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中学・高校受験:学びネット

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2015/11 塾ジャーナルより一部抜粋

ズームアップインタビュー この人に聞く113
2020年の大学入試を鋭く予測
小・中から大学受験情報を提供

     

SAPIX・代ゼミグループ
共同代表 宮 敏郎さん

 大学受験においてトップランナーとして走り続ける「代々木ゼミナール」、そして中学受験において圧倒的な実績を誇る「SAPIX」と難関大学現役合格塾「Y-SAPIX」。これらに加えて幼児教室の「SAPIX kids」や海外大学進学を目指す「Y-SAPIX GLOBAL CAMPUS」など縦に横にと、多様な教育システムを展開しているSAPIX・代ゼミグループ。大学入試改革による新テストの概要がいまだに明確にならない中、論理的思考力を測るテスト「SRT(Scholastic Reasoning Test)」を先駆けて開発。大学入試改革を鋭く分析する、同社・共同代表の宮敏郎氏にインタビューした。

新たな企業文化が生まれ
大学受験まで一貫サポート

── 代々木ゼミナールとサピックスが1つのグループとなって、約6年になりました。

 グループとして一体感がじわじわ出てきたと思っています。塾と予備校の違うところを受け止められるようになり、お互いの良い面を生かしていこうという雰囲気になっています。

 2009年6月に代ゼミの創業者である宮行男が亡くなり、代ゼミの職員の半分以上は創業者を知らない世代になりました。サピックスのメンバーも3〜4割がグループ化以降の入社です。そういう意味では、グループとしてのアイデンティティが生まれつつあると思います。

── サピックスキッズから始まり、小学部、中学部、難関大学受験のY−SAPIX、代々木ゼミナールという縦のラインが強固につながったわけですね。

 今は早い時期から大学受験を考えている保護者が多く、中学・高校受験もその先を見据えての受験となっています。小・中学生にしっかり大学受験の情報を伝えていくことが大事だと思いますので、「大学受験まで見据えた教育」を目指し、幼児教室から始まる一貫した教育のサポートをしていきたいと考えています。

── 首都圏では中学受験の受験者数が回復してきたと言われています。中学受験の多様化も指摘されていますが、サピックスの生徒に変化はありますか。

 もともと目標をはっきり持っている生徒が在籍している塾ですので、あまり変化は感じていません。ただ、保護者の方は「どこかの中学に受かればいい」というのではなく、受かった後、子どもたちがどう成長し、どう社会へ出ていくかに関心が高いですね。

 早い時期から大学受験を意識するようになった背景には、2つの大きな波があると考えています。1つはグローバリゼーション。もう1つは人工知能との戦いです。

 先日、新聞に「政府は2020年から医学部の定員を減らす検討に入った」という記事が掲載されました。定員増加が続いていた医学部ですが、今の小学生が大学受験をするときに状況が変わっている可能性があります。

 グローバリゼーションと人工知能の問題は、医師になることとかけ離れていると思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。日本の医学部教育はグローバルスタンダードを求められており、2023年以降、国際的認証を受けていない医科大学・医学部の卒業生はアメリカで臨床ができない可能性が出てきました。同時に、外国の医師が日本で働きやすくなったとも言えるでしょう。

 もう1つ、近い将来、病気の診断はある程度コンピューターでもできるようになると考えられています。グローバルスタンダード導入で外国人医師が増え、言葉の壁も自動翻訳機で乗り越えられるとしたら、日本の病院だけで働くことを考えて医師を目指すのはリスクかもしれません。医学部の人気は高いですから、早い時期から生徒の皆さんには情報を提供していきたいですね。

代ゼミが大学入試の
プロトタイプを提案

── 高大接続・大学入試改革対応の「論理的評価テスト SRT(Scholastic Reasoning Test)」を独自開発。11月に実施されますね。開発の経緯を教えてください。

 現在のセンター試験に替わる新テストを巡る議論は、昨年12月の中教審の答申がベースになっており、一発勝負という批判に対する「複数回実施」、知識の活用を問う「合教科・合科目、総合型の問題」。そして「記述式」。論点はこの3本柱だったと思います。

 でも、多くの方が「この3本柱、本当にすべて実現できるの?」と感じたと思います。私たちも実現できないと考えています。中でも一番の課題は複数回実施です。複数回でも不公平にならないようにするためには、ハードルがとても高いのです。

 IRT(項目反応理論)を使用するにしても、事前に難易度がわかっている非公開の問題をストックしておく必要があります。その量は現行のセンター試験の300倍と言われています。またIRTは選択問題でなくてはなりませんので、「記述式」と一緒に実現するのは無理があります。

