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2018/1 塾ジャーナルより一部抜粋

塾の日シンポジウム 2017 佐賀大会
故きを温ねて新しきを知る ―幕末・維新から150年
~ 平成の今、輝く未来を高らかに語ろう ~

     
 公益社団法人全国学習塾協会が主催する「塾の日シンポジウム2017」が10月9日に開催された。同協会は学習塾の健全な発展を願い1989年に10月9日を「塾の日」と制定。第29回目となる今回は「故きを温ねて新しきを知る」をスローガンに掲げ、明治維新から来年で150年を迎えるのにちなみ、維新に大きく貢献した「肥前」、佐賀藩の地での開催となった。特別講演では、佐賀県出身のがん研究で世界的に知られる東京大学大学院の宮園 浩平教授ががん研究の現状と将来について分かりやすく解説。また、教育に力を入れた佐賀藩が近代日本医学に果たした役割を振り返った。

第1部
塾の日記念式典

 第1部の記念式典は、全国学習塾会理事の野中績宏氏が「九州での大会は6年前に日本の西洋文化発祥の地である肥前の国・長崎で開催。今回は近代日本の科学と医療の発展に尽くした佐賀藩肥前の本丸での開催となり喜ばしい」と「開会の辞」を述べ、幕を開けた。

 最初に全国学習塾協会を代表して安藤大作会長が挨拶に立ち、4年半前に公益社団法人に移行する際に掲げた2つのミッションがいま真価を問われていると述べた。その1つはコンプライアンスの重視である。従来の「学習塾における事業活動の適正化に関する自主基準」に加え、労働環境健全性の面においてもすでに「安心塾バイト認証制度」を導入し、取り組みを始めている。ミッションの2つ目は、学習塾が民間の学力向上を推進する資源であること。13年前から公教育との連携授業を始め、現在では全国7千ヵ所において連携が展開されている。最後に安藤会長は、「今、日本の教育が大きく転換されようとしているが、いかに教育が変わっても常に子どもたちに寄り添い、民間の学力向上を推進する資源であることを全うする。民間教育の一翼として今後も社会のお役に立てるように活動していく」と力強く述べて挨拶を締めくくった。

 続いて佐賀大会実行委員長の中垣量文氏は、「佐賀藩10代藩主の鍋島直正が教育に力を入れた結果、近代日本の礎を築いた賢人たちが育った。教育が未来をつくるという証左である。これから変化の激しい時代を迎えるにあたり、我々教育者だけでなく社会のすべての大人が子どもたちの輝かしい未来のために、子どもたちに真摯に向き合っていかなければならない。このシンポジウムがそのための小さなきっかけとなることを願う」と挨拶を述べた。

 次に来賓の経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループサービス政策課長の守山宏道氏、文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室室長の伊佐敷真孝氏、全国学習塾協同組合理事長の森貞孝氏がそれぞれ祝辞を述べた。守山氏は、生産性向上と人材育成は重要なテーマであり、学習塾業界を始めとする教育サービス産業とともに「人づくり革命」をリードしていきたいと述べた。また伊佐敷氏は学習塾と公教育の連携に言及し、地域と学校が協働して子どもの成長を支える地域学校協働活動への尽力を期待した。森氏は、昨年11月に「協同組合」の思想と実践がユネスコの「無形文化遺産」に登録されたことを報告し、「協同組合の一員として胸を張り、この塾の日に、子どもたちを未来の日本を担う人材へ育て上げたいという思いを新たにしている」と述べた。

 続いて表彰式が行われ、自主基準遵守塾39事業者のうち10事業者が表彰式に出席。壇上で安藤会長より表彰状を授与された。また第27回全国読書作文コンクールの受賞者が保護者とともに全国各地から来場し、小学生の部で大賞を受賞した大沼まこさんを始めとする8名が登壇。会場から大きな拍手が送られた。

 最後に山下典男副会長が「今後も民間教育の発展に力を注いでいきたい」と閉会の辞を述べて第1部記念式典を終了した。

第2部 特別講演
「世界のがん研究の現状と将来の方向性」

東京大学大学院医学系研究科分子病理学
宮園 浩平 教授

 第2部からは地元佐賀県の私立弘学館高校の生徒たちも会場に詰めかけ、東京大学大学院の宮園浩平教授による講演が行われた。

 宮園教授は佐賀県鹿島市出身。鹿児島のラ・サール高校から東京大学医学部に進み、卒業後は内科医を経てスウェーデンでがんを研究。がんの抑制と促進という二面性を持つタンパク質「TGF-β」研究で世界の第一人者として注目されている。日医医学賞や紫綬褒章、日本学士院賞などを受賞。2015年より日本癌学会理事長を務めている。

■近代日本の医学に果たした佐賀藩の役割

 東大医学部は2008年に創立150周年を迎え、これまでの歴史を改めて見直そうと『医学生とその時代』という本を出版しました。その最初に登場するのが佐賀藩出身の伊東玄朴先生と相良知安先生です。

 伊東先生はシーボルトに師事し、日本で最初に種痘を接種して成功させました。種痘を日本に広げたことで知られています。1861年に現在の東大医学部である西洋医学所を創設。東大医学部創設者と言ってよいと思います。
相良先生は、明治に入って日本がイギリス医学を導入する方向にあったときに、ドイツ医学の方が将来の展望において重要であるとし、日本の医学の方向性を決めた人物です。東大医学部の基礎をつくり、日本の医学の近代化に貢献しました。東大病院に記念碑が建てられています。

 来年が明治維新から150年ということで、ここで改めてお二人の業績を紹介させていただきました。

■がんと「TGF-β」(Transforming Growth Factor-β)

