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中学・高校受験:学びネット

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2011/9塾ジャーナルより一部抜粋

緊急インタビュー・株式会社 四谷大塚
私立の二極化がさらに加速 本物の学校しか生き残れない

     

株式会社 四谷大塚 情報本部 本部長代行 岩崎 隆義氏に聞く

 全入の時代を迎え、新時代に入ったと言われている「中学入試」。次年度はどのような動きを見せるのか、今から注目が高まっている。今回、中学受験のスペシャリストとして活躍する岩崎隆義氏に、次年度の中学入試の方向性をはじめ、四谷大塚として、今後どのような方向に進んでいきたいのか、大いに語ってもらった。

選ばなければ私立に行ける
でも2.18倍なのは?

── 2011年度の中学入試を振り返って、感想を聞かせてください。

岩崎 首都圏(一都三県)318校(公立中高一貫除く)では、定員は4万4,247名でした。実受験者は約5万4,000人。この数字だけ見ると、1万人が不合格になり、あぶれたように見えますが、この数字には意味がないと私は思っています。
 なぜなら、定員割れをしている学校がいくつもあり、学校を選ばない限り、私立には入学できるからです。にもかかわらず、首都圏全体の実質倍率は2.18倍もある。つまり、私立は二極化していると言うことができるのです。一部の学校の受験者が増え、実質倍率が2倍を超えているだけです。こういう時代だからこそ本物の学校しか受験しない。今後は二極化がさらに進むと思います。

── 人気の私学とそうでない私学の差がはっきりと出てくるということですか。

岩崎 そうです。今年の7月時点の志望校選びの段階で、その傾向はさらに強まっていると感じています。このご時世ですから、私立に通うのに年間で約100万円かかるとしたら、200万、300万円の価値があると思わなければ、ご父母は通わせようとはしないでしょう。脱ゆとり教育による学習指導要領の改訂から公立に対する期待感もありますから、価値がないと思えば通わせないのではないでしょうか。例えば、特待入試で合格し、学費免除でもその学校に手続きされない方がいるのは、こうした意識が広がっているからです。

── 二極化の要因は何でしょう。

岩崎 今の日本を表現するとしたら、皆さんはどう表現しますか? 少子高齢化、財政破綻、東日本大震災、原発問題…。これだけ問題が山積みされているのに、解決は先送りされ、政権交代をしたものの全然よくならない。日本はますます先行き不透明になっています。今の小学6年生が社会人になる10年後、日本はどうなっているのか。いま以上に混迷していると予想されます。さらにグローバル化が進み、全世界を相手に商機を探る時代がやってきます。つまり、今より自分の頭で考え、行動することが求められる時代になるのです。子どもたちは私たちが生きてきた時代より、2倍、3倍の付加価値を持たないと通用しなくなるでしょう。そうした将来を考えたとき、私たちは子どもたちに何を残せるか。ご父母の方もそれを考えて、学校選びをしているのだと思います。

人間力がなければ
トップ校に行けない

── 子どもたちに残したいものとは、どんなものでしょうか。

岩崎 私たちはそれを「心 知 体」と呼んでいます。この心と知と体の3つがそろった人間を「人間力が高い」と評価しています。「人間力」とは、不確かな時代でも自立して生きていける力、と言い変えてもいいと思います。
 私たち四谷大塚の最終目標は「社会に貢献できる人財の育成」です。子どもにどんな人間になってほしいか、親の願いは2つです。一つは社会的、精神的、経済的に自立した人間になること。もうひとつは多くの人を幸せにし、尊敬される人間になること。それこそ、「心 知 体」を兼ね備えた人間力に優れた人間だと考えています。
 中学受験はややもすると、家と塾との往復で、参考書丸暗記の世界に入り、対人関係など面倒なことをすべてシャットアウトすることによっても突破できてしまいます。でも、小学生の時にしかできないことは他にもたくさんあるのです。親が勉強だけしていれば良しという価値観のもと、そういった環境を与えてしまえば、実は子どもの能力をスポイルし、弱くしているということにならないでしょうか。この人間力をあげないと真の学力は習得できないのです。

── 「心 知 体」の鍛え方とは?

岩崎 まずは心が基本です。「心」が素直なら、「行動」も正しくなる。「行動」が正しいから、「夢」も実現する。
 例えば、自分の次に大切な存在は何でしょうか。家族ですよね。その家族を、自分を愛するのと同じように思えるようになること。その次に友達、学校、地域…世界がドンドン広がって、自分が貢献したい対象が広がっていく。何か夢をかなえたいと思ったとき、自分一人では実現できません。周囲の応援があってこそ、初めて夢がかなうわけです。そうしたことに気付いてほしい。自分だけが大事な人間は、リーダーになれないのです。
 「Noblesse Oblige(ノーブレス オブリージュ)」の精神は、各界のトップリーダーの言葉に共通する真理ですから。

※身分の高い者は、それに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観

── 知の部分、勉強方法としてはどのように指導していますか。

岩崎 第一志望の学校に合格するためには、努力しなければいけません。でも、努力を続けるのは大人だって大変。続けるにはモチベーションが必要です。四谷大塚では、脳医学者で、著作「勝負脳の鍛え方」で有名な林成之先生を顧問に招き、アドバイスをもらっています。林先生は北京オリンピックの時に日本の水泳チームに講義を行い、選手のモチベーションを大いに上げ、メダル獲得に貢献した方です。
 林先生によれば、人間は見聞きした情報に「感情のレッテル」を貼ります。興味のある情報にはプラスのレッテルが貼られ、その情報は長期記憶に入ります。反対にマイナスのレッテルが貼られた情報は短期記憶になり、消滅してしまいます。
 いやいや10時間勉強しても、好きでやっている子どもの1時間に負けてしまいますから、この脳のメカニズムをどう使うかがカギです。つまり好きか嫌いかで、その成果は10倍もの差が出ると言われているのです。実は小学生の得点力・偏差値は、自ら求め、自ら考え、自ら行動(=学習)しているかが大きい。だから、いかに子ども自身にエンジンをかけさせるか、に重点を置いています。
 それともうひとつ、学習習慣の定着も重要です。子どもの頃嫌いだったハミガキも、大人になった今では、しないと気持ちが悪いですよね。だから、毎日朝食前に、必ず音読するとか、一行問題や計算問題をするとか習慣化することも、知の部分を伸ばすのに大切な要素です。

