“経営”を学ぶ 〜10年後の目標は?〜
ある企業の後継者に相談を受けていた時、こんなことを尋ねました。「10年後、この会社をどのようにしていきたいと考えていますか?」。すると彼はこう答えました。「それは計画ということですか?」。私「いいえ、目標です。計画はその後に出てくるものです。ただ、“夢”というと別に達成できなくても構わないと考えますが、目標は達成することが大前提です」。彼「そうですね、売上を今の倍にすることとか…。それくらいですかね…」
オリンピック選手は、幼少時からオリンピックに出ることを目標に練習してきた結果、出場できたのです。目標にしたら必ず出場できるかというとそうではありませんが、目標にしなければ絶対に出場できません。明確な目標を持つことは企業経営でも同じです。
積上げ式はダメ
例えば、年商1億円の会社が10年後に10億円にしたいという目標を立てたとします。これを、今の仕組み、今の販路、今の商品などを変えずに頑張って売ることで目標を達成することは可能でしょうか。昔の高度成長期ならいざ知らず、今の低迷する経済状況の中では困難でしょう。
今までの積上げ式の経営のやり方で大きく成長することは難しいと考えます。従来とは全く違う考え方を取り入れていかなくては、成長はおろか、存続すら危なくなります。このシリーズで、後継者に自分が新たに起業する気持ちをもってほしいという願いを込めて「第二創業」という名前にした理由です。
水脈はどこにある
企業経営は、時代適応業であるといわれています。時代の流れをいち早くキャッチして、それに合った経営を柔軟にしていかなければいけません。売上を10年後に10倍にしたいのであれば、そのために何をなすべきかを考えて手を打つべきです。
今一生懸命掘っている穴では、永遠に水脈にたどり着けないかもしれません。でも、穴からちょっと首を出して周りを見渡せば、少し離れたところに池があるのを見つけるとしたらどうでしょう。今自分がしていることがすべてだと思わず、辺りを見渡す余裕をもっていただきたいのです。
そのためには、本を読む、セミナーに参加する、アドバイスをしてくれるメンターを探すなど、すべきことはたくさんあります。「学ぶことなくして成長なし」です。
ジョイントベンチャー
企業を一挙に成長させるやり方に「ジョイントベンチャー」という手法があります。他業界の会社と同等の立場で、お客様が喜ぶために仕事をしていく手法です。
ある書店が近くのケーキ屋さんとジョイントベンチャーをしました。「本を読みながらケーキを食べる」というライフスタイルの提案です。人は本を読む時、何かしら食べたり飲んだりしたくなります。それを積極的に仕掛けました。
ケーキ屋さんでは書店の景品交換チラシを、書店ではケーキ屋さんの割引チケットをお客様に差し上げました。若い女性が特に良い反応を示し、非常に喜んで受け入れてくれました。その後、町じゅうに、ケーキの箱と一緒に包装された雑誌や本を持つ人が増えたのは言うまでもありません。
“マーケティング”を学ぶ 〜電話を鳴らす行動をしているか〜
近年は、大手の会社でマーケティング部を持っているところが出てきましたが、まだまだその重要性を理解されていない会社が多いようです。それはマーケティングがどういったものか分かっていないため、営業や販売と同じように考えているからに他なりません。
マーケティングとは、「自社の商品やサービスを、お客様に購入してもらうための仕掛けづくり」であると言えます。マーケティングはお客様からの電話を鳴らすことであり、セールスはお客様と電話で話をすることであるといえます。電話が鳴らなければ売上を作ることができないことからすると、電話を鳴らすことがいかに重要か分かると思います。
学習塾においては、新聞などに広告やチラシを入れることで生徒募集をされています。でも「最近はチラシを入れても反応がない」と嘆いておられる塾経営者の話を聞きます。そういったところは、マーケティングをすることなく、単に宣伝活動がすべてとされているのです。20〜30年前はそれで生徒が集まりました。でも今はそうではありません。これからの経営者はマーケティングを学んで生徒募集に活かす方法を学ばなくてはいけません。
「何を」「誰に」「どうやって」
どのようなことでも、重要なことはシンプルなものです。マーケティングで重要なことは、「何を」「誰に」「どうやって」の3つです。
「何を」は、自社の商品やサービスが持っている「価値」を指します。小規模塾が受講料の割引や入学金無料など価格勝負をしてしまうと大変な困難が待ち受けています。なにしろ全体の生徒数が少ないため総月謝収入が少なく、固定費や講師給与は同じようにかかり、その結果自分の首を絞めてしまうことになります。独自のサービスや授業の企画などに価値を置くようにしなければなりません。
そこに魚はいるのか
「誰に」は、自社が「対象」とするお客様です。自社が軽トラックを扱っているなら、対象は事業者です。女性をデートに誘いたいと考えている若い男性は対象になりません。
これほど極端でなくても、対象顧客を決めていない会社が結構見受けられます。どこに自社の対象顧客がいるかを見つけ出すのもマーケティングの範疇です。一流の釣り人でも、魚のいない池に美味しそうな餌を付けた釣り糸を垂らしても釣果は期待できません。
塾だから対象顧客は小学生、中学生ではあまりにも安直です。能力レベルは?将来の希望は文系?理系?親の年収は?開業医の子息ばかりを集めた進学塾は既にあります。では、開業弁護士の子息を集めた塾は?ある程度の規模の企業経営者の子息向けの塾は?女性社長の“娘”向けの塾は?国会議員など政治家の子息向けの塾は?芸能人の子供向けの塾は?対象が違うと、次の「方法」も違ってきます。
「方法」は無限にある
「どうやって」は、販売していくための「方法」です。自塾の周辺の住民なのか、ネットやFAX授業で全国の生徒を対象とするかによって、宣伝方法も違ってきます。ただし自社のホームページを持つことは、規模に関わらず必須です。ホームページは24時間無償で働いてくれるセールスマンですから。ネット社会の今は「方法」は無限にあるといっても過言でありません。
掛け算で顧客数を増やす
この3つの要素は、掛け合わせることで獲得できる顧客数を算出することができます。
「価値」×「対象」×「方法」を仮に、2×2×2とすると獲得顧客数は8になります。しかし、自社の「価値」をもう一つ加え、それを気に入ってくれるであろう「対象」を今までとは別に設定し、ネットなど宣伝の「方法」を新たに増やすと、3×3×3で顧客獲得数は一挙に27になります。
ここでしたことは、「価値」(何を)を1つ見つけるだけ。「対象」(誰に)を1つ増やすだけ。「方法」(どうやって)を1つ増やすだけです。これだけで8が27になります。
これは数字の遊びではありません。自社に置き換えて考えてみてください。時代は常に流れています。今までと同じ商品、販売方法で果たしていいのかをアンテナを張って考え続ける、これが経営者の本来の仕事であると考えます。 |