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2016/1 塾ジャーナルより一部抜粋

新春インタビュー 「迷ったときには建学の精神に立ち返れ」
そこに私学の存在意義がある

     
公益財団法人 大阪府私学総連合会 理事長
学校法人 浪商学園 理事長
野田 賢治 氏

幼・小・中・高・専各・短大・大学をメンバーとした組織である大阪府私学総連合会では、教職員の退職後の生活保障となる退職資金給付事業の運営や大阪私学会館の運営に携わっている。この私学総連合会を束ねるのは野田賢治理事長。「私学運営や指導方法で悩んだときは建学の精神に立ち返れ。そこに人として学ぶべき根幹がある」と、最前線で働く教職員たちに規範を示し続けている、器の大きな教育者である。

私学運営をしている者の視点で
同じ私学をまとめる理事長

塾ジャーナル(以下──) 野田さんが理事長を務められている、大阪府私学総連合会とはどのような組織ですか。

野田 大阪府私学総連合会は、今から60年以上前の昭和24年、大阪府の私学教育振興を目的に設立されました。それから約15年後の昭和39年、私学団体の拠出金や府・市の補助金で、大阪私学の殿堂となる大阪私学教育文化会館が完成。施設を管理し、運営する仕事が大阪府私学総連合会の大きな仕事となりました。昭和43年には財団法人大阪府私立学校退職金財団が、私学で働く教職員の福祉の向上に寄与することを目的に設立されました。そして、平成20年に公益法人制度改革が始まり、新法人への移行が必須となったのです。

 しかし、当初の退職金財団は共益事業に当たるため、公益法人への移行は難しいと言われていましたが、大阪府私学総連合会と退職金財団を合併させて、平成25年に公益財団法人大阪府私学総連合会として生まれ変わったのです。

── 合併後の事業は順調でしょうか。

野田 そうですね。公益財団法人という立場のため、厳しい運営管理を求められていますが、相互に助け合えるため、さまざまな業務がスムーズになっていると各部門から聞いております。公益認定を経て、築50年近く経っていた私学会館の建て替えを行い、平成27年6月に新館が竣工しました。講堂が広くなり、小部屋や貸出備品もより充実しました。平成28年度からはこの施設をより良く運用できるような運営を企画していかないと、と考えています。

── それはどのような企画でしょうか。

野田 大阪府私学総連合会は幼稚園から大学まで多くの私立学校を傘下に置いており、さまざまな専門分野の教員や講師が在籍しているため、人的資源は豊富です。それを生かし、時代に合わせた多様な方々を引きつけるような公益性の高い企画が必要ですね。先日は文部科学省初等中等教育局長や日本私立中高連会長を招聘し、「新私学会館竣工記念」と題して、大阪私立中高連主催の講演会を開催しました。今後もこういった講演会や情報交換の場として活用していきたいと思っています。

── その大阪府私学総連合会の頂点におられるわけですから、日々お忙しいと思いますが。

野田 理事長の任期は2年ですが、再任されて今年で3年目なんです。大阪府私学総連合会の隔月の理事会の他に、大学設置・学校法人審議会(法人分科会)委員も兼任しており、日々忙殺されています。でも、忙しいのは教育業界、皆さん同じですよ(笑)。

── 大学設置・学校法人審議会(法人分科会)委員とはどのようなお仕事ですか。

野田 少子化で厳しい経営状況の中、大学が生き残りをかけて学部を新設したり、新しい大学を設立する申請を文部科学省に出してきます。そこで、法人分科会では主に財務状況・法人運営状況を審査します。さらに、認可が下りて設立後、大学が完成するまでの4年間、問題がないかどうかを随時確認し、4年目には最終的に完成した大学を総チェックするんです。私自身も学校法人を運営している立場ですので、最初は他の学校法人に意見を出すのはあまり気が進まなかったのです。でも、私学のことは、私学の経営を「わかっている人間」にしか理解できないですから…。

── 私学に関するさまざまな問題に対応するのは、私学経営者の役目だと。

野田 そうです。公立と違い、私学は本来、自由度の高い教育ができるのです。その分、悩むことも多いでしょう。しかし、私学は「建学の精神」を持っています。だから「迷ったときには『建学の精神』に立ち返る」ことが大切なのです。良いことも悪いことも含めた百科事典を内包しているようなスマートフォンの携帯や、薬物依存などの犯罪の低年齢化などが蔓延しているのが現代の学校であり、そんな子どもたちをどう指導すればいいのか、教育者を戸惑わせています。しかし、私学の「建学の精神」は人として必要なことを中心としているものが多く、これを通じて人としての本質を教えていくのが私学の在り方であり、存在意義です。ですからこれを外さないよう、運営が行われているかを見極める独自のシステムが必要だと考えています。

── 建学の精神に引かれ、私学に通う生徒も多いですよね。

野田 はい。大阪では小学校では全体の1.6%、中学では9%、高校では41%と、学年が上がるごとに多くの生徒が私立校に通っています【表1参照】。しかし、その一方で、生徒が集まらない学校も少なくありません。私の意見ですが、生徒が集まらないということは、世の中から「必要ない」と言われているのと同じであり、その学校には存在意義がないと思います。私学関係者はその覚悟を持ち、日々、自分たちの学校の教育と真摯に向き合う姿勢で勤めるべきではないでしょうか。

