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2012/3 塾ジャーナルより一部抜粋

チラシはムダ?
そうは思えない折り込みチラシ

  PS・コンサルティング・システム 代表 小林 弘典  
     
 学習塾が利用できる広告媒体にはどんなものがあるのでしょう。新聞折り込み、学校前での校門配布、ポスティング、新聞・ミニコミ誌・雑誌広告、野立て看板、駅看板、電柱看板、ステ看、教場前のノボリ、ポスター、書店やスーパーでの置き広告、DM、電車・バス広告、TV・ラジオCM、さらには最近流行のネット広告とHP。数え始めればいくらでもありますが、塾は原則、教場から半径2キロ以内の狭いエリアが商圏。なかでも、とりわけ新聞折り込みが重要なのは言うまでもないでしょう。その折り込みの広告効果が近年、急速に薄れていっていると言われています。折り込み料まで加えても、せいぜい1枚5円の「たかがチラシ」。しかし、塾にとっては文字通り「されどチラシ」。宣伝広告の主戦力であることは間違いありません。どうすれば少しでも広告効果が上がる折り込みチラシを作ることができるのか。以下、塾の死生にもつながりかねないこの課題を、ご一緒に考えていくことにしましょう。

折り込みチラシは効かなくなった

 初めから身も蓋もないことを申し上げてしまいますと、折り込みの広告効果が薄れてきているのは否定できない事実だろうと思われます。30年以上塾に関係してきた方なら覚えているでしょうが、いわゆる「バブル」が崩壊した直後の1990年代前半あたりまで、折り込みを入れさえすれば、客が集まるという時代がありました。わたし自身、目の前で、たかだか数万枚のチラシ1回で、夏期講習の申し込み者が、ある塾の校舎を2周囲んで待っていたのを見ています。

 それが、現在のように「効かなくなった」のには、おそらく4つの原因があります。1つは少子化が進んで、世帯当たりの人員が減ったこと。例えば1990年当時、1世帯当たりの平均人員は2.99人でした。20年後の2010年は2.46人です。これは、子どものいる世帯が少なくなったことを意味しています。90年であれば、1世帯に1部新聞が届けば、すなわち折り込みが1枚入れば、そこには塾の顧客対象となる子どもが1人いて、その子とその子の両親の目に留まる機会があったのに対し、10年時点では2世帯で、つまり新聞2部、折り込み2枚で子ども1人ということになってしまった。広告効果が半減するのは当然でしょう。

 蛇足ですが、90年には全国に2,037万人の小・中・高校生がいました。10年時点では1,394万人ですから、643万人も少なくなっています。兵庫県の人口は560万人、千葉県の人口は618万人、愛知県の人口は714万人。どれだけひどいことになっているのか、おわかりいただけるでしょう。

 2つ目は一般家庭の経済状態です。今や夢のような話ですが、バブル崩壊前の1990年1月31日の日経平均株価の終値は3万7,188円でした。つい最近、2012年1月31日の終値は8,802円。かつて「教育は聖域」といわれた時代がありました。しかし、それも今は昔の話。景気の動向は直接塾にも跳ね返ってきますから、「打てど響かず」状態になってしまっていることも否めません。

 3つ目は競合の増加です。1991年の塾の事業所数は4万5,856ヵ所。それが2009年には5万1,726ヵ所に増えています。お客様から見れば、選択肢が増えているわけです。13%、5,870ヵ所の増加ですから、たいしたことないようにも思えますが、1事業所当たりの従業者数も91年5・73人から09年6・43人にまで増えて、事業所自体も大きくなっています(経産省「事業所・企業調査」「経済センサス」)。やはり、かなりな程度、影響しているとみて、差し支えないでしょう。

ならば、折り込みはムダか?

