前身は公立小学校教諭
教える技術を生かして塾講師に
松本塾長が、高松市内に学習舎シオンを開塾したのは、2004年のこと。それまで12年間にわたり、県外で公立校の教諭をしていた。
「教諭をやめた時は、他の仕事に就くつもりだったんですけど、人を教える仕事しかやってきていないので、その技術がお役に立てばと思い、塾を始めました」。さわやかな笑顔で語る松本塾長。
高松駅周辺とは違い、大手塾の進出がない現在の場所を選んだのは正解で、開塾当初6人だった生徒数は順調に増え続け、13坪という比較的小さな教場にもかかわらず、現在100人近くを数える。その9割以上は、地元学区にある小学校と中学校に通う子どもたち。HP開設、年間12回のチラシ折り込み等により、塾名が浸透し、地元塾として定着した結果だろう。
開塾当時から2010年夏前まで、シオンの指導法は、学年・教科ごとの一斉授業だった。地元学校の授業の進行に合わせ、予習。テキストを用いて指導し、課題を解くという授業内容をとっており、教室内のレイアウトも、学校の教室同様、ホワイトボードに向かって前向きに机と椅子を配置していた。
「当時、教えながら私自身、不満がありました。生徒が多くなると、目が行き届かなくなるせいもあって、いくら教えても伸びない子がいるんです」
しかも、曜日・時間帯によっては満席のコマがある半面、座席にかなり空きがあるコマもあるという状況だったのである。
●経営のポイント
地元の学校の授業に合わせた指導で、地域密着を図る
吉備システム導入後
授業形態・レイアウトを一変
2010年の夏休み前、吉備システムを導入した。
「夏休みに入り、子どもたちが吉備のプリントに取り組む様子を見ていたら、一斉授業をしなくても進められると思ったんです」
そこで、松本塾長はレイアウトをガラッと変えた。ホワイトボードをなくし、教室の真ん中に衝立を置いて仕切りにし、壁や衝立に向かう形で長テーブルと椅子を配置。満席状態で24人が座れる。さらに、授業形態も一変させた。
「一斉授業をやめ、個別に指導するようにしました。板書して教えることは一切なくなりました」
一斉授業だと授業中に生徒と話ができるが、今の授業スタイルだと、講師のほうから意識してコミュニケーションを取らないと、生徒とのふれ合いがなくなりかねない。そこで、授業中は、生徒たちの様子を見て回りながら、手の止まっている生徒や弱点対策のプリントをやっている生徒を中心に声をかける。
「生徒一人ひとりのレベルに合わせて吉備のプリントを用意するので、従来に比べ、準備に手間がかかりますね」
シオンでは講師と塾長との2人で指導しているが、プリントアウトだけで1時間半はかかるという。宿題のプリントもあるので、紙代、プリント代はかなりの経済的負担だ。年間50万枚プリントし、コピー機の会社の人に「ここまで使っているところは見たことない」と言われたほど。ちなみに小学5・6年の通常コースの場合、週時数4コマの月授業料は1万1,000円〜1万2,575円(諸経費別年額1万500円)とリーズナブルだ。
さて、教室にやってきた生徒は、一人分ずつ用意された授業メニューのプリントに取りかかる。解説が必要なものは、解説シートも用意されているので、自学自習スタイルで、それぞれ学習できる。確認テストで間違えた場合は、弱点対策のための弱点攻略問題のプリントをこなすことになる。
●指導のポイント
学校の授業がわかるよう、生徒一人ひとりのレベルに合わせて、塾で予習
多彩なコース展開で
成績・効率ともにアップ
吉備システム導入後、成績中位から下位層の生徒の高校合格率や成績がアップした。
さらに、曜日・時間帯によっては席の埋まり具合が違うという非効率さも解消されてきた。それは、フリーラーニング(個別学習)コースを設置したからだ。生徒自身の都合に合わせて、回数、曜日・時間帯、教科、レベルを選べるというもので、部活で通常授業に参加できないというような生徒だけでなく、苦手教科だけ勉強したいなどの場合もOK。このコースの生徒が、通常授業で空いている席を埋めているのだ。一斉授業ではないからこそのメリットだろう。
またシオンでは、昨年からe-ラーニング教材「すらら」も導入。在宅学習コースを設け、県外の生徒も在宅指導しているほか、教室でも活用している。例えば、中学1年の勉強からやり直したい中2生、ずっと講師がついて教えないと理解できないといった生徒に活用している。
「パソコン任せにするのは抵抗があるので、教室で『すらら』を使っている生徒には、声をかけたり、アドバイスしたりしています」
小学校教諭時代の数年間、情報教育を担当し、パソコンを活用した授業をよく理解している松本塾長ならではのパソコン活用術といえる。
ところで、シオンは、英検、漢検、数学検定の準会場校として認定されている。教室をオープンな場にして、いろいろな人に来てほしいという塾長の思いの表れである。現に県外からの受検者や大人も受検に来ているとか。
シオンでは、今年4月に2つめの教室を開講。現在の2人の講師で対応し、不足分はアルバイト講師で補うという。
松本塾長は、「吉備の活用で、どこの教室でも同じ内容をサービスできます」と自信をのぞかせる。
●運営のポイント
席の空きをなくすフリーランニングコースの設置で、効率アップ
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