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中学・高校受験:学びネット

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2016/1 塾ジャーナルより一部抜粋

〜永遠に未完の塾学〜

第11回 中一の子に魂を揺さぶられる

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

 一生の間には、一瞬擦(す)れ違うだけなのに、強く印象に残る出会いがある。

 今回は、私が開設している学習支援サイト『働きアリ』で出会った、一人の中学生について書いてみたい。

学習支援サイトのコメント欄

 サイト『働きアリ』には、毎日一万人を超える人が訪れる。

 中学入試をひかえた小学生、高校受験や定期テストのために勉強している中学生、教育に関心の高い保護者、資格テストのために自学している社会人…、こういった人々が熱心に読んでくれているようだ。

 2009年のサイト開設以来、寄せられたコメントも2700件に達する。年に2、3件は失礼な書き込みもあるが、圧倒的に多いのは、「勉強で分からないことがあり検索していたらこのサイトにたどりつき、やっと理解できた。感謝している。」という趣旨のコメントだ。私自身、それを仕事の励みの一つにしていると言っても過言ではない。

 寄せられたコメントのすべてに返事を書く時間的余裕はないが、中には切迫した質問もあり、そういう時はできるだけ迅速に返事を書くように心がけている。今回取り上げるのはそんな、つい先日、書き込まれた質問である。

中一ゆいちゃんからの質問

 「働きアリ先生・・・問題集の問題で、どうしても理解できない問題があり、試験前なのに1時間以上考えてもわかりません。先生の説明をお聞きしたいです。

【問題】地震XとZがあった。両者とも震央は同じ。観測点BとCがある。BよりCのほうが、震央より遠い位置にある。BとCのP波の到着時刻の差は、地震Xの場合3.8秒後、地震Zの場合2.3秒後であった。P波の到着時刻の差が異なる理由を書きなさい。

【解答】地震Xは地震Zより震源が浅いので、観測点Bから震源までの距離と、観測点Cから震源までの距離の差が大きいから。

【質問】震源地が浅いと、どうして距離の差が大きいのでしょうか。陸地の距離の差は、震源が深くなっても浅くても変わらないのではないですか?よろしくお願いします。・・・中一ゆいちゃん」

 この質問が書き込まれたのは夜中の午前0時20分。普段であれば返事を書くような時刻ではないが、「試験前」とあるからには急いで答えてあげないと間に合わない。

私の返信

 私はすぐに返信をコメント欄に書き込んだ。

 「震源は実際に地震の起った地下の場所、その真上の地表の地点が震央だということは知っていますね?

 まず、地下の震源が極端に浅くて、地表の震央とほとんど変わらない時を考えてみましょう。震央とBの距離が50km、震央とCとの距離が100kmだとすると、震央からの距離は50kmも違います。震央と震源がごく近いときだと、震源からの距離もほとんど同じ50kmと100kmで、その差は約50kmです。

 次に、震源が極端に深く、震央より例えば1000km深いところが震源だったとします。そこからBまで線を引くとほとんどまっすぐ上に向かいます。そこからCまで線を引いてもほぼまっすぐ上に向かいます。この二つの線の長さに、ほとんど差はありません。

 紙に震央とB、Cを横に並べた地面を書いて、震源がすぐ震央の真下のときと、震源が震央からすごく離れた地下深い所にあるときとを書いたら、解答の正しさがわかります。」

 本当はわかりやすいように次のような図も描いてあげたかったのだが、

ブログの仕様から、コメント欄には図が描けない。それで、右のようなわかりにくい説明になってしまった。

 それはさておき、私が、深夜にもかかわらず真剣に返事を書いたのには理由がある。

 このコメントを読んだ私の第一印象は、「なんといい子だろう!」であった。賢い、しっかりと考えることができる中学生である。中一生にしては文章力もある。それより何より、私が感心したのは、「どうしても理解できない問題があり、試験前なのに1時間以上考えてもわかりません。」のくだりであった。

 真面目な子ほど、試験前は点数に直結する効率的な学習を心がける。「どうしても理解できない問題」に「試験前なのに一時間以上考える」ような酔狂な子は少ない。

 理解できない問題があると考え続けないといられないゆいちゃんの「愚直さ」に私は惚れこんだのだ。だから私も、どうしたらわかってもらえるかを真剣に考え抜いた返信を書かざるをえなかった。

 これで一件落着、わかってもらえるだろうと想像した私はにんまり、安心して床についた。

 しかし翌朝、私は予想もしなかったゆいちゃんからのコメントを見つけることになる。それはさらに私を驚かせ、大きく心を揺さぶるものだった。

学ぶ者としての理想の姿勢

 「働きアリ先生・・・おはようございます。朝もう一度お布団の中で考えていましたが、やっばりわからなくて悲しくなっていましたが、先生からお返事が来ていてびっくりしました。

 先生の解説を読んで、実際に図を書いてみても距離の差はやっぱり変わらないと一瞬思いましたが、先生からお返事をいただいたのにあきらめたくないと思い、コンパスを使ってみました。

 震源が浅いと2倍に広げていたのに、どんどん下げて行ったらちょっとしか広げないで済みました。こういうことかと分かり、すごく嬉しかったです。今まで気がつかない発見でした。先生、本当にありがとうございました。」

 さらにゆいちゃんのコメントは続く。

 「先生は勉強でどうしてもわからない問題が出てきたとき、どうやって解決していましたか?どうしてすべての教科を理解できているのか、子供の時からずっと天才だったのでしょうか? 私は頭が悪くて理解できないのかと悲しくなることがあります。

 でも絶対にがんばりたいんです。期末テストがんばります!」

 学校の教師であれ塾講師であれ、こうした言葉に涙しない者があろうか。

ゆいちゃんへの賛歌

 「コンパスを思いつくなんて!あなたのほうが私よりずっとすごいですよ。天才科学者の素質があります。大げさに言うと、科学の歴史は、あなたのような苦しんだうえでの、ふとした工夫が切り開いてきたんです。事後から見るとなんということのない工夫です。が、苦労に苦労を重ねたうえでそれを最初に思いつく人が天才なんです。

 わからない問題が出てきたときの対処法も、一言で言うと、今回のあなたがそうであったように、わかるまであきらめないで考え続けることしかありません。その過程で、いろいろ調べたり、人に聞いたりしてもよい。わかるまで頑張って、頑張って、頑張りぬくこと、頭がしびれるまで考えに考えぬくこと、それしか『わかる方法』はないのです。

 最後に、私は全然天才ではありません。歳をとればとるほど、自分がいかに賢くないかを痛感することばかりです。ただ、自分が愚かだからこそ、30年以上、どうしたら子どもたちを伸ばすことができるか、それだけを悩んで苦しんで追求し続けてこれたことだけが自分の誇りです。今回、あなたが納得できるまで工夫し考え続けたように、です。

 いろいろな意味で、あなたは本当にすごい、理想的な学び人だと、私は感動しましたよ。

 私はまだ、コンパスを見つけられないまま、毎日、苦闘しています。」

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