 4つ目は新聞そのものの購読者数が減ったことです。手許にあまり古いデータがありませんので2000年と2011年の一般紙の発行部数を比べてみましょう。前者は4,740万部、後者は4,409万部。331万部減っています。近頃よく、新聞を取っていない家庭が多くなったと耳にしますが、世帯当たりにして前者は1・0部、後者は0・82部ですから、10年で2割近くの家庭が、新聞を定期購読しなくなったことになります(日本新聞協会)。

 しかも困ったことには、取っても読まなくなったヒトが年を追って多くなっています。NHK放送文化研究所の調べによれば、1995年時点で30代男性の55%が新聞を読んでいました。それが2010年には23%に減っています。40代男性の場合は前者67%、後者41%、30代女性の場合は前者50%、後者24%、40代女性の場合は前者64%、後者40%。保護者世代で読んでいるヒトが極端に減っています。読まないということは、折り込みにも目を通さないということとかなり近接していますから、折り込みの広告効果が薄くなるのも当たり前といってよいでしょう。

 ところで、このように「効かなくなった」事実を目の当たりにして、塾関係者の中には、これだけ費用対効果が薄くなったのだから、折り込みなどやめてしまったほうがよいのではという声も出始めているようですし、現にまた、やめてしまった塾も少なくないようです。

 しかし、それが適切な判断かというと、わたしにはそうは思えません。先に申し上げましたように、一般的な塾の商圏はせいぜい半径2キロ、徒歩でも自転車でも15分の圏内です。その狭い商圏にピタリと合った有力な広告媒体が他に見つかるのなら別ですが、そうでない限り、折り込みは欠かせません。あれほどの大手であるヤマダ電機やユニクロが折り込みにこだわる理由はこの1点です。もちろん、「一般的」でない「専門塾や特化塾」の場合は例外でしょう。比較的商圏の広い専門塾や特化塾には、それにふさわしい媒体があるはずです。が、そうした特殊な塾を除いた、塾の90数%を占める一般的な塾の場合、折り込みはまだまだ宣伝広告のメインツールです。ならば、どうすれば、その薄れてしまったメインツールの広告効果を高めることができるのか、とにもかくにも知恵を絞って、その方法を考え出すより仕方ありません。

重要な「広義」の折り込み広告活動

 ちょっと理屈っぽい話になりますが、広告効果が上がるとは一体、どういうことをいうのでしょう。それが、折り込んだ枚数に対する入塾者の割合が高まるということを意味するのであれば、まずは折り込みから入塾までをいくつかの段階に分けて、一つひとつ検討していかなければなりません。

 保護者あるいは子どもの側から見た場合、入塾までの一般的な順路はこんな具合でしょうか。

 この各々の段階で保護者と子どもを納得させる、あるいは少なくとも彼らにマイナスイメージを抱かせないことによって、初めて入塾者の割合が高まっていくのはハッキリしています。そこでここではとりあえず、この「評価の認知」から「入塾」までの全過程に対応する塾側の活動を「広義の折り込み広告活動」と名付け、そこでの広告効果を「広義の折り込み効果」と呼ぶことにしましょう。それに対して「折り込みチラシの閲覧」から「問い合わせ電話」まで、すなわち折り込みに目を留めさせ、そのうえで何らかのアクションを起こさせるまでを「狭義の折り込み広告活動」と名付け、そこでの広告効果を「狭義の折り込み広告効果」と呼ぶことにします。

 率直に申し上げておきますと、わたしは両者のうち、「広義の広告活動」のほうをはるかに重視しています。日頃の評価が低ければ、折り込みチラシが何枚入ってもすぐに古紙回収袋ですし、問い合わせ電話への応答が無愛想、不親切だったら、面談のアポまでたどりつけません。また面談や体験入塾の際に、子どもや保護者の気に入らないことが1つでもあったらハイそれまで。ジ・エンドです。

