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2013/3 塾ジャーナルより一部抜粋

小林弘典氏が考える
オプション講座の有用性

  小林弘典氏 プロフィール
PS・コンサルティング・システムの代表を務める学習塾経営コンサルタント。学習塾の個別コンサルティングを主業務とするかたわら、講演・執筆活動の他、塾経営者の勉強会「千樹会」「伍泉会」なども主宰している。 塾ジャーナルでは「塾長のマンスリー・スケジュール」を連載中。
 

 「昨年9月にソロバンを始めたら、これまでに小学校1〜4年生が30数名集まりました。この子どもたちをなんとか順次、塾部門の5年生につなげていければと考えています」

 中部地方の学習塾の塾長から元旦、こんなヒトコトが添えられた年賀状が届きました。

 ここ数年、塾のいわば本業である教科学習の指導に加えて、ソロバンや書道、英会話などのオプション講座を設置する塾が急激に増えていると言われています。

 その1つ、「速読」の教材販売の大手・(株)SRJの堀川直人氏によれば、同社の商品導入塾は「創業から5年で300校突破、その後の5年で1,000校突破、さらに1年3ヵ月で1,500校突破と、ここ数年は個別指導塾を中心に加速的に拡大」しているそうですが、こうした傾向は、とりわけ地方の中小中堅規模の塾に顕著なようで、いま地方都市ではオプション講座が静かなブームになっていると言っても過言ではないかもしれません。

 ところで、このように各地の塾で広まりつつあるオプション講座の開設は、われわれが従来営んできた「塾というビジネス」にとって、本当に有用なのでしょうか。

 有用か否かという議論は当然、いくつかの側面から行われなければなりません。あらゆる面を考慮してというわけにもいきませんので、ここでは差し当たり、「当面の集客に寄与するか」、「実際に収益が上がるか」、「自塾の将来のビジネス面で役立つか」という3つの観点から、皆さんとご一緒に考えてみることにしたいと思います。

1 オプション講座は集客に寄与するか

 初めに結論から申し上げてしまいましょう。オプション講座が当面の集客に寄与するかどうかと問われれば、少なくとも現時点では、「違いなく寄与する」というのがわたしの答えです。現に中部地方の地域塾がソロバンを始めたところ、4ヵ月で30人も集まりました。また、九州の中堅塾が昨年10月、年長のお子さんを対象とした「小学校入学準備講座」を開設したところ、2万枚の折り込みチラシ1回で40人の体験入会がありました。体験後の継続は37人。チラシ540枚で1人の入会です。ケタ外れの反応と言ってよいでしょう。こうした例があちこちで出てきています。

 とはいえ、もちろんそれがそのまま塾ビジネスにとって有用かと問われれば、そう簡単に「イエス」という答えが出てこないのも事実です。その理由を検討するために、まずはオプション講座にはどんなものがあるかをみておきましょう。

 オプション講座はいくつかに分類することが可能です。ここでは異論が出るのを承知のうえで次のように分けておくことにします。

@学習系
プリントなどを使った算数教室、国語教室、お受験教室、読書教室
A知能.能力開発系
知能.能力開発教室(七田式など)、速聴、速読、パズル
Bおけいこごと系
習字、ソロバン、英会話
C芸術系
絵画教室、音楽教室、リトミック、バレエ
Dスポーツ教室系
体操、サッカーなどのスポーツクラブ、水泳
E学童保育系
学童保育、学童保育併用塾
F就職活動.資格系
就活講座、資格受験指導

 このうち@の学習系はわれわれの本業ですから、本来オプションではありません。が、行論上、1つの項目として分類に加えておきます。

 ご覧の通り、オプション講座の対象の中心は、主に幼児と小学校低.中学年です。Fの就活、資格は主に大学生と高校生、Aの速読、速聴は学種学年をまたいでいますが、そうしたオプション講座は全体的にみれば、例外と言ってよかろうと思います。

