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中学・高校受験:学びネット

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2014/1 塾ジャーナルより一部抜粋

ズームアップインタビュー この人に聞く113
売り上げ「100億の壁」を焦らず乗り越える
教育・保育の社会的ニーズに応え貢献したい

     

株式会社 成学社
代表取締役社長 太田 明弘さん

 創立32年目を迎えた株式会社成学社は、大阪府を中心に、毎年10教場以上を展開し、25,500人に上る塾生を指導する。売上高は近々100億に達するという躍進ぶりに業界の注目が集まる。しかし、太田社長は疾走して記録を出すより、「無事これ名馬」の心境と、企業経営の安定を最重要視する。さらに、「校塾連携」を成功に導いた情熱、社会貢献の志について語った。

企業理念を貫き
経営安定を確保するのが
最重要課題

── 一昨年は創立30周年記念式典を盛大に行われましたが、まず現在の心境を聞かせてください。

太田 私も今年の2月で満60歳、還暦を迎えます。「無事これ名馬」という言葉がありますが、午年の私もそうありたい。疾走して記録を出すことも大事ですが、企業経営は安定をしっかり確保することが最重要課題だと思います。

 今までの塾人生を考えると、21歳(大学4回生)の時に塾講師となり、28歳の夏に当塾を創立して、ほぼ40年が経ちました。振り返ると本当に運が良かったように思います。今まで休まずに働けたこと、また、困難に直面しても周囲の援助で働ける環境が維持できたことに感謝しています。よくぞ無事にやってこられた、というのが、今の感慨です。

── 2008年にジャスダックに上場されて、5年経ちました。以前、3点のメリットを挙げられました。現在はどのように考えられていますか。

太田 当時と全く同じです。個人企業から脱却すると、継続性の高い経営基盤が確保できます。銀行などからの資金調達面でも個人保証の必要がなくなり、何かと以前より有利になります。また、人材募集の際に会社情報が明確につかめる企業に新卒生が集まるという傾向はあり、一定の効果は感じています。

 最大のメリットは、いい情報を優先して提供していただけること。上場企業になるためのさまざまな審査をクリアしたことで、透明性が高く、社会的に公正な企業であるという判断をいただけるからです。

 私はあくまでも塾の原型は個人塾であると思っています。その手腕が光る塾オーナーさんはたくさんいらっしゃる。地域になじみ、愛される個人塾を経営することは理想ですが、私は小さな塾を立ち上げたときから、将来は組織的な運営をして、仲間と苦楽を共にするという青写真を描き、その思いを実現させたということです。

── 塾の規模が大きくなって、経営に行き詰まったということはなかったですか。

太田 業界では「塾生3,000人の壁」という言葉があります。その壁を越えるに越えられずに苦労したことがあります。少し油断すると、塾生数が減少して経費が膨らむ。また、有力他塾が近隣に教場を開く。その上、見通しが暗くなると、職員も離れて分裂するというのはよくあることです。昔は2,000〜3,000人の塾生をもつ学習塾を7、8校挙げることができましたが、今はほとんどなく、規模は両極端に分かれます。

── 御社の現状はいかがですか。

太田 弊社の今期の売り上げは微増ですが、間もなく100億に達します。売り上げにも「100億の壁」があり、現在は一番危険な段階といえます。以前も「10億の壁」に大変苦労し、M&Aも経験しましたが、その後、手堅く運営し、乗り越えました。今はその時と同様、鉄板のようにブレイクしがたい壁だと受け止めています。社員数が増えてくると縦割り組織にならざるを得ず、社員間の意識交流が希薄になり、モチベーションの平準化が難しくなるからです。しかし、一番怖いのは経営者が焦ることです。「責任ある教育企業として、未来を担う子どもたちを全力で応援する」という経営理念を肝に銘じ、行動がブレないよう戒めています。

── 塾生数、教室数、社員数を教えてください。

太田 直近の数字で、塾生数は約2万5,500人、教室数は約200教室です。併設校を別カウントすると約250教室になります。社員は500人を超えつつあります。先行コンテンツとインフラのために人を増やした経緯がありますが、非常にありがたいことに退職者が減っています。

大学進学まで
責任対応できる
小中高一貫教育の
学習塾を目指す

── 今後の塾経営についてどのように考えられていますか。

太田 技術革新により学習ニーズが多様化し、それに対応する学習システム、指導コンテンツが生まれています。特に近年になって映像授業を含め、学習形態が多様化する中で、これまでの塾経営だけでは対応できないという問題意識を深めているところです。