 余談になりますが、数年前、知り合いの塾に近隣の中学校で生徒会長をしている女子生徒が体験入塾にやってきたことがありました。生徒会長ですから、成績面でもまあ、中の上くらいはいっているでしょう。そう思い込んだ塾長が、第1日目の数学の授業の折、指名して簡単な問題の解答を求めました。ところが、あにはからんやこれがダメ。女子生徒は赤くなって立っているだけで答えが出ません。しまったと思ったものの後の祭り。彼女にしてみればおそらく、初対面のクラスメイトの前で恥をかかされたイヤな出来事だったのでしょう、それっきり来なくなってしまったそうです。

 以来その塾では、体験入塾期間中は生徒からの意思表示がない限り、一切指名せずをルールにしていますが、実は「広義の折り込み広告活動」にはこうしたところまで含まれていますので、「折り込み効果」を上げるためには、こんな点にまで細心の注意を払わなければなりません。

チラシ何枚で入塾すれば標準か

 街の書店に行くと「客が集まるチラシの作り方」などという書籍が並んでいます。また、ネット内でも「秘密のチラシ作成術」というような広告を見かけます。しかし、ここまでくれば、どうすれば折り込みチラシの広告効果を高めることができるのか、どうすればアタル折り込みを作ることができるのかという問題は、そうそう簡単には片付かない大きな問題であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。とはいえ、こうしたことを一つひとつ再検討していたら、とてもじゃありませんが、紙数が全然足りません。そこでここでは、以上のことを十分踏まえたうえで、「狭義の折り込み広告活動」「狭義の折り込み広告効果」に焦点を絞り、そのうえでいくつか、皆さんのご注意を促しておくことにします。

 繰り返しになりますが、「狭義の広告活動」とは、「チラシの閲覧」から「問い合わせ電話」まで、すなわち折り込みチラシに保護者と子どもの目を留めさせ、そのうえで何らかのアクションを起こさせるまでを言います。また、「狭義の折り込み広告効果」とは、折り込んだ枚数に対する問い合わせ数の割合を指します。

 ところで、皆さんはどの程度の割合で問い合わせが来たら、それなりの広告効果があったと判断するのでしょう。

 「塾生1人当たりの入塾経費」を計算したことがおありでしょうか。広範囲にわたって正確なデータを入手するのが難しいため、確定的なことを申し上げられないのが残念ですが、わたしはこれを年間客単価の5分の1程度と見積もっています。すなわち、年間客単価が30万円の塾の場合は6万円、40万円の塾の場合は8万円で1人が入塾してくるとみています。

 これを折り込みに限って言えば、例えば、入塾経費が6万円の塾があったとします。通常、入塾経費のうち「折り込み」に要する経費割合は70%程度ですから、4万2,000円分の折り込みで1人入塾してくれば標準、それ以上ならその折り込みは成功、それ以下なら失敗と考えてよいわけです。折り込みは普通、折り込み料まで含めてB4判1枚が5円程度でしょうから、8,400枚で1人が標準ということになります。

 では、「折り込み」→「問い合わせ」の場合はどうでしょう。先の「順路」にあるとおり、「問い合わせ」から「入塾」までの間には、「問い合わせ電話での応答」「面談での印象」「体験での印象」などの関門があります。これをクリアする確率は、平均60%といったところではないでしょうか。つまり、問い合わせの電話を掛けてくれたヒトが10人いて、入塾まで行くのは6人。入塾経費が6万円の塾の場合は、4万2,000円×6の25万2,000円分の折り込みで、10人が問い合わせ電話をしてくれ、そのうち6人が入塾ということになりますから、電話1本は2万5,200円分の折り込み、すなわちチラシ5,040枚が標準とみてよろしいかと思います。

 ただし、これはあくまでも春秋の正規入塾に限ったうえでの平均です。単価が安くなる夏期冬期の講習はまた別モノですし、競合塾の多い地域や少ない地域の場合は大きく違ってくるのももちろんです。そのことを考慮のうえ、一度、ご自分の塾の標準値を計算してみてくださるようお勧めしておきたいと思います。