 では、こうした種類の、いわば「学校外学習活動」に参加している子どもたちはどのくらいいるのでしょう。

 ベネッセ教育開発研究センターが2011年9月、東京.神奈川.千葉.埼玉在住の、小1生から中3生までの子どもを持つ母親7,519人に尋ねたアンケート調査がありますのでご紹介しましょう(表1参照)。

 とりあえず、小学校中学年の欄にご注目ください。一番人気はスイミング。35.5%もの子どもが通っています。次は通信教育の33.4%。かなりなものです。その次はスポーツチームの24.7%、さらにその次は楽器の20.8%。さらにその次はスポーツクラブ.体操の17.8%。スポーツ教室系が圧倒的に多いことがわかります。が、この下にくると習字が16.2%、英会話が15.7%、プリント教材教室が11.3%、受験のための塾が10.8%と学習系.おけいこごと系もランキングに入ってきています。

 ここまではスポーツ教室系や芸術系もオプション講座に加えて、話を進めてきました。現実には、大掛かりな設備や備品を伴うスポーツ教室やピアノ教室を塾で行うのは難しいでしょう。しかし、そうした難しいものを除いた習字や英会話やソロバンや、おそらくベネッセ調査では「その他」に含まれる知能.能力開発系の講座にも、現時点でこれだけの子どもたちが通っているわけです。本業であるプリント教材教室や受験準備、学校補習に加えて、習字や英会話やソロバンや知能.能力開発や、やり方によっては塾でも可能な体操教室や音楽教室、絵画教室や学童保育などを始めれば、それなりに子どもたちが集まってくることはほぼ間違いないでしょう。

 さらに言えば、塾はもともとクチコミで広がるビジネスです。幼児や小学校低学年、中学年の子どもたちが中心といっても、そうした子どもたちが集まれば、その兄姉はもちろんのこと、ママ友たちの友人知人を通して、より多くの子どもたちが集まってくることも大いに期待できるでしょう。さきに、オプション講座が当面の集客に寄与するかと問われれば、少なくとも現時点では、「違いなく寄与する」というのがわたしの答えだと申し上げた理由がおわかりいただけると思います。

2 実際に収益は上がるのか

 オプション講座を開設すれば、それなりにお客様が集まってくることは、まず間違いありません。実際に需要はあるわけですから、塾で培った広報宣伝戦術を駆使すれば、ある程度の集客は容易と言ってもよろしかろうと思います。

 ただし、集まってくるお客様の中心はおそらく「年長さんあたりから小学校3年生」というところでしょう。オプション講座のターゲットがもともとこの層なのですから、それは当然のことでしょう。

 前段で、オプション講座は集客には寄与する、とはいえ、それがそのまま塾ビジネスにとって有用かと問われれば、そう簡単に「イエス」という答えが出てこないのも事実だと申し上げました。まさにこの、集まってくるのが「年長さんあたりから小学校3年生」というところから、そう簡単に「イエス」と言い切れない2つの問題が生じてくることになります。その1つが「収益性」です。

 表2をご覧いただきましょう。文部科学省が2年おきに行っている『子どもの学習費調査』をもとに作成した表ですが、「学習塾」の支出者平均と「その他の学校外活動」の客単価とを比べてみてください。例えば公立の中学生1人を入塾させると、塾には年間25万7千円の収入が生まれます。しかし、公立の小学生の学校外活動(=オプション講座)ですと8万5千3百円しか収入が生まれません(公立小学生の「学校外活動」の支出者平均は13万2千円ですが、先のベネッセ調査によると、小学生は平均1.52種類の学校外学習をしているため、1.52で除している)。塾部門の中学生の3分の1の収入です。これではたして収益が上がるかどうか。

 確かに、間違いなく客は集まるでしょう。しかし、習字にもソロバンにも英会話にもそれぞれ専門の事業者がいますので、これらの事業者を蹴散らして採算分岐点をゆうに超えるところまで客を集め、相応の収益を上げるところまでいけるかどうかとなると、少々疑問が残るのも事実でしょう。そのあたりは十分検討する必要がありそうです。

