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2013/7 塾ジャーナルより一部抜粋

[ 研修会 ] 安田教育研究所 高校入試セミナー
〜教育改革への期待から公立志向がさらに上昇
私立は公立上位校の併願校になることがカギ〜

「いま高校入試で起こっている変化は何か」

  2013年4月26日(金)/ 中央大学駿河台記念館  
     
 4月26日(金)、首都圏の高校入試を振り返るセミナー(安田教育研究所主催)が開催された。講師は(株)進学研究会教育研究所所長の進士高男氏、(株)エデュケーショナルネットワーク 開発本部開発部データ課課長の池田亨氏、安田教育研究所副代表の平松享氏の3人。入試結果だけでなく、公立・私立の高校でどのような改革が進んでいるかにも話題が広がり、密度の濃いセミナーとなった。

都立への志向率69.9%に上昇
この先10年で「骨太の教育」へ

 (株)進学研究会 進学研究所所長の進士高男氏は、この春の都立高校入試と改革が進む都立高校の現状について解説をした。

 「平成25年の一般入試の倍率は1.41倍。1万2,975人もの不合格者が出ました。しかも4校に1校は100人以上の不合格者を出しています。都立志向率も昨年の69.3%から69.9%に上がり、徐々に都立志向が促進していることがわかります」

 志願者数は普通科(学年制)が連続して増加。今年は男子の増加数が多い(前年は女子の増加)。昨年は工業科が増えたが、今年は減少。総合学科にも志願者が戻ってきた。また、外国語コースを設けている学校への志願者も増えた。国際学科の国際は3年連続で志願者数を伸ばしている。

 「国際は海外の大学に進学するには、非常に有利だと思われます。将来、企業内で英語の必要性を感じている家庭も増えており、英語に特化した高校に人気が集まったのではないでしょうか」と進士氏は分析する。

 また、推薦入試の志願者が昨年に比べ、1,754人減少した。これは推薦入試制度が変更され、グループ面接だったものが個人面接になり、集団討論も実施されたりしたことが影響している。しかし、新しいタイプの学校で推薦枠が50%から30%に縮小されたこと、作文・小論文・実技・その他の検査を必ず1つ課したり、倍率自体は3.2倍と増加した。

 来年の入試では、公立中3生は今年に比べて1,700人増える。都立も1,000人ほど定員を増やすと思われるが、進士氏は目黒、広尾、杉並、練馬といった学校が1学級増するのではないかと予測する。

 さらに注目したのは、自校作成問題について。現在は実施校15校がそれぞれ作成しているが、26年からは3グループに分け、共同作成することになった。進学指導重点校7校、進学重視型単位制高校3校、併設型高校(中高一貫教育校)5校の3グループだ。

 「しかし、同じグループ内の学校でも格差があります。失礼ですが、進学重視型単位制高校の新宿、墨田川、国分寺のうち、墨田川は共通問題では難しいのではないか。今年の同校の数学の入試問題を見てみると、記述問題が増えていました。途中の式も評価し、点数を加算してあげたいために、記述を増やしたようにも感じられました」と進士氏。

 グループ分けはされるが、一部は学校独自の問題と差し替えることも可能で、こうした裁量の中で調整されると考えられる。また、公立中高一貫校の適性検査も共通問題にできないかと検討されている。

 進士氏は、都教育委員会が策定した「都立高校学力スタンダード」にも言及。これは学習指導要領の内容・項目に対して、どの程度学べばよいか具体的な目標を表記したもので、「基礎」「応用」「発展」の3段階で作成されている(普通科目)。これに基づいて、各校は自校の学力スタンダードを作成。25年は32校、26年からは全都立高校(進学指導重点校、中高一貫教育校、夜間定時制を除く)で実施される。このスタンダードを検証するため、学力テストを含めた調査も26年2月に実施される予定。テストは3段階別の共通問題になる可能性がある。

 さらに注目したのは「次世代リーダー育成道場」だ。これは都立学校の生徒にのみ対象を絞り、海外留学を支援するもの。24年は150人だったが、25年は200人と増員。短期というより1年の長期留学希望者を募集している。

 「この海外留学のための事前研修の内容が非常に濃い」と進士氏。英語研修はもちろん、日本の歴史や伝統文化も学ぶほか、各界のリーダーによる講義もある。受講料は60万円だが、これは渡航費や滞在費に充当される。