アタル折り込みの3要素

 話が横道にそれてしまいました。本論に戻しましょう。問題は、保護者と子どもが目を留め、なおかつ何らかのアクションを起こしたくなるような折り込みを作るにはどうしたらよいか、でした。

 結論を言ってしまいましょう。

(1)折り込む時期を間違えない
(2)物理的に目立つ
(3)お客様にとって魅力ある内容を前面に

 大切なのはこの3つです。

 時期に関しては春の募集を例にとりましょう。数年前まで、春の募集のメインの折り込み時期は2月の下旬から3月中旬にかけてでした。それが今は1ヵ月ほど繰り上がってきています。というより、期間が1ヵ月伸びて1月下旬に始まるようになったというほうが正確かもしれません。1月中旬のセンター入試を受ける高3生の割合が高まったこと、私立高校の推薦の発表が早まったこと、中学校の学年末試験の時期が早まったことなどが大きな理由と思われます。「兵は拙速を聞く」は孫子の兵法の極意の1つですが、早めに準備することは戦いに勝つ第一条件です。できるだけ、周囲の競合塾が折り込んでくる前に折り込む。この1点はぜひとも忘れないようにしていただきたいと思います。仮に失敗しても早めならば取り返しがつきますが、後での失敗は命取りになります。

 「物理的に目立つ」には、2通りの意味があります。1つは可能な限り、回数多く折り込みを入れて、とにもかくにも1度でも保護者・子どもの目に留まるようにすること。新聞購読者のすべてが毎日、折り込みに目を通してくれるわけではありません。ならば時期をずらし、曜日を換えて何回か折り込み、目に留まる機会を作っておく必要があります。

 もう1つは、文字通り「目立つチラシ」を作ること。塾関係者の中には「きれいで上品なチラシ」を好まれる方が少なからずいるようです。瀟洒(しょうしゃ)な塾舎、豪華な設備をウリモノにする塾ならばそれも方法ですが、一般的に言えば、折り込みは「きれい」よりも「目立つ」を優先すべきでしょう。1週間で構いませんから、自宅に折り込まれてくるチラシすべてに目を通し、大きさや色使いや紙質も含めて、目に入った「目立つチラシ」だけを何枚かピックアップして、それらに似せて自塾のチラシを作ってみたらどうでしょう。目立つチラシができるはずです。

 「魅力ある内容」で考えなければならないのは、「誰にとって魅力ある内容」なのかという点です。商圏内に小1生から高3生まで各学年150人、計1,800人の小・中・高校生がいるとします。彼らの中にはカレーが好きな子もいれば、ハンバーグが好きな子、うどんが好きな子、そばが好きな子、ラーメンが好きな子、お鮨が好きな子、いろいろな子がいます。それと同じように悩みごとやニーズは一定ではありません。料金、教科、成績、在学校、志望校、指導時間、通塾回数、指導方法、何でも構いません。競合塾と比べて、自塾が秀でていると思われるところ、特徴的だと思われるところを1つだけ前面に押し立てて、そこを魅力的と捉えてくれる顧客だけに呼びかけることが一番の早道です。


 以上、どうすれば少しでも広告効果が上がる折り込みを作ることができるのか、とりわけどうすれば保護者と子どもが目を留め、なおかつ何らかのアクションを起こしたくなるような折り込みを作ることができるのか、について長々とお話してきました。

 ことの性質上、抽象的に過ぎたキライはありますが、要点だけはおわかりいただけたと思います。具体的な部分に関しては、この後、全国31塾のご協力を得て、昨年の夏期講習用(冬期講習も含む)のものを中心に31枚の折り込みチラシを掲載しておきましたので、じっくりご覧いただければと思います。

小林弘典氏 プロフィール
PS・コンサルティング・システムの代表を務める学習塾経営コンサルタント。
学習塾の個別コンサルティングを主業務とするかたわら、講演・執筆活動の他、塾経営者の勉強会「千樹会」「伍泉会」なども主宰している。
塾ジャーナルでは「塾長のためのマンスリースケジュ−ル」を連載中。

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