3 将来のビジネス面で役立つか

 簡単に「イエス」と言いきれない問題の2つ目が「継続性」の問題です。冒頭、ソロバンを始めた塾の塾長の年賀状に、「この子どもたちをなんとか順次、塾部門の5年生につなげていければと考えている」と添え書きがあったことを紹介しました。たとえいま現在の収益性に問題があっても、その子たちが成長した段階で、順次、塾部門に入ってきてくれれば、何ら困ることはありません。オプション講座時点で少々赤字が出てもすっかり回収できるだけでなく、十分にお釣りがくるからです。加えて、入塾予備軍を一定数抱えていれば、春の募集がずいぶんと楽になって、夏前に資金難に陥る可能性も低くなります。塾ビジネスにとって、これほど嬉しいことはありません。

 だが、その継続がなかなか難しい。

 もう一度、表1をご覧いただきましょう。習字の参加率を、小学校低学年→中学年→高学年→中1生と追ってみてください。10.1%→16.2%→13.4%→5.5%と、中学生になった途端、急に低くなるのが見て取れるでしょう。ソロバンの場合は5.8%→5.8%→4.9%→1.6%、英会話の場合は16.0%→15.7%→15.4%→9.5%。

 一方、受験のための塾は2.5%→10.8%→20.1%→18.3%、補習塾は2.3%→5.1%→11.3%→13.0%。

 ご覧のように子どもたちは、学年が低い時期には習い事に通い、高くなるにつれて塾に通い出すものです。その際は普通、場を替える、つまりは違った教育施設に移っていくのが一般的と言ってよいと思われます。

 この切り替えを同一の塾の中でさせることができるかどうか。ここでの話の流れでいきますと、オプショナル講座に通ってくれていた子どもたちが、そのまま塾部門に入ってきてくれるかとなると、これがなかなか難しい。

 全くの仮説ですが、わたしはこの国の家庭は、文化的あるいは家計収入的にみて、固定された何層かの集団に分かれており、ある特定の集団に属する家庭の子どもたちは一連の定まった学校外学習活動の組み合わせにしか参加しないのではないかと考えています。

 少々憚られますが、1つだけ具体例を挙げましょう。

 皆さんもよくご存じのGという読書教室があります。オプション講座としては極めて優れたもので、全国各地で導入している塾が少なくありません。

 しかし、優れているがゆえに集まってくるのはたいてい文化的、経済的にハイレベルのご家庭のお子さんたちばかりで、そのためにこのお子さんたちが小学校高学年になったとき、特に地方の普通の塾では困ったことが起きます。すなわち、普通の塾では、この子たちの保護者が求めているような塾部門のコース、例えば中学受験コースを設置することができずに、結局は優秀な子どもたちが他塾に流れてしまうという事態が出来することになるわけです。

 ことはソロバンなどでも同様です。週2回、各60分のソロバンの月謝はおおよそ4千円から5千円といったところでしょうか。これが小6生になって普通の塾部門に通い出すと、月謝は1万円前後に変わります。中1生になると安い塾でも1万数千円に変わるでしょう。月謝4、5千円が当たり前だった家庭にとって、この負担は相当なものではないでしょうか。やめていく子も当然、少なくないと思われます。

 このあたりの接続の問題、継続の問題をしっかりと検討し、準備したうえでないと、ただ単に小学校低学年の子どもたちが多い塾ということで終わってしまって、オプション講座は自塾の将来には何ら役立たないことになってしまいかねません。細心の注意が必要だろうと思います。

   *   *   *

 さて、以上簡単に、塾にとってのオプション講座の有用性についてみてきました。字面だけを追っていくと、わたしがオプション講座について否定的な見方をしていると思われるかもしれません。しかし、それは誤解です。特に少子化の急な地方都市においては、集客が容易なオプション講座は、これからの塾を支える大切な切り札の1つと言ってよかろうと思っています。ただ、課題がないわけではない。その課題を解決する手立てを考えないで手を出すと、思わぬ痛手を被ることになると申し上げているに過ぎません。その点に十分配慮しながら、上手にオプション講座の導入を進めていっていただきたいと思います。

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