1 頭をスッキリと整理するツール
昨年3月の東日本大震災以降、社会不安と共に経済の低迷が続いています。大企業は、海外に生産の拠点を移すことに邁進していましたが、タイの洪水でそれも足止めをくらいました。国内も海外もダメと、まさしくニッチもサッチもいかないという考え方に陥っています。
こういった時代だからこそ、将来をしっかりと見すえた展望を掲げ、計画的に事業展開をしていかないといけません。そのためには、複雑な方法を考えるのではなく、単純でなおかつ実践しやすい手法をとることが必要です。
昨年度はランチェスター経営戦略の弱者の戦略を、今年度は強者の戦略をお話してきました。今回お話しするのは、どちらの戦略においても要となる企業成長のための考え方です。
頭の中をスッキリと整理して、今後どういったことを考えていけばいいのかというツールと思考方法をお伝えします。
2 GROWモデル解説
下の図をご覧ください。これは、混迷する時代の中にあっても、希望さえ失わなければやっていけそうだと思える企業発展モデルを示しています。GROWは成長という意味。まさしく企業の成長を表した図です。Goal(目標)、Reality(現状把握)、Options(選択肢)、Resource(資源)、Will(意志)の頭文字をとって「GROWモデル」。以下手順の解説を行います。
- 解決すべき問題点の目標を設定します(Goal)
- 現状はどうなのかを把握します(Reality)
- 目標と現状には大きなギャップがあることを再認識します
- そのギャップを解消するためには、いくつかの課題があります
- 問題解決のためには、選択肢がいくつか考えられます(Options)
- 選択肢を実行するための自社の持つ資源を考えます(Resource)
- これと決めた選択肢を強い意志をもってビジョンに向かって進めていきます(Will)
3 進むべき道を見すえる
GROWモデルは、単にこのようになればいいなという机上の空論ではありません。現場から上がってきた実践的な考え方です。常に頭の中にこの図を描いてください。今、自分はどの場所に位置しているのか、次にどこに行くのか、そこで何を考え選択することが求められているのかを意識してください。
日本の企業が混迷しているのは、現在の自社の位置づけが明確でないことも一因です。自ら進んできた道程が分かり、次にすべきことが明瞭であれば、昔のバブル経済の時のようにはなりません。闘うべき相手は、同業者でも新規参入者でもありません。自らの迷える心です。しっかりと見すえていきましょう。
この図は、塾経営だけでなく、生徒の学習目標の設定などにも活用できます。学習指導に利用していただきたいと思います。
4 企業を成長させる掛け算
塾経営者とお話をしていると、売上のことよりも、生徒の学力や生活指導、進路のことで頭がいっぱいという感じを受けます。こちらとしては大変頭が下がる思いをします。しかし、企業である以上、しっかりと売上を上げて利益を出していくことは、必要不可欠のことです。
企業が成長をしていくために必要なことは、それほど数多くはありません。それは、「お客様の数を増やす」「お客様あたりの平均販売額を増やす」「お客様が購入する頻度を増やす」という3つです。企業の売上はこれらの掛け算で成り立っています。
5 10%の増加が33%の増加に
例えば、顧客数1,000×平均販売額100×購買頻度2とすると、売上額は200,000となります。このそれぞれを10%増加させると、1,100×110×2.2=266,200となります。それぞれを10%増加させただけで、合計額は33%も増加することになります。
確かに今の時代顧客数を10%増加させることは容易ではありません。しかし、いきなり売上を3割上げようとするよりはよほどやりやすく、方法も考えつくと思います。3つの分野で、それぞれ最低でも3つ、できれば5つの方法をいつも頭に描いておき、実行に移していくようにしたいものです。
6 「お客様の数を増やす」方法
新しいお客様を増やすには、新聞やテレビなどのメディアを使った広告、チラシ、看板などの方法が頭に浮かびます。しかしどれもコストがかかり、十分にはできないのが現状です。そこで活用したいのが、口コミ、紹介システム、コラボレーション、バーターという比較的コストがかからない、または一切かからず、お互いがwin−winの関係になるやり方があります。
私は以前ミニコミ誌の広告枠を無料で入れていただいたことがあります。私がやっているパソコン教室の広告を掲載してもらったのですが、その際、ミニコミ誌を発行している会社のマーケティング指導を無料でやったのです。マーケティング指導と広告枠のバーターです。そこには一切お金は発生していません。しかし双方にとってwin−winの関係を築くことができました。
7 「お客様あたりの平均販売額を増やす」方法
セット販売というものがあります。塾では通常の授業以外に、英会話コースや英検受験コース、理科実験コース、脳トレコースなどをセットにして申し込むと少し安くなる、または学力の差がつきますというもの。これには、生徒や保護者の顕在的および潜在的ニーズを常に推し量っていることが必要です。
また同じ個別指導でも、2人〜3人の少人数でのクラスから、少し受講料があがるが完全マンツーマンのコースを勧めるというものがそれにあたります。
8 「お客様が購入する頻度を増やす」
これは塾においては購入頻度というより、来塾頻度といえるかもしれません。小売店でも来店頻度が多いと、それにつれて全体の購買金額があがります。受講クラスがあるなしにかかわらず、生徒が来塾するということは、塾に対して愛着があるということであり、学ぶことがたくさんあると感じているともいえます。
教師も生徒と接触する機会をたくさん持つことは、人間関係を良好に保つという意味からも必要なことです。心理学用語に、単純接触効果というものがあります。生徒との良好な人間関係が成績にも影響する塾においては、最も重視すべきことかもしれません。
生徒数を増やして売上を上げることだけが塾の目的ではないのは当然です。しかし、適正な売上が無ければ本来の目的を達成できなくなるのも事実です。自社のさまざまな経営資源の現状を把握し、最良の選択肢を選び、設定したゴールに向かって邁進されることを期待しております。
今回で「価値組」学習塾になるNo.1戦略を終了します。
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