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2016/9 塾ジャーナルより一部抜粋

〜永遠に未完の塾学〜

第15回 健全な頭脳は 正しい身体の使い方から生まれる

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。


塾講師は、授業と懇談で
知恵を磨く

 他の塾の先生はいざ知らず、私は不勉強のかたまりである。学習指導要領が改定されても、最初にその全内容に目を通すなんてことはしたことがない。新しい教科書を年度の初めに通読することもない。一年間、塾専用教材を使って授業をしてみて、やっとその全容を知るという体(てい)たらくだ。

 そんな私が、では何から新しい知見を得るかというと、その90%以上は、授業での塾生観察と、塾の懇談会での保護者の方のお話からである。

  今回は、そんな怠け者による、最近の子どもたちに何が起こっているのかについての推論である。

正しい鉛筆の持ち方が
できない子の急激な増加

 4、5年ほど前から、それまでは見たこともない鉛筆の持ち方をする小・中学生が急に増えてきた。
写真のように、人差し指と中指を上に、薬指と小指を下にして、2本ずつの指の間に筆記具を挟んで字を書く。

 薬指と小指の間に鉛筆を挟む子も皆無ではない。

 こんな持ち方で美しい字が書けるはずもなく、この持ち方の塾生は全員が、いびつな、横に流れた大きな字を書く。また、ノートの罫線はあってなきがごとし。彼らは全員、罫線はノートのシミくらいにしか感じていないから、それにそって書くというルールの存在さえ意識することはない。

  最初は、個人的な無知、放縦による欠陥だと思っていた。「君、なんという持ち方をしてるんだ、鉛筆の正しい持ち方はこう!」と矯正を試みてもみたのだが、多勢に無勢、衆寡敵せず、孤軍奮闘、ほとんど効果がない。

 長年にわたってついてきた悪癖は、治せと言っても、簡単には無理だ。鉛筆の持ち方などは、小学校低学年での最優先習得事項だろうに小学校の先生は何をしていたんだと、学校に責任を押しつけて、ほとんど矯正を諦めていた。

原因は、左手にあった!

 変な鉛筆の持ち方をする塾生がじわじわと増えてきて観察資料が増加したからであろう、私はある日、彼らに一つの共通点があることに気づいた。

 まず、姿勢が悪い。しかし、もっとよく観察すると、姿勢の悪い人の多くは、左手をだらんと下に垂らしている。

 左手でノートを押さえていないから、右手だけで書くとノートが動く。ノートが動かないようにしようと思えば、右手の小指側の部分でノートを押さえないといけない。本来ノートと平行でなければいけない掌が、ノート面に対して垂直の角度になる。すると必然的に、筆記用具の持ち方は写真のようになる。

 また、左手を机上に出して上半身を支えていないから、背骨ではなくて背中の筋肉で体を支えざるを得ない。骨は疲れないが筋肉はすぐに疲労する。当然、正しい姿勢を維持し続けることが困難になる。

 つまり、変な鉛筆の持ち方=姿勢が悪い=左手が垂れている、といった個々人が偶々持っている欠陥ではなくて、左手が垂れている→姿勢が悪くなる→右手でノートを押さえざるをえない→変な鉛筆の持ち方をしないと字が書けない、という因果関係の問題であったわけだ。

 因果関係であれば、悪い原因を取り除けば悪い結果を排除することができる。

 それに、鉛筆の持ち方を治せと言うと子どもたちの心理的抵抗が大きいが、左手をちゃんと机上に出しなさいと言えば、塾生は素直に聞いてくれることが多い。

音読の不足

 学校の定期テストは、内容は易しいし、範囲も指定されているから、直前の勉強次第でどうにでもなる、と一般には思われている。

 しかし、そう単純ではない。

 面白い例だと、そんなに勉強嫌いではないのに、国語が特に弱い、あるいは社会科の点数が極端に低い、または英語だけ点数が極めて低い人には、ある共通点がある。

 兄弟姉妹の中で、次男、次女、つまり上から二番目の子が圧倒的に多い。そして、彼らは、人前では口数が少なく、控え目だ。

 国語、社会、英語の教科としての共通点は、語彙力がある生徒ほど有利であることだ。逆に、語彙が少ない子は初めからハンディを背負っているということになる。

 子育ての過程で、長子を育てるときは親も素人だ。子が何を言い、何を求めているのか、すぐにはわからない。だから長男、長女は、自分の言いたいことを苦労していろいろな言葉で訴えざるを得ない。また、親も、長子の饒舌には楽しくつきあう。

 ところが次子になると、親も慣れてきて、次男、次女が何かを言いかけると、「ああ、これがほしいのか?」と先回りしてしまう。次子は言葉を尽くさなくても、大概のことがうまくまわってしまう。

 こうして、言葉を口に出して発音し、語彙を増やすチャンスの多くが失われる。これが、二番目の子の語彙不足の、一つ目の原因である。

 また、小学校低学年ではどんな先生でも教科書の音読を宿題にするはずだが、次子が音読を始めると、長子がからかったり、馬鹿にしたりしがちである。それで、二番目の子は、恥をかくのが嫌で家庭での音読を嫌うようになり、ますます語彙を習得する機会を失ってしまう。

 言葉は、何度も発声することで初めて記憶することができる。その機会が少なければ、語彙不足に陥り、それが文系科目の成績不振の原因となるのは当然のことだ。

 単語をからきし書けなくて英語の成績が極端に悪い生徒も、多くは、その単語を読めない、つまり発音できないことが原因であることが多い。

 私は、毎日の声を出しての音読こそ、勉強法の一つとして非常に大切なものだと考えている。

生活様式の変化も一因か

 子どもの遊びの変化も学業に大きく影響している。

 最近増えているものの一つに、授業中の居眠りがある。居眠りの原因は、ほぼ百%が夜更かしである。

 十年ほど前は、夜更かしの原因はゲーム機によるゲームだった。少し前は、中学生の場合、ラインだった。そして今は、ユー・チューブだ。

 動画や音楽だから、ゲームやラインほど副作用はなさそうに思えるが、寝転がってだらだらと見続けられる分、実はたちが悪い。

 寝間にスマートフォンを持ち込むようになると、危険信号である。

 最初に書いた、鉛筆の持ち方の変化も、片手で操作できる携帯電話、スマートフォンの普及という、子どもたちの生活様式の変化がその要因のひとつである可能性がある。

健全な頭脳は、型(かた)を守る身体活動に宿る

 こうしたことをつらつら考えると、昔の人の深甚な知恵にあらためて感心せざるを得ない。古人は、身体の正しい型を守ることこそがすべての修養の基本であることを熟知していた。柔道も、剣道も、茶道も、華道も、書道も、すべて正しい姿勢、身体の型から訓練が始まる。

 さらに学問の修業の最初は、まず正座しての四書五経の朗読、音読であった。
一般受けはしそうもないが、塾の学習に勉強の型を甦らせることも、我ら世代の責任かもしれない。

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