 経営コンサルタントに「経営者は、事業承継が円滑にできてこそ一人前」とよく言われていましたが、この年齢になって、実感をもった言葉として響いています。私の場合は自社の大株主であり、経営の陣頭指揮を執っていますが、塾経営を先駆ける他社では、経営と資本が分離しつつあると実感しています。事業承継問題がこじれてしまうと社内紛争を招き、M&Aを含め、混乱を起こす事態となりかねない。この問題をしっかり解決するという展望と確信が必要だと思います。

── 経営で大事なことは。

太田 事業経営で一番大切なことは「卵をすべてひとつのカゴに盛らない」ことですが、弊社は事業展開、教室展開、学生層、すべてにおいて集中させず、絞り込まず、常にリスクを分散しています。しかし、卵の種類は統一させたほうがいい。いくら伸び代が大きな業界であっても、思想性が違う介護業界への参入はしません。やはり我々には教育しかない。幼稚園から社会人教育まで垂直化を図り、あくまでもこの業界で企業展開するのが妥当な進路だと確信しています。

── 厳しい業界の中、その躍進ぶりは注目を集めています。

太田 大学実績は大手予備校には及びませんが、準大手に並ぶ大学実績を確保したいと思っています。昨年は、関関同立大に1,395人の合格数を上げることができました。我々の基本戦略のコンセプトは、大学進学まで責任対応できる小中高一貫教育の、卒塾という概念がない学習塾です。

 塾生数5万人は中期に達成しなくてはいけないでしょう。最終的には10万人を目指します。仮に現在の3倍の塾生が来てくだされば、年商も300億になり、民間教育企業として全国5指に入れます。それは十二分に可能な数字です。

── 26年度の決算を下方修正なさったようですが。

太田 個別指導もクラス指導も競争が激化してきたのが原因です。今期の半期決算を見ていると、我々もそうでしたが、業界全体が非常に厳しい。どうやら一番嫌な塾離れ現象ではないかと…。避けがたい時代の風の変化が起こっている可能性があります。

 来年の基本計画は2点あります。@退塾率を減らすため、CS運動に力を入れ、指導力に満足してもらう。Aクラスと個別を併せた併設1教場の塾生数を平均200人に。現在190人を達成しているので、来年はプラス10人を達成させると、経営は極めて安定的に推進します。

塾の力を学校に生かし
官民一体の教育界改革の
一端を担う

── 東京にも進出されていますが、関西での今後の展開は。

太田 来春までに10教室増やす予定です。そのひとつとして、この4月から高石市に300坪くらいの教場を用意し、100坪を個別とクラスの併設校にし、後は新規展開(学童保育)を行う新型モデルの教室を出すことになりました。指導形態は違えども講師同士に助け合いの精神が生まれるでしょう。人間的なつながりも大切にしたいと思っています。

 今は学童保育では小1から小6までお預かりします。待機児童の問題が深刻ですので、社会ニーズに応えるために、保育所は必ず成功させたいです。単に利益追求だけでなく、国の教育・保育の現状から導かれる課題を解決するために貢献したいと思っています。

── 最後に学校経営について伺います。大阪偕星学園高等学校と改称されて、理事長として先頭に立っていらっしゃいますが。

太田 学校経営も厳しい中、入学生が増えています。大阪偕星学園高等学校で校塾連携を成功させるということは、下村文部科学大臣をはじめ、橋下市長の施策である官民一体の教育界改革の一端を担うものだと自負しています。

 学校改革にあたって、市場原理によって鍛えられた粘り、品質に対するこだわり、成績が伸び悩む塾生をしっかり教えてきたという地道な教育の真価を教員に伝え、説得しました。問題から目を逸らさず、真っ先に渦中に飛び込む覚悟を示してこそ、皆の気持ちを一つに束ねることができたのだと確信しています。塾の力を学校に生かし、よりきめ細かな学習指導を行うことができるのです。

 ハード面で最初に着手したのが、インフラの整備です。校舎、体育館、人工芝グラウンド、食堂、トイレを数億かけてみるみる美しく学校を変貌させました。

 学校法人として経済基盤も調い、自立できるようになると、教員も元気になり、保護者からも喜ばれています。4年間の学校改革が殊の外スムーズに運び、塾経営よりもはるかに劇的に成果を上げました。

── 当面の目標は、大学実績を上げることでしょうか。

太田 進学・スポーツ教育並立の立派な学校にしたいと思っています。しかし、単独の高校として生き残るのではなく、塾と同じく学校も垂直化を考えています。中学校をつくるかもしれないし、大学と提携するかもしれません。いろいろな可能性を視野に入れ、将来を展望しています。

── これからも塾と学校の垣根を越えた教育企業として発展されることを期待しています。本日はありがとうございました。

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