外見は普通の家
中身は最先端の教育
ツユム塾は岡山駅から2つ目、備前西市駅から車で5、6分の住宅地にある。外見だけでは塾とは思えない普通のご自宅だ。看板も目立たない小さなものだ。室内は4つの畳の間を教室に改築されており、机と椅子がゆったりとしたレイアウトで並んでいる。床の間やお仏壇もあり、「おばあちゃんの家」にでも来たような錯覚を覚える。廊下を挟んだ隣の教室には白を基調としたブースで区切られ、パソコンが10台ほど並んでいる。
露無塾長は、開塾当時から一人ひとりに応じた指導法を見出す、いわゆるプロデュースをして評価を得てきた。現在は幼児から高校生まで過去最高の140人が在席、その多くを塾長が一人で指導している。
「中学生は一斉指導が人気で、この春からの各学年のクラスは満席です。入れない生徒さんには、個別指導のほうに回ってもらうか、映像授業を受けてもらっています」。小学生の数も増え、中学生の数と同等となっている。
映像授業は市進のウイングネットを導入。映像を見た後で、吉備のメビウスで確認をする。メビウスは市進と問題がリンクしていることや、同じ問題ではなく、類題なのが良いところですと露無塾長は話す。
話題は事欠かない。速読を導入して2年、受講生が105人となった。販売元の(株)SRJによると、個人塾の教室としては日本一だそうだ。単独受講もあるが、小・中学生が算数・数学などと一緒に受講するセット受講が多い。増えた要因を聞くと「お子さんが国語で困っているお母さん方へのアプローチの仕方です」という。
塾業界には正直、国語の成績を完全にあげるコンテンツはない。そうしたときに露無塾長は「とりあえず速読を受講し、国語の問題文や教科書を読みやすくしましょう。本に興味のないお子さんに本を読む気にさせることから始めましょう」とお母さんに伝えている。「じゃあ、その効果は?」と聞かれるので、「野球のピッチャーであれば、投げるボールは速くなるでしょう。ストライクゾーンに入るか入らないかは技術の問題、問題の解き方になります。でも、速くなれば野球に興味を持ちます。足が速かったらサッカーが上手に見えるので、サッカーが好きになるでしょう。それと一緒です。まず興味を持って楽しく学習していただきたいです」。使ってみたくなるアプローチ法だ。
●指導のポイント
最新の教育ソフトを導入し、生徒に応じた指導をする
●運営のポイント
保護者への説得力あるアプローチの仕方で、講座を受講してもらう
20年間、口コミのみ
保護者に還元が広告宣伝
英検・漢検・数学検定はもちろん、そろばん教室に毛筆・硬筆、そして学童保育とまだまだオプションはある。そこには高校時代の同級生(英語)やテニスの友達(学童)、卒業生の親(硬筆)といったように、塾長をフォローする人材が多くいる。人のつながりを大切にする塾長だけに紹介は多いと聞く。
「人材を探す場合、まず知り合いに恥を忍んでメールを送ります。その後も探し続け、人材が見つかるまでは開講しません」と手堅い。計画から実行まで時間をかけ、良い人材が見つかるまでは妥協はしない。そろばんは3年、学童は5年かかったというから、人材にかける思いは強い。当然、人材に対するお礼(時間給)も、他塾から「出しすぎ」と言われるほど配慮している。
ツユム塾の強さはハードとソフトの絶妙なバランスだといえる。20年間、口コミのみでやってこられたのは、最先端の教育設備に塾長の生徒・保護者に対する緻密なアプローチにある。
速読が岡山で1位となり、気を良くした露無塾長は、紹介キャンペーンとして、紹介した人、紹介された人の両方の授業料全額を無料にしたことがあった。「紹介した人だけを無料にすると、必ず紹介された方はそのお母さんに不満が生まれると思うのです。ですから両方とも無料にしました(笑)」。こうなると入塾者が増えるほど、塾は赤字になるが、露無塾長の考えはこうだ。「何が喜ばれるかを考えたときに出た発想なのです。広告代理店に何十万も支払うよりも、保護者の方に還元することのほうが気持ちよいのではないか? それにより口コミとしてますます広がります」。
●経営のポイント
良い人材が見つかるまで、新しい講座は開講しない
口コミを広げるための戦略を練る
要望を受け、中学受験
クラスを4月から開校
以前から個別で指導をしていた中学受験を、4月から中学受験クラスとして開設した。
「このクラスは、画一的な授業には向かない生徒さんにも対応するため、柔軟にカリキュラムに手を加えられるように少人数のクラスにしております。特に作文等には添削するよう心がけています」
エネルギーは必要とするが、研究しながら、なるべく求められ対応できるものは頑張っていこうと思っていると露無塾長は話す。
中学受験クラスまでを入れると、講座は10種類以上になる。ツユム塾のレベルでは格段に多いオプション講座の導入といえる(中学受験は別扱い)。
「今時は科目的プロフェッショナルに特化するのが正しいと思うのですが、各生徒に合わせられるように上手にプロデュースする。いわゆる、人に対してのプロフェッショナルに特化することで、生徒の成績は伸び、楽しく通塾してくれます」
要望されると断りきれない。何とかその生徒に応じた勉強方法を模索し、考え出す。露無塾長の教育法・人柄が評判を得て、140人の生徒につながっている。個人塾はそうあらねばと塾長はいう。
後先になったが、ツユム塾がある地域には個人塾はないが、すぐ近くに大手塾が複数軒をそろえている激戦区なのだ。
●運営のポイント
主流とは間逆の方向をとる。科目的プロフェッショナルに特化はしない
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