 私は、がん細胞を増殖させる信号はどのように伝わっていくのかという研究を30年近く続けています。

 正常な細胞は何回か増殖し、必要がなくなれば止まりますが、がん細胞は車で例えるとアクセル踏みっぱなし状態で増殖し続けます。この腫瘍の増殖因子として注目しているのが「TGF-β」です。「TGF-β」は1980年ごろにすでに見つかっていましたが、その後の研究で、早期のがんに対しては増殖を抑制し、進行期には浸潤・転移を促進するという二面性を持つタンパク質であることが分かってきました。ただ、どうしてそういうことが起こるのかということについて長い間議論が続いていました。それが我々や他のグループの研究により解明されたのが数年前です。

 「TGF-β」は1つの信号を伝えていますが、がんの進行過程でがんの遺伝子が活性化されるなどして、横から様々な信号が入ることによって、それまで良いことをしていたのが悪いことをするようになると分かってきたのです。

 最近では、がんが転移する際に「TGF-β」が大変重要な働きをすることが明らかになりました。

 動物実験でマウスに乳がんの細胞を移植すると、やがて転移が起こって死んでしまいます。しかし、「TGF-β」を抑制するような遺伝子を注射すると転移が抑えられることが確認できました。

 ここまで分かったのであれば「TGF-β」のシグナルを阻害して、がんの転移を抑える薬ができるのではないかと、いま一生懸命に研究を続けているところです。

■これからのがん治療

 従来のがん治療は、外科治療(手術)や放射線治療、化学療法(抗がん剤)を組み合わせ、患者さんにとって一番良い治療法を選んでいました。しかし、ここ数年遺伝子の研究が進むことによってゲノム医療という言葉が広く使われるようになってきました。また最近は、免疫療法も注目されています。実際に臨床現場でもがん治療は大きく変わっています。

 なかでも肺がん治療は新しい薬が次々と出現し、生存期間の大幅な延長が期待されています。まさに日進月歩の状態で、ネットの情報はすでに古く、最新最良の治療は主治医とよく話して情報を入手することが大切です。

 15年前は、肺がんの患者さんにはどのような抗がん剤を組み合わせても十分な効果が期待できず、進行した肺がんは治療しない方が良いのではないかという状況でした。しかし、分子標的薬の開発により生存期間がはるかに延長されました。

 がんは遺伝子に傷がついて細胞を増殖させるタンパク質がつくられて発症します。それならばそのタンパク質を抑えてしまえば良いというので登場したのが分子標的薬です。

 この数年、肺がんの患者さんで様々な遺伝子の異常が発見され、それに対する分子標的薬が次々と開発されてきました。これまでの抗がん剤と異なり、患者さんの遺伝子の異常を見て、それに合った薬を投与する時代が始まっています。

 しかし、それでも効かないがんもあります。また分子標的薬を投与しても何年かすると薬が効かなくなる変異が起こるなど、進行したがんが完治するのはまだまだ難しいのが現状です。

■大きな効果が期待される免疫療法

 こうしたなかで最近大変話題になっているのが、免疫療法、なかでも免疫チェックポイント療法です。

 アメリカのジミー・カーター元大統領は、治療の難しい悪性黒色腫が肝臓や脳に転移した状態でしたが、免疫チェックポイント阻害薬を投与することにより脳のがんが消滅。その後、治療の必要がないところまで劇的に回復しました。

 がんができると、免疫細胞ががん細胞を探して抑えようとします。しかし、がんはこの攻撃から逃れて生き残ろうとする。それを遮断して免疫細胞にがんを攻撃してもらえば自分の免疫で治るのではないかというのが免疫チェックポイント阻害薬です。

 悪性黒色腫の患者さんのうち、免疫チェックポイント阻害薬が効くのは約2割ですが、この2割の人はがんが再発せずに元気でおられるようです。 いま肺腺がんの患者さんにも免疫チェックポイント阻害薬が使われるようになってきています。スタートしてまだ2年ですので、今後どのような効果が得られるか慎重に見ていかなければなりません。しかし、もしかするとがんが治る患者さんが現れるかもしれないという期待が出てきています。

 免疫療法には様々な種類がありますが、効くものとそうでないものがあります。免疫チェックポイント阻害薬が、より多くの患者さんに効く方法が見つかれば、がんに分子標的薬が効かないような遺伝子の変異があっても治療に大きな効果が得られる日が来るのではないかと考えます。

 私はがんを克服するために長年基礎研究を続けてきました。1985年、29歳のときにス
ウェーデンに留学したのは、細胞増殖因子研究の権威であったヘルディン博士と一緒に研究がしたいという強い思いからです。

 そのヘルディン博士が2013年にノーベル財団の理事長に就任し、毎年ノーベル賞の授賞式の最初にスピーチをされています。

 ノーベル賞は、20〜30年前の研究の成果が大きく発展し、社会に役立っていることを評価されて受賞することが多くあります。最初に研究をスタートした時点では、自分の研究がどう役立つかは分かりません。ある意味では、面白いということだけで研究を進めています。基礎研究は、一般には分かりにくいものですが、将来社会に大きく役立つ可能性が多々あります。どうか温かい目で見守っていただきたいと思います。

 講演の後は質疑応答の時間が設けられ、分子標的薬研究の現状や臨床現場が新薬の開発に追いつかない状況などについて質問と要望が寄せられた。 最後に、全国学習塾協会を代表して本部相談役の筒井勝美氏が、「150年前の伊東玄朴先生や相良知安先生の功績の延長線上に宮園先生の貴重な研究がある。ゆくゆくはノーベル賞を受賞していただきたい」と謝辞を述べ、塾の日シンポジウム第2部を締めくくった。

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