 加えて、受験者の母集団の違いの問題も出てくるでしょう。もし、年2回の実施となれば、先取り学習をしている中高一貫校の生徒が先に受験すると思われます。そして2回目に公立の生徒が受験する。バックグラウンドが全く違う母集団ですから、スコアを同化するためには入念な準備が必要となります。

 「合教科・合科目、総合型」については、今の高校生の必履修科目は6種類です。例えば日本史と世界史の融合問題をつくりたくても、片方しか履修していない生徒がいるので、今の制度ではできません。また、地理と英語の融合問題を作成したとしても、地理の知識がなくて間違ったのか、英語力がなくて解けなかったのか、判断することができません。私たちも試作問題をつくってみましたが、2つの科目の担当者が納得できる問題はほとんどありませんでした。なぜなら融合してしまうと、双方の教科において大学入試以下のレベルでしか問題をつくれなかったからです。そうなると、各教科の知識を前提にしない、あるいは各教科に共通する「思考的技能を測る問題」になると考えています。

── そこで、論理力を測るテストに、というわけですね。

 公務員試験や法科大学院の試験では、そういう問題が出題されています。実は大学入試センターでは、2003年から2010年まで法科大学院の試験をつくっていました。つまり蓄積があるのです。もしかしたら、その問題を新テストに生かしてくるのではないかと、私たちは推測しています。

 9月15日に高大接続システム改革会議の中間まとめが出ましたが、これは一言で言うと「論点整理」です。新テストを議論するための論点を整理しただけのものなのです。

 しかも「これまでの歴史の先に新たな教育の仕組みを創造することは、長期にわたって『答えが一つに定まらない問題に解を見いだしていく』活動である」とも述べています。つまり、答えが1つではないと言ってしまっているわけです。答えがないのであれば、代ゼミで開発し、論理的思考力、表現力を図るテストとして「こういう形はいかがですか?」と解の1つとして提示したものが、この「SRT」なのです。

── どのように実施するのでしょうか。

 対象は中高一貫校の中1生です。科目は「数理探究」と「解釈探究」の2科目で、所要時間は各45分。問題には選択問題と記述問題の両方を入れてあります。評価はAからEの5段階評価。トップレベル模試と同時開催となりますので、通常の英・数・国も受けていただきます。こちらの評価は点数で出します。

── 英・数・国では飛び抜けた点数でも、SRTでは苦戦する生徒が出てくるかもしれませんね。

 その可能性はあります。また、その逆もあると思っています。ですので、受験者数は増やしたいと考えています。

── 大学入試改革では英語の4技能も問われてきますが、それに対する対策は。

 4技能を測る民間の検定試験の導入はすでに始まっています。来春のリリースに向けて、現在、対策講座を準備しているところです。

 今の課題は、4技能に対する大学側が求める出願レベルが一般的に高すぎる点にあります。中堅以上の大学でも「この英語のレベルだったら東大に行けるのでは」と感じるときもあります。ここ1年から2年で検討され、レベルが落ち着くのではないかと見ています。

映像授業に異業種参入
コラボが進む予感

── 昨年、全国の代ゼミ校舎27校舎のうち、20校舎を閉鎖されました。

 浪人生が減っている事実はあるのですが、映像授業を展開することで、現役の生徒にはサテライン予備校の皆さんと一緒に頑張って校舎を増やしていこうとしています。2020年の大学入試改革に向け、他社に先駆けていろいろとやっていることを評価いただいているので、加盟校の皆さんとは非常にいい雰囲気になっていると思いますね。

 映像授業については異業種が参入してきていますので、どう戦っていくのかが問題です。これからも塾業界においてはM&A的な統合は続くと思いますが、塾同士というよりは、異業種とのコラボレーションが飛躍的に進む感触はあります。ITを中心にいろいろな教育のやり方はあると思います。

── スマートフォンでサテラインの授業が見られる時代が来るのでしょうか。

 私たちも「場」を持っていますし、サテラインの加盟校の皆さんも「場」を持っています。哲学として、教える場を持っている人間はやはりその場に来てもらい、“フェイス トゥ フェイス”でやりとりをしたいと思っています。

 「場」のない学習は心理的には受け入れがたいのですが、“フェイス トゥ フェイス”では質問できない生徒もいると思いますし、時代の流れもあります。ITは双方向性を持っていますので、大学生と受験生をつなぐこともできるかもしれません。ITによる学習と今までの“フェイス トゥ フェイス”の学習をどうハイブリッドしていくか、それが今後の大きな課題ですね。

 

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