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2015/1 塾ジャーナルより一部抜粋

〜永遠に未完の塾学〜

第5回 見てるだけの人、身を捧(ささ)げる人

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

消極的傍観者と積極的熱血漢

 人は、人間関係の構築の仕方で二手に分かれる。

 一つは『見てるだけ』の人、できるだけ傍観に徹し、対人関係であまり深入りをしない。塾の人の場合、「あそこの先生は冷たい」ということになって、あまり爆発的には流行(はや)らない。

 もう一つは『身を捧(ささ)げる』人、人の為にはわが身をかえりみず、懐(ふところ)にずかずかと入りこんでいく。塾生と共に怒り、塾生のために滂沱(ぼうだ)の涙を流す。その塾は、当たると一時(いっとき)は大繁盛する。

 ちなみに私は、『見てるだけ』の人である(だから、私の塾は今までも、これからも多分、流行らない。)

見てるだけ その1
だんじり

 当地では、秋祭りのシーズンになると各地でだんじり(祭礼で奉納される山車(だし))を曳(ひ)く。少し遠方だが、岸和田のだんじり祭りは全国的に有名だ。岸和田ほどではないが、祭りの一月(ひとつき)も二月(ふたつき)も前から若者がそわそわし始める地域も多い。

 まず、祭りの寄付集めに青年団が地域の商店を回り始める。だんじりの倉庫で気勢を上げてから来るのかして、どう見ても未成年なのに、酒とたばこの匂いをぷんぷんさせて玄関を入ってくるあんちゃんもいたりする。「先生のとこ、ケチと評判やで。商売に差し支(つか)えるよ。」と世話役から皮肉を言われたこともあり、わが塾も涙をのんで寄付にはお付き合いをさせてもらっている。

 寄付くらいは、地域の交際ごとだから、まあ我慢するとしよう。困るのは、その地区から塾に来ているK美ちゃんのことだ。

 中学1年から塾で手塩にかけて育ててきて、やっと学校でもそこそこの成績をとるようになってきた。真面目で、純朴で、来年は高校受験。期待していたのに、最近ちょくちょく塾に遅れてくる。なんか、薄く化粧もし始めたような。友だちに聞くと、祭りのだんじりの準備で会館に寄ってから塾にくる、とのこと。

 若い威勢のいい兄ちゃんもいっぱいたむろしていて、そりゃ塾よりは楽しいはずだ。案の定(じょう)、祭りの後のテスト結果はボロボロに。やがて一月(ひとつき)もしないうちに、K美ちゃんは塾から消えている。お母さん、だから秋の懇談で、祭りのグループに近づけちゃだめですよってあれだけ念をおしといたのに…、だんじりで、じり貧(ひん)になってどうするの…。

見てるだけ その2
退塾

 嘘か本当か、大手塾の教室長さんの仕事で大きなウェートを占めるのは、退塾を食い止めることだと聞いたことがある。

 個人塾でも、若いうちは塾生に辞(や)められるとショックが大きい。大げさに言うと自分の人生そのものを否定されたような気分に陥ってしまう人もいる。

 ところが個人塾でも私のように歳(とし)を経(へ)て妖怪、化け物に近くなると、辞める子を引き止めることはまずない。辞めるという電話にこそ一番明るい声で応対しようというのが、わが塾の規則の一つであったりする。

 辞める子を引き止めない最大の理由は、成績が上がっている子で辞める子はいないということに尽きる。

 幸いなことに、個人塾仲間から昔たまに聞いた、「せっかく成績を上げたら、これで某大手塾へ行くことができますと言って辞めていかれた。」という経験はまだしたことがない。

 うちの塾で成績が上がらないのなら、その子にとってはうちのやり方が悪いのだから、どこか他所(よそ)へ行かれるなり学習方法を変えてみるなりされたほうがよい。それでもし成績が上がれば、それこそ、そのほうがずっとその子のためだと、外連味(けれんみ)なく心底そう思っている。だから、「お役に立てずに申しわけございませんでした。」という言葉が、素直に口をついて出てくる。

 それに個人塾の場合、自宅と塾の行き帰りに、しょっちゅう塾生や元塾生と出会う。その時に、来てる子であれ、来てた子であれ、「おお!元気にしてるか?頑張ってるか?」と声をかけられないような人生は、送りたくない。

 ただ、正直に白状すると、一つだけ、「辞める。」と聞くと頭をよぎるものがある。それは、その子の授業料。

 来月の職員の給料どうするの?と、もう一人の私が私に囁(ささや)く。

見てるだけ その3
整理屋

 ここからは怖い話。とある別の国の、近未来の、フィクションである(であればよいのだが…)。

 整理屋とは・・・倒産しそうな会社に、融資や再建などの甘い話を持ち込み、経営者を信用させ、また、債権管理の一切を引き受けるなど、言葉巧みに預金通帳や手形通帳・印鑑を預かる。会社の資産を全て処分し、他の債権者に分配できなくなるまで整理屋が巻き上げた後、最終的に自らは行方をくらます。(東京商工リサーチ『悪徳商法の種類』より引用)

 私が高校生の時、生コン工場を経営していた叔父が整理屋に会社を潰(つぶ)された。最初は整理屋さんを恩人と頼り切っていた叔父だったが、最後は何もかも奪われて裸で放り出された。

 最近は、「看取(みと)り屋」という商売もあるらしい。大学病院の待合室をうろうろして、末期癌の宣告を受けてショックを受けた患者さんを見つける仕事だそうだ。見つけたら配下の女性を上手に近づかせて、親切に看病するふりをして遺産をいただくお仕事だと言われている(うん?最近どこかでも聞いたような)。

 世の中、不景気だし、少子化でどんどん市場は狭(せば)まるしで、看取り屋さんが目をつけかねない学校が、ひょっとすると出てくるかもしれない。

 われら、「見てるだけ」の観察屋ではあるが、間違ってもそんな学校に子どもたちを送りだすことがないように、「見る目」だけは磨いておく必要がある。

 多分、塾は安泰(あんたい)である。

 なぜなら、そこには整理屋に狙われるような財産は何もないから(誰だ?ないのはおまえんとこだけだって言ってるのは)。

身を捧(ささ)げる人
熱血漢は幸(さいわ)いか?

 以上を総括すると、「見てるだけ」の人生は、面白味のない、ろくでもない人生のように思えるかもしれない。

 しかし、では、全身全霊で人に尽くす塾人、熱血塾講師の人生が幸せかというと、それも大いに疑問である。

 私が見た範囲では、熱血漢でありながら良き人生を全うする人は、極めて少ないように思われる。

 人に過剰に入れ込む人は、言わば依怙贔屓(えこひいき)の極(きわ)みであって、自分が気に入らない人には逆に極端に冷酷である人が多い。

 また、入れ込み過ぎてわが家庭を顧(かえり)みずに晩節を汚(けが)す人もいる。

 古人(こじん)曰(いわ)く、「君子の交わりは淡きこと水の如く、小人の交わりは甘きこと醴(れい)(甘酒)の如し」。

 君子の交際は水のように淡白であるべきで、小人の交際のように甘酒のごとくべたべたするものではない。

 やはり、何事もほどほど、中庸がよいようである。

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