── 人間力の向上を、塾だけで指導するのは大変かと思いますが…。

岩崎 父母会では常にこうした話をし、ご家庭でも実践していただくようにお願いしています。

── こうした指導を続けて、学力がボトムアップしてきた感触はありますか。

岩崎 これは言うのは簡単なのですが、行うのは難しいですね。だからといって、止めることはできません。日本をよくするためには、私たちが立ち上がらなくては。これは塾だけではなく、私学の魂でもあると思います。
 また、こんな時代だからこそ、私たちや私立学校はこうした訴求をしないと生徒を集めることはできないとも思っています。合格実績はもちろん大切ですが、生徒の長い人生を考えたうえでの指導も重要なのではないでしょうか。その結果、四谷大塚や私立学校を選択していただいていると考えています。
だからトップ校であれば、人間力を計れるような入試問題を出題してほしい。そのくらい強く私たちは提唱しています。

── 学校の先生方にそういう話をされると驚かれるのでは?

岩崎 塾がこんなこと言うなんて、びっくりされることもありますよ。でも、共感してくださる校長先生も多いですね。

親を矮小化させる
話はしない

── 受験校を選ぶ時にも、この人間力はキーワードになりますね。

岩崎 そうですね。ご父母には、大学の進学実績や偏差値だけを見て学校を選ばず、入学後、子どもがどんな6年間を過ごせるのか、考えてくださいと話しています。どの子も努力し、勉強をやり切って受験に臨みます。でも、全員が第一志望に合格するわけではありません。たとえ不合格になったとしても、進学した学校で、どう6年間頑張るかが大事だと思います。トップ校に入ることが、人生の幸せを保証してくれるわけではありませんから。

── その子どもに合った学校、成長できる学校はどのように選んだらいいのでしょう。

岩崎 私はお嬢さんのいるお父さんに「制服のスカートの丈はどのくらいまで許せますか?」と聞くことがあります。お父さんによって許容できる丈の長さはバラバラです。同じように「自由な校風」と言ったとき、その自由な校風を行き過ぎと見るか、素晴らしいと感じるかは人それぞれです。ですから、私は学校の説明を聞くだけでなく、実際に学校を見に行ってほしいとお話しています。特に夕方の下校時に行くと、一番リラックスした生徒の姿を見ることができますよ。
 そして、その学校の生徒と我が子をだぶらせることができるかどうか。直感的に「いいな」と思える学校は、そのご家庭にとっていい学校です。この第六感が実は大事です。
 以前の父母会では、ある学校の志願者が減ったとか、倍率がどうだとか、という話をしていました。しかし今は、中学入試の合格は中間目標であり、最終目標は「社会に貢献する人財になる」ことが最重要だと考えています。最終目標をしっかりと意識し、リードしていくことが生徒の成長につながります。そこで父母会においても矮小化させるような話をしないように心がけています。
中学受験に失敗すると、子ども以上に親がショックを引きずってしまうことが多々あります。しかし、そうした挫折も含めての人生です。万が一のこのとき、親がどうリードするか、考えてほしいのです。
 あるお母さんは2月3日の合格発表の時、校門でじっと子どもが出てくるのを待っていました。これまでは、テストの点数が悪いと叱るほどのスパルタなお母さんだったのですが、泣きながら戻ってきた我が子を見て、泣き止むのをじっと待ってからこう言ったのです。「あなたがこれまでどれだけ努力してきたか、私は知っているよ。その努力がわからないこんな学校はこっちから願い下げ。さあ、顔を上げて胸を張りなさい」と。
 このエピソードは卒塾生が話してくれたものです。彼はこの後、第2志望の学校に入学し、第一志望校の大学に合格を果たしました。あの時、この母親からの言葉があったから、中学・高校生のとき頑張れたそうです。子どもは親がその時、何をしたかを覚えているのです。合格でも不合格でも、その時、親としてどう立ち振る舞うか、私はそうした話をします。そうしたエピソードのほうが、ずっと役に立つと思います。


 インタビューの中に出てきた「本物の学校」とはどういう学校なのだろうか。多くの受験者を集めていることは大前提だが、複数回入試ではなく、1回の試験で集めている学校に注目したい。四谷大塚の「中学入試結果分析資料集」では、出願状況ランキング表で、試験回数1回の学校を目立つように表記している(ちなみに試験1回校は、首都圏で開成、慶應中等部、青山学院、浅野、麻布等)。

 首都圏で実施される入試回数は、複数回入試を入れると1,200回以上にも上る(学校数318校)。単純に割っても、1校当たり約4回試験を実施している計算に。どの学校も1回入試で生徒を集められることがベストだが、生徒数確保のためには複数回入試はやむを得ない実情がある。しかし、複数回行うことは、その時期、在校生への指導が疎かになる可能性もあり、本来、在校生に注ぐべき力が、入試によって削がれることにもなりかねない。入学者確保は大切だが、それぞれ学校としての矜持をどこに持っているのかも、学校選びのときに考慮してもいいかもしれない。

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