生徒の二極化や公的補助…
さまざまな問題を抱える大阪私学

── 大阪府の私学が抱える現在の問題点は何でしょうか。

野田 幼稚園は地域によって異なり、園児数の多いところと少ないところで二極化。小学校・中学校では「義務教育年齢は公立校でフォローできる」という府や市の考えで、厳しい状況を強いられています。

 一方、中学では付加価値教育を行う公立校として、大阪市此花区の咲くやこの花中学校高等学校に次いで、平成29年度から富田林市でも府立中高一貫校が設立されます。ただし、府立中高一貫校の受験倍率は非常に高倍率となることが予想されます。そのため、小さい頃から塾に通ったり、特別な家庭教育が可能なご家庭の子が優位な受験になります。

 つまり、高額な塾代を負担できる富裕層の子に、税金で付加価値教育を無償提供することになり、教育による階層転換の場とはならないでしょう。それならば私立中学に対して府立・市立と同様に公平な公費負担を実践し、私学なりの付加価値教育をもっと多くの生徒に提供させてほしいと思います。

── 高校ではどのような問題がありますか。

野田 授業料の支援制度によって公立高校に通う約7割の生徒が10万円以下の費用で私学に通えるようになりました。これにより、生徒の進学先の選択肢は増えており、多くの府民がこの制度の導入を良しとしています。しかし、実は大阪府の支援は上限58万円となっており【図1参照】、それを上回る授業料は学校側の負担とすることになり、これが大きな問題なのです。

── 私学側の負担が大きいということですね。

野田 はい。良い教育を行うためには、人件費がかさみ、授業料も高額になります。しかし、一定額以上が私学負担となると、経営状態によっては教員の数を減らしたり、良い教員を増やせない高校もあるかもしれません。そうすれば、富裕層の生徒やハイレベルな授業を望む生徒は、より良質な教育を求めて他府県の高校へ進学し、大阪府内の生徒数が減ってしまう。最終的には大阪府内の教育の質の低下につながる危険もあるのです。

── 授業料支援が私学を苦しめる結果を呼ぶわけですね。

野田 そうなんです。金額に差はあれど、多くの保護者が「授業料を負担しても良い」と考えておられるという結果も出ていますので【グラフ1参照】、質の高い教育のためにも、大阪府にはぜひ再考いただきたいと思いますね。

── 大学入試改革を2020年に控えていますが。

野田 改革後には、入試内容が基礎的・基本的な知識・技能とそれらを活用する思考力・判断力・表現力、主体的に学習に取り組む態度の3つから構成される「確かな学力」の3要素を中心とする受験になる、また、推薦入試でもテストは受ける必要がある、というような内容の予定は出ています。しかし、具体的にどのような変更があるか、多くの高校ではまだ見えていない状態です。

 私が運営する法人の大学で言えば、高等学校での習熟レベルをどのように調べるかが重要になりますし、大学の推薦入試でもテストは実施しています。各教科で「このくらいは理解していてほしい」というレベルの問題を出していますが、入試改革で高校がどのようなテストを行い、どんな結果を出してくるのかはまだわかりません。実際に初年度の受験生となる現在の中学1年生にどのような指導をすればいいのか、多くの学校がまだ模索状態で、今後の課題となっています。

中学から大学までの10年を育てる
私学教育の楽しみ

── 野田理事長が運営されている学校法人のお話を聞かせてください。

野田 学校法人浪商学園は、幼稚園・中学・高校・大学を運営しており、中学から大学までの10年間を当法人の学校で過ごす子も少なくありません。小学校を卒業したばかりの子が、しっかりとした大人になるまでの成長を見届けられるという、生徒も教員も楽しい教育ができる学校です。

 大学は体育学部と教育学部を設置。教育学部では体育・スポーツの得意な教育者を育成し、体育学部ではスポーツ以外にも精神面やスポーツを通じた教育などを教えています。卒業生は教師やメンタルトレーナーの他、一般企業や警察官、消防士など広い分野で活躍しています。大阪青凌中学高等学校は体系的な学習システムを導入し、難関大学をはじめとする4年制大学への進学を目指します。大阪体育大学浪商中学高等学校では中高大連携で部活動を行い、最新のハイレベルなトレーニングを実践する一方、近年は学力向上にも力を入れ、国公立や有名私立大学へ進学するコースも充実させました。

 また、大阪体育大学浪商幼稚園では毎日、シャワーのように子どもたちに英語を浴びせるイマージョン教育が高評価をあげています。年少から年長までを各クラスにネイティブ・バイリンガル・日本人教諭・日本人教諭補助と4人体制で配置し、オリジナルカリキュラムに沿った指導をしています。導入3年になりますが、10月に日本児童英語教育学会に呼ばれ、このイマージョン教育を発表しました。反響がすごかったですね。

── 学園全体での今後の方針を教えてください。

野田 もうすぐ創立100周年を迎えるため、企画を考えています。ただ、今後も「不断の努力により、智・徳・体を修め、社会に奉仕する人材の育成」という建学の精神と教育理念は全学年において変わりません。子どもたちの『智・徳・体』を基礎とした生きる力を伸ばす教育を続けるのは、時代が変わっても脈々と続けていかなければいけないものであると考えております。

── 本日はありがとうございました。


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