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中学・高校受験:学びネット

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2016/3 塾ジャーナルより一部抜粋

〜永遠に未完の塾学〜

第12回 高校を選択する際の決め手

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

褒め言葉はたった一言(ひとこと)

 今年も、新年度生募集の時期がやってきた。募集チラシのコピーライティングに頭を悩ませている方も多いであろう。自塾の強みをできるだけ数多く羅列したい、あれもこれも訴えたいと、広告を出すほうは知恵を絞る。

 ところが、入塾した子どもたちに「なぜ、この塾を選んだの?」と聞くと、その答えはたった一言であることが多い。

 「家から近いから。」

 「曜日が合うから。」・・・

 保護者の方にアンケートをとっても、回答は短い。

 「近所の人に『いいよ』って聞いたから。」

 「〜君が通っているから。」・・・

 知恵を絞ったあのチラシは何の役に立ったんだろうと、ガクッとくることがほとんどだ。

高校を選ぶ基準も
たった一言

 毎年、高校の募集パンフレットも工夫を凝らして刷新される。最近は、どの学校のパンフレットも似かよってきて、いろいろなコースのよさを総花的に紹介するものが流行りのようだ。さらに各校のコースも年々細分化されていき、本職の私たちでさえ覚えられないくらいだ。

 しかし、年度末の志望校選択の懇談会で「なぜ、その高校に行きたいのか?」と尋ねたときに、受験生から帰ってくる答えは、やはり、たった一言であることが圧倒的に多い。

制服が可愛いから

 25年ほど前、選択理由として初めて「制服が可愛いから。」と聞いたときは、懇談の席でひっくり返りそうになった。

 「おいおい、高校は勉強をするために行くのと違うのか?制服優先って、何を考えてるんだ!」と叱ったことを覚えている。

 今は、制服がイマイチだと選択の対象から外れることのほうが当たり前で、私の方から「その高校、制服もかっこいいしな。」などと迎合することさえある。合同の学校説明会でも、各校は自校ブースの前でマネキン人形を使って制服の展示を競う。

 ところが、皆が同じことで競争を始めると、それは選択基準にならなくなる。昔は、制服を見ればどの学校の生徒か一目で見分けられた。今は、一つの好み、流行りに皆が習うから、どの学校の制服もほとんど見分けがつかなくなっていて、制服を着る意味そのものがなくなっているようにさえ思える。

 もはや制服は、ダサイと評価されるとその学校は選択対象から外されてしまうが、志望校を選ぶ際の決め手ではない。

クラブ活動がしたいから

 最近は、高校のクラブ活動の様子を詳しく調べて、やりたいクラブの有無を最優先基準に志望校を決める生徒が増えてきている。今年度の自塾の進路懇談会で、私は急遽、大阪私立中学校高等学校連合会が発行している冊子『ドリーム』巻末の大阪私立高校クラブ一覧を、コピーして全員に配布するようにしたくらいだ。

 私学の名を売り、受験生を集めるのに、強いクラブが強力な武器になることは周知の事実だ。しかし、クラブ活動で学校を選ぶときの指標が、今は昔とは違ってきているように思われる。

 わが塾の場合、運動でセレクトされて特待生で勧誘されるような子は少ない。しかし、高校へ行っても引き続きクラブ活動には積極的に参加したいという子が圧倒的に多い。

 そういう子は、面白い傾向を示す。まず、強すぎるクラブのある学校は敬遠する。セレクション組が幅を利かせていて、一般生は参加しにくいことをよく知っているのだ。ところが、熱心に練習していないクラブも嫌う。「チンタラやっててむかつく。」のだそうだ。つまり、みんなが参加できて、しかもそこそこ強い、そういうクラブのある学校を選ぼうとする。
私立高校を選択する際の指標が公立高校を選ぶ時の基準に近づいてきているのが、最近の傾向だと言ってよい。

進学実績がよいから

 昔の親は、大学進学実績のよい高校へ子どもを行かせたがった。特に私学の場合、少しでもよい大学へ進ませたいから公立より私立高校を選ぶという親がほとんどだった。

 今はこれも様変わりしている。

 偏差値が50よりやや上くらいの、ほぼよく似た学校A高校とB高校とがあるとする。A高校は在校生の学力をよく伸ばす。その代わりに、授業は厳しい。B高校は諸事に煩(うるさ)くないし楽しい。だから当然、大学進学実績は偏差値のわりに芳しくない。

 以前であれば、私学だとほとんどの親が圧倒的にA高校を支持した。今は違う。子どもは勿論だが、私たちが大学進学者数を示してA高校の優位さを明示しても、親は子に引きずられてB高校への進学を容認する。進学実績のよくないB高校のほうが人気が高くて入学志願者の偏差値を維持し、子どもをよく伸ばすA高校が募集に苦労するという、本末転倒の現象があちこちで起こっている。

 西大和学園や清風南海、清風、四天王寺などの一部の進学校を除いて、一流大学への進学実績はもはやブランド化要因ではなくなってきている。大学入試制度が多様化して、ペーパーテストからの脱却が叫ばれている昨今、この傾向はさらに強まると予想される。卒業する最後まで、貧弱な実績の隠蔽はバレない。

学校の雰囲気がよいから

 最初に聞いたときはびっくりしたが、最近は聞いても驚かなくなった志望動機が、「トイレが綺麗だから」だ。今時のお子様は、清潔好きなのだ。

 さらに、学校の建物自体も見極めの対象になる(だから、耐震構造工事が必要なこともあって、当地では校舎の建て替えが今、ブームであったりする)。

 一般に知られていないであろう意外な志望動機の一つが、「駅から学校までの道筋の高級感」だ。雑駁ではない地域に立地し、近くをドブ川でない清流が流れていたりしていて、まっすぐな道の突き当りに見栄えのよい校門があったりすると、それだけで惹きつけられるそうだ。

 笑い話に近いが、学校関係者は本気で周囲の環境の整備にも気を配るべきなのかもしれない。

学校が都心にあるから

 進学実績をきちんと見極めない人が増えて、クラブ活動や、学校の雰囲気や制服などの表面上の見かけだけで高校を選択する人が増えてくると、結局、どの学校も明確な優位性、ブランド力を示せなくなってくる。

 そうすると、当たり前といえば当たり前だが、都心の高台にあって周辺環境がよく、交通の便もよくて通いやすく、途中におしゃれなお店などもあって高級感を味わえるといった学校が、人気を集めることになる。

 実は最近、人気の高い公立高校のほとんどがそうした、都心にある学校である。

 少子化という「量」の減少は、学校の場合は競争の緩和をもたらし、実はすべての教育内容の「質」の低下を招いているのかもしれない。

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