 都では24〜33年の10年間の新たな「都立高校改革推進計画」を策定し、さまざまな改革を進めている。24年からは理数教育に特化した理数フロンティア校(西、富士、墨田川、葛飾野、広尾)も指定された。

 進士氏は「こうしたニュースが新聞に載ること自体が、都立高校の宣伝になる。これから都は骨太の教育をやろうとしていると感じています」と語った。

神奈川の入試一本化で
私立受験者が
1万5,000人増

 続いて、(株)エデュケーショナルネットワーク 開発本部開発部データ課課長の池田亨氏が千葉県、埼玉県、神奈川県の高校入試について解説した。

千葉県

 千葉県では今年の公立進学希望者は4万323人で、前年より157人減。これは人口の減少によるもので、公立高校の進学希望率は昨年の77.2%から77.5%にアップしている。

 「一昨年は入試制度の変更により、一時的に公立高校への希望者が減りましたが、それからジワジワと公立志向が高まっています」と池田氏。

 さらに千葉県の前期選抜の応募者数トップ10に、県立千葉が入らなかったことに注目。「これは入試の日程が都内の国立や慶應などの私立難関校とバッティングしたため、最上位層の生徒はそちらに流れたと考えられます」と解説。

 また、後期選抜の倍率が昨年の1.39倍から1.44倍にアップしたことにも触れ、「新しい入試制度が定着し、合格ラインが読めるようになったことから後期の応募者が増えたのでは」と分析する。

 私立入試については、中3生数が減った以上に私立への出願数が減っており、単願・専願は10%以上減少した模様。出願傾向では、前期の割合が91.2%(5年前は78.6%)とますます前期にシフトしており、「後期は難関・上位校を除くと、二次募集的な色合いが強くなってきた」と話す。そんな中でも2年連続で10%以上応募者を増やしているのは芝浦工大柏、昭和学院、二松學舍柏、千葉国際の4校だった。

 千葉では、公立の後期選抜の不合格者の数を偏差値別にみると、一番多いのが55〜59の層。次に多いのが65以上、続いて60〜64、50〜54と続く。この不合格者が私立進学者だと想定できるため、「私立はこのあたりをターゲットにしてコース設定をすると、効率がよいといえます。逆に45以下では不合格者は少ないですから、私立同士で併願者の取り合いになります」と解説した。

埼玉県

 埼玉県の今年の公立進学希望者は4万8,063人。昨年より498人増加した。埼玉も千葉と同様、少しずつ公立志向が上がってきている。県内私立の希望率においては、一昨年は入試制度の変更により上がったが、その後は年々低下。県外私立の希望率は低下したままの状態にある。

 公立受験では、昨年応募者数トップ10から外れた県立浦和がトップ2に。「昨年は都内の難関私立の入試日と重なり、出願を見送った生徒が多かったのですが、今年は定員増加があって、生徒が増えました」と池田氏。

 他には所沢北、川越南が二・三番手校として、応募者数を飛躍的に伸ばした。

 「今年の入試のトピックはこの2校に帰結すると言えるほどに増えました。特徴的だったのは、この2校の受験生は入試まで志望校を変えなかったこと。何度も志望校を変えるチャンスがあったのですが、不合格なら私立併願校にという傾向が強かったと思います」

 こうした流れから、埼玉では千葉以上に偏差値55〜65以上の層の公立不合格者が多い。池田氏は「私立は公立トップ校の併願ができるカラーを強くしていかないと、併願者をたくさん集めたとしても歩どまりがよくないでしょう」とアドバイスする。

 私立入試で志願者数の増加率ナンバーワンは、38.5%増の花咲徳栄。36.5%で2位の星野共学部は2年連続で増加している。

 池田氏は埼玉の各市の私立志向率を分析。さいたま市や川口市は比較的低く、川越市や鴻巣市、坂戸市、本庄市は高い。「市内に私立高校が多い市では私立志向が高いと言えます。東京に隣接していても、思ったほど高くない市もあります。私立の先生方は私立志向の高い地域の塾や中学校から回るか、それとも低い地域で新規開拓をするか。判断する資料にしていただければと思います」と話した。

神奈川県

 今年、入試が前後期一本化となった神奈川県。「先の見えない公立受験を避け、先に私立に決めてしまおう、というのが、今年の神奈川県の受験の傾向でした」と池田氏。今年の私立受験者は合計で5万3,010人と昨年の3万8,098人に比べて、1万5,000人近くも増加。県内私立のほとんどが志願者数を増やした。

