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2016/7 塾ジャーナルより一部抜粋

まだまだ知らない幼児教育の世界

  有限会社JST(小学校受験標準テスト) 代表取締役 坂口 克行  
     

幼児教育との出会い

 今から30数年前、私は幼児の早期教育に出会いました。

 当時の一般的な幼児教育は自由保育が主流で、未就学児に対して、文字の読み書きや算数の指導はタブーとされていました。しかし、そのような中でも、一部の熱心な幼稚園や幼児教室では、幼児の早期教育が実践されていたのです。

 今では、一般化されて、それほど珍しくもないカリキュラムですが、当時としては斬新で画期的なものでありました。しかしながら、否定的な意見も多く、マスコミでも否定的に取り上げられることもよくありました。

 「我が子に早期教育を」と考える家庭は、政財界や医療関係といった知識階級が多く、当時はまだ地方に実践する教室が少なかったため、週に数回、飛行機や新幹線で遠方より通ってくることも珍しくはありませんでした。

 私自身、幼い子どもたちが、早期教育を苦痛に感じることなく、楽しみながらどんどん吸収していく光景を目の当たりにし、幼児の無限の可能性を肌で感じるようになりました。そして、現在に至るまで幼児の教育に携わることになりました。

 その後、日本はバブル経済の時代を迎え、早期教育は、「英才教育」として、通所型と通信教育型に分かれて、また、能力開発型と小学校受験型に分かれて発展をしていくことになります。

小学校受験について

 その英才教育の延長線上に、公立小学校ではなく、国立や私立の小学校への進学を希望する、小学校受験があります。

 小学校受験は、バブル経済の時代に全盛期を迎えます。当時は、今ほどではないにしろ、すでに少子化の傾向にありましたが、「少ない子どもにお金をかけて大切に育てたい」という発想から、各国・私立小学校には志願者が殺到しました。そして、志望校へ入学するためには高い倍率の入試に合格しなければならず、当然のことながら、既存の小学校受験塾は競ってその規模を拡大し、中高受験を専門とする進学塾も次々と小学校受験部門を開設するという現象が起こりました。

 人気のある小学校受験塾になると、新年度の入会申し込みに保護者が前夜から徹夜で並ぶといった過熱ぶりで、言わば、空前の小学校受験ブームとなりました。また、誰がつけたのか『お受験』という言葉まで誕生し、マスコミでもしばしば取り上げられ、ドラマ化されたこともありました。

 その後、小学校受験の人気は、しばらく続き、バブル経済が崩壊した後も日本経済の先行き不安からか、子どもに投資する傾向が見られ、その人気はすぐに衰えることはありませんでした。

 ところが、リーマンショックの時期頃から、徐々にその人気に陰りが出始め、昨今に至っては、私立小学校の中には募集定員を確保することが困難な小学校も出始めました。その原因として、独自のアンケート調査によると、「受験は中学校受験から」との解答がこの頃から年々増加しています。一般的に、私立小学校の年間経費は、公立小学校の10倍以上とも言われ、公立に通いながら進学塾に通い、難関中学を目指したほうが経費的にも安く、子どもの体力的にも無理がない。との現実的な意見も数多く聞こえてきました。

 それに伴い、業績の好調であった小学校受験塾も衰退の一途をたどり、多くの塾がその分野からの撤退や廃業を余儀なくされている現状があります。しかし、そんな中でも、一部の人気小学校では、今なお比較的高い倍率を保っており、小学校受験塾についても、今なお活性化しているところも存在します。学校も塾も生き残りをかけて必死なのです。

 生き残りをかけた各小学校の取り組みの一例を、ご参考までに次項で触れてみたいと思います。

本年度の
国・私立小学校入試事情

 昨年、関西の各私立小学校連合会などに公正取引委員会の調査が入ったことは、報道などによりご存じと思います。それに伴い、各府県連合会では入学試験日の協定を廃止しました。しかし、昨年は、入試協定日の廃止を決定した時点において、試験日をすでに発表していた学校が多く、大きな混乱は生じませんでした。

 しかし、今年度は状況が昨年度とは大きく異なっています。入試協定日の廃止に伴い、試験日を変更する学校が昨年以上に多くなっています。一部の学校では、入学試験を大幅に変更し、8月下旬や11月下旬に実施する学校も出てきており、受験者獲得に向けた熾烈な争いの様相を呈しています。

 各府県別に見ていきましょう。(複数回実施する学校は最初の試験が対象)

●兵庫

 兵庫県は、2校を除いて9月30日〜10月3日の間に入学試験が行われます(うち10月1日に実施が6校)。残りの2校も10月8日に試験が行われ、昨年と比較しても大きな変更は見られません。ただ、関西学院、雲雀丘学園、小林聖心女子学院、仁川学院(B日程)の順で、1日から連続して入試が設定されており、受験者数の推移にどのような影響を与えるのか気になります。そのような点では各校の説明会参加者数が注目すべき点といえるでしょう。

