世を風靡したイオンモールが今や次々閉鎖されつつある。

 その原因は、おそらくアマゾンだと思われる。

 インターネットで検索すれば、国内最安値で、店舗にあるものとまったく同じ商品が購入できるのだから、わざわざ店まで自動車に乗って出向く必要がない。イオンに行くのは時間の無駄だ、ということになる。

 車が売れなくなるのも当然だ。

塾の世界は二十年遅れ

 最近、同じ道を塾の世界もたどっていることに気づいた。

 当地大阪では、類塾と馬渕塾の頂上決戦を勝ち残った馬渕塾の一強時代が到来した感がある。他業種に二十年遅れて、各地域で独自の指導法で長年頑張ってきた個人塾が、一強
塾に上位層をごっそり抜かれて青息吐息、次々にシャッターをおろしつつある。

 しかしさすがの一強塾も、各出店出店すべての校舎を最難関校の受験生だけで固めることは困難だから、ターミナル駅の拠点校舎に各校の最優秀者たちを集めることになる。

 重点校舎のイオンモール化である。

 塾の世界が、他業種で起こった変遷に二十年も遅れたのは、塾という仕事がほとんど人的要素だけでなりたっていて、商品や物理的サービスが僅かしか介在しない業態だからで
あろう。

 しかし栄枯盛衰は世の常、やがて塾のイオンモールにも次々閉鎖の波がやってきそうな予感はある。

塾業界のアマゾンになるのは

 では、塾業界の新しい覇者、アマゾンになるのはどこだろうか?もしくは誰だろうか?

 おそらくそれは、今、現に存在している「何か」ではないような気がする。

 最近あちこちのSNSで見かける有名な写真がある。アマゾン創業時の、創業者とその事務所の様子を撮影したものである。

 今や総資産十二兆円といわれる世界一のお金持ちジェフ・ベゾスだが、たった二十四年前にはこの部屋で、この姿で、仕事をしていたのだ。

 塾の世界のジェフ・ベゾスも、今は世界のどこか粗末な一室でディスプレイを覗いている誰かであろう。そしてその誰かの武器は、おそらく、今あるものより数段階ほど進化したAIであろう。

 AIほど学習指導と相性の良いものは、おそらく、ない。

「行列ができるパンの店になれ」

 死にかけの個人塾を救済する策として推奨されている理論の中でわりと説得力を持ったのは、「各地に必ず一店舗はある『行列のできるパンの店』になれ」という勇気づけだ。

 確かに、こんな辺ぴな場所でという立地で、開店前からパンを求める人が店のドアの前に並んでいるパン屋さんは珍しくない。相当遠方からでもわざわざおいしいパンを求めて買い求めに来るお客さんで繁盛していて、しばしばテレビで紹介されたりもする。

 初めは、「なるほど、これこそ個人塾の生き残る道だ!」「どこにもない美味しいパンを創ればいいのだ」と思ったものだが、最近の私は懐疑的だ。

 「どういう新製法が発見されて、長いパンの歴史を覆すような絶品のパンがあちこちで生まれるようになったの?」「実はバターをたっぷり混ぜて焼くことでふっくら感を醸し出しているだけじゃないの?」「中身より、でっちあげに近い評判で一時的に流行っているだけじゃないの?」

 パンは、おいしいと思って食べることができたらそれで誰も文句を言わないが、塾の場合は塾生のその後の人生が塾の真価を決める。パン屋さんとは同列に論じられないのだ。

卓越した学習指導力こそ

 私が住んでいる市に、かつて大阪の河内地区をほぼ制覇したK塾の創業者、Yさんが住んでおられた。何度かお話をする機会があったのだが、忘れられないのは、「各駅々にはそれぞれ強い個人塾がある。最上位の生徒はそんな塾に任せておけばよい。我々は数の多い二番手、三番手以下の生徒を集めて、教育産業として繁盛すればそれでよいのだ。」というYさんの持論である。

 私は個人塾が末永く繁盛する方策は、このKさんの言葉に尽きると思っている。どの世界でも、すぐれた指導者は唯一無比の指導の技を持っている。

 YouTube で数千万人の閲覧者が熱狂し、荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」を三十二年ぶりにヒットチャートの一位に押し上げたのは、登美丘高校ダンス部の指導者あかね
コーチの指導力に尽きる。

 スポーツの世界では当たり前の「卓越した指導力」がすべてを決するという真理を、私は塾の世界で追い求め続けたい。それしか個人塾が生き残る道はないと思っている。

 いやいや「生き残り」ではない。

 AIをも道具として駆使できる卓越した学習指導力こそが塾を新しいステージに引き上げることができる、と言い換えたい。

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