 中学卒業予定者数も前年より1,075人増え、ここ10年で過去最高になった。公立は鳴り物入りで定員増を行ったものの、定員割れする高校が続出したのも今年の大きな特徴。定員割れの学校は23校で180人。昨年がゼロ、一昨年が3校17人だったことと比べると、その多さがわかる。

 「定員割れをしたのは、中堅からその少し下の学校が中心。地域で一番入り易い学校は定員割れしていません」と池田氏は解説する。そのあたりの層がより多く私立に流れたことが推測できる。また、偏差値レベル別の公立高校の不合格者数を見てみても、神奈川では39以下から65以上の層までまんべんなく不合格者を出しており、どの層からも一定数の生徒が私立併願校に流れたことも予想できる。

 このような私立に追い風となった状況でも、志願者数が増えなかった学校もあった。

 「日本女子大や法政女子など上位の難関校が増えませんでした。こうしたガチンコ入試の学校は、公立の入試改革の影響をあまり受けないのでしょう」

 これだけ私立希望者が増えたといっても、神奈川の公立中3生1人あたりの平均私立高校出願数は0.8校と、他県と比べるとかなり低い(東京1.4弱、千葉1.1強)。

 「今年は5万3,000人を超えましたが、神奈川の中3生が平均1校以上、私立を受験すると想定すれば、来年の私立受験者数は7万8,000人を超えるはずです。これから私立の募集活動が本格的に始まるわけですが、この調子でいくと『前後期一本化しても県立受験はそんなに怖くない』という風潮が出て、5万3,000人の水準を守れなくなります。私立の先生方で力を合わせて、受験者数を増やしてほしいと思います」と締めくくった。

共学、丁寧な広報活動の
学校が人気
書類選考型の一般入試も
増加傾向に

 引き続き、進士氏が都立入試の一本化について言及。

 「都立については現在のところ、一本化の話はありません。当面は推薦入試で選ぶ側と選ばれる側に『汗をかいてほしい』という方針のようです。しかし、今後は一本化にしたほうがよいという流れになりそうです。そうすれば、入試日程が後ろ倒しになり、期間も短くなるからです」

 また、今年都立の4校に1校が100人以上の不合格者を出した理由として、以下の2つあげた。「一つは大手進学塾の合格実績の競い合いがあったこと。もう一つは私立が努力して都立最上位校の併願しやすいコースをつくり、実績を上げていることがあげられます」。

 定員が増えたにもかかわらず、200人以上の不合格者を出した都立は、駒場、三田、文京。大学合格実績が着実に伸びていることが評価されている。

 さらに、首都圏の私立高校の入試についても解説。入学手続者が超過した学校は青稜、日体荏原、東京実業等。それらの共通点として進士氏は、「共学、募集人員を増やしたこと、広報活動がきめ細かい、全体的に安心感がある」と分析。

 各私学の動向も報告。川越にある秀明高校は、全寮制の中高一貫校だが、26年度から高校募集を開始する。夕食後にも全員が学校に戻って勉強しており、医歯学系大学への進学実績が高い。進学実績が伸びている朋優学院は、来年から調理や美術といった実業系のコースの募集を停止する予定だ。

 また共学化も進む。26年には安田学園、岩倉、中大附属横浜が共学化。27年には、京北は北区赤羽から文京区白山に戻り、男女共学の中高一貫校となる予定。小松原高校も移転し、共学化されることが発表されている。進士氏は「こうした学校の周辺の私学では影響が出る」とみている。

 池田氏は大学合格実績を大きく伸ばした千葉、埼玉、神奈川の高校について解説。「公立では進学指導に重点をおいた指定校が伸びています。私立では中学を開校した学校、コースを改編した学校の実績が伸びています」。しかし、中にはこうした変化がなくても、進学実績を伸ばしている学校もある。獨協埼玉、鎌倉学園などだ。池田氏はその要因は指導内容の良さだと分析している。

 現在、神奈川の私立では書類選考型の一般入試が増えつつある。出願すると合格発表まで高校に行く必要がないスタイルの入試だが、「これはあくまでも一般入試であって、私立同士で併願しても構わないものです」と池田氏は補足する。単願前提の書類選考型と混同し、併願は不可と誤解されていることもあることから説明があった。

 最後に、安田教育研究所副代表の平松享氏が、都立の小中高一貫校の実現化について話した。

 「すでに検討委員会も発足しており、アドバルーンだけで終わることはないと思います。高校入試においては遠い話題のように思えますが、やがては東京の高校入試に大きく関係してくるのではないでしょうか」と話した。

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