●大阪

 大阪府の試験は、8月下旬に実施2校、9月中旬に実施2校、9月30日・10月1日に実施8校、10月2日以降に実施4校となっています。8月下旬に設定したのは、賢明学院と四天王寺学園の2校です(※四天王寺学園はS入試)。この2校が突出して早く実施することが、他校の入学試験にどのような影響を及ぼすのか受験者の動向から目が離せません。

●京都

 京都府は、他府県とは違い、各校の入試日程が大幅に分散し、長期間にわたり実施されることになります。今年一番の影響が出たエリアといえるでしょう。今までは、立命館と洛南の2校が先行して実施していた形でしたが、今年は、9月11日の立命館、洛南の入試に始まり、11月4日の京都文教短大まで、実に2ヵ月にも及ぶ入試日程になります。

●奈良

 奈良県は、概ね、大きな変更は見られませんでした。9月29日〜10月3日の期間で、ほぼ重なることなく入試が実施されます。

 地域別に入試日程を見ていくとこのような状況になっています。

 また、エリアによっては、府県を超えて応募者が集まる学校があります。その観点から注目されるのは、京都−大阪間(摂津エリア)になるでしょう。

 このエリアには、京都の洛南、大阪の関西大学があります。例年、洛南と立命館は試験日が重なります。今年は、9月11日(日)に入学試験を実施すると発表されていますが、洛南に近い関西大学が9月21日、箕面自由学園が9月17日と近い日にちで日程を定めています。これらの学校は通学範囲が一部かぶることから、この試験日程の変更がどう影響するのか注目の一つといえるでしょう。

来年度注目の学校

 また、来年度春から豊中に彩の国記念小學院が開校します。こうした新設校がどのような影響を及ぼすのかも注目すべき点だと思います。

 その他に注目すべき点は、四天王寺学園、聖母被昇天学院、大阪聖母学院の3校が平成29年4月より、校名を変更するとともに、教育内容も大きく改革すると発表しました。

 四天王寺学園は藤井寺にある同学園中学校への進学を前提とした体制から、中学校の進学先を限定せず、希望する中学校を目指す方針に転換を図ります。それに伴い、カリキュラムも大幅に変更するとともに、塾との提携をはじめとする多くの教育改革を実施する予定です。また、四天王寺小学校と校名も変更します。

 聖母被昇天学院は、女子校から共学になるとともに、英語教育に力を入れた国際コース(名称未定)が新設されます。それに伴い、校名も変更となります。

 大阪聖母学院も英語教育に力を入れたコースを新設するとともに、中高を共学化します。

 一方、国立の大阪教育大学附属小学校においては、従来入試選考に学力テストに加えて抽選を実施しておりましたが、数年前に池田小学校が抽選を廃止いたしました。続いて本年度入試より天王寺、平野の両小学校が抽選を廃止いたしました。学校側としては受験者増を見込んでいたはずですが、実際には受験者数は減少しました。

 このように、大幅に方針を転換する学校もあれば、そこまでは大きくなくても、教育内容の改革に力を入れる学校もあります。特に、管理職体制が変更となった学校は、新たな方針を打ち出す可能性も高く、入試説明会の内容が注目といえるでしょう。

 余談ですが、本年4月から、大阪府私学課が教育委員長の下に移管されることとなりました。今後、私学の独自性を保つことができるのか。自学の優位性をどこまで保てるのかも注目すべき点といえます。

今後の幼児教育の可能性

 国・私立小学校のさまざまな改革が功を奏し、小学校受験が活性化するならば、それに伴い、塾の活性化も期待できますが、現状を見る限り、活性化には、今しばらく時間を必要とするように思われます。それに対し、近年、急成長を遂げる幼児教育のスタイルがあります。

 それは、今や社会問題となっている保育所の待機児童問題を反映した託児型の幼児教育です。

 一定の基準を満たして認可園として開設する場合と、あえて自由に保育内容等を設定できる無認可園として開設する場合があります。無認可園と言っても、ある程度の制約は受けることとなりますが、認可園に比べると自由度が高く、開設しやすいというメリットがあります。反面、助成金や補助金といった援助が受けにくいというデメリットがあります。

 近年は、幼稚園よりも保育園の人気が高く、都心部では保育所に入りたくても入れないという待機児童が多く存在し、民間の託児所の需要は増す一方です。

 従来の塾スタイルで、授業時間の前後に保護者が送迎するというスタイルではなく、託児所として長時間預かる中で、英語や運動、絵画、受験指導も行うといった複合型幼児教育のニーズが高まってきているように感じます。成功させるためには、優秀な保育士と整った設備の確保等とさまざまな課題もありますが、地域性を配慮し、保護者のニーズを満たすことができれば、社会貢献度の高いビジネスモデルになり得るのではないでしょうか。

坂口 克行氏 プロフィール

有限会社JST(小学校受験標準テスト)代表取締役
過去30年以上にわたり、さまざまな団体で幼児教育に従事し、幼児教育会では、人脈、情報共に豊富。現在、有名小学校を会場として、毎回多数の受験生を集める小学校受験標準テストを主催する他、学校法人、社会福祉法人等の理事や監査役としても活躍する。

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