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2011/7 塾ジャーナルより一部抜粋

セミナーレポート 蛍友セミナーに学べ!
教員、探偵、運転代行、バーテン、廃品回収、
そして、ホストも経験した破天荒塾長

 

蛍友セミナー(静岡県静岡市)
塾長 島田 成康さん

大学卒業後、開塾。
塾長以外に探偵、運転代行業など、いくつもの顔を持つが、それは「塾長は経営するもんじゃない、子どもに寄り添っていればいい」。副業収入を確保するくらいの気持ちで、子どもと納得のいくかかわり方を持ちたいから。
これからも人とかかわる仕事を続けていきたい。

 
     
 静岡県内に2教室を展開する蛍友セミナーの塾長、島田成康さんは塾経営を「朝の歯磨きみたいなもの」という。生活の一部だが、しなくても命に別条はない。つまり、生活が立ち行かなくなるわけではない。塾長以外に探偵、運転代行業など、いくつもの顔を持つ。「絶対に行かせたくない派」と「本当にありがたい派」とに地元意見を二分する塾。セミナーレポート史上初、型破り塾長が語るあるべき塾の姿とは。

「蛙の子は蛙」と保護者に

 島田成康さんが蛍友セミナーの2教室目を静岡市葵区東千代田に開塾したのは3年前。その7年前から焼津市内に1教室を持っていた。2教室合わせて、多い時で100人、現在は60人ほどの生徒が通っている。小1〜中3が対象だが、卒業した高校生や他塾に通う子どもたちも自習室に集まってくる、風変わりな塾だ。

 塾生の人気は高い。ある種のカリスマ性をもって受け入れられていると思わせるところがある。初対面の子どもの様子を観察し、性格やその日の心理状態を当ててみるのは、まず自分に子どもの関心を向けさせるためという。「今日、親と喧嘩したでしょう」「なんでわかるの」となれば、子どもは心を開く。いったん引きつけた自分への関心は、モチベーションをあげる言葉の効果を倍増させる。

 難しい問題をわかりやすく教えるより、子どものやる気を起こさせるほうが得意な島田さん。幼いうちから成績ばかり気にして、子どものやる気を削ぐ保護者には手厳しい。「小学生の親が漢字テストで10問中、2問しか正解してないと、不正解だった8問にばかり目が向きがちです。2問正解したことを褒めるということを忘れている」と。

 そして、そこで言葉を切らず、「蛙の子は蛙です」と保護者に留めを刺すところは、信念が強すぎるのか、感情的なのか。ただ、子どもの側に立っている印象は強烈である。

 授業は一斉授業の形をとるが、弱点を抱える生徒には徹底的に指導する。1対1の指導は当たり前。塾で解決できなければ、生徒の家まで行って指導する熱血漢である。授業料も母子家庭には割引制度をつくり、児童施設から通う生徒に対しては、公的補助の範囲内と決めている。

 以前は、地元トップ校へ進学していく生徒層が大半を占めていたが、現在は、勉強の仕方がわからない、するきっかけをつかめない生徒のほうが増えている。トップ校ねらいの生徒を「そういう子は嫌い」とストレートに口にする無手勝流。その裏には、「高校、大学時代は赤点三昧だった」という島田さんの、学力をつけたいのにどうしていいかわからない、もがく子どもへの強い同情が見えるようだ。

●指導のポイント
@子どもの関心を最初に引き、気持ちをつかんで、その後の言葉かけ効果を倍増させる。
Aできない部分ではなく、できる部分に目を注ぐ。また、その方針を保護者に理解を求める。

偏らない交わり
節介役買って出る

 開塾に至るまでの道程は複雑だ。大学は教育学部を卒業し、県内の私立高校に数学の教員として職を得るが、半年で退職。その後、不登校生を専門に受け入れる高校に就職するが、今度は3ヵ月で退職へ。

 最初の高校でのこと。他の教員の授業で態度が悪いと評判の生徒が、島田さんの授業は真面目に受け、成績も良かった。島田さんが9〜10の評定をその生徒につけると、同僚教員から「なぜ、あの生徒が9なのか」とクレームがついた。だが、島田さんには自分の授業と生徒の成績以外、評定の根拠はなかった。

 続く高校では、島田さんに好意を抱いた女子生徒が、「あること、ないことを吹聴した」。同僚の信頼は固かったが、トップの過剰ともいえる危機意識が二度目の職を島田さんから奪ったという。

 その後は、肉体労働からバーテンダー、ホスト、廃品回収業、運転代行、探偵とさまざまな職業に就き、前後左右幅広い人々とかかわって生きてきた。現在も複数の職業に就きながら、「これからも偏らない層の人間とつき合っていきたい。人間、経験してきたことと、置かれた環境で、精一杯やるしかないじゃないですか」。妙に説得力ある一言を放った。

 経歴が関係するのかどうか、塾でも節介な役目を買ってでることが多い。学校で喧嘩があったと聞けば、両方の生徒を呼び出して事情を聴くし、学校を休みがちな生徒からも話を聴く。本来、学校が行うべき領域にどんどん踏み込んでいく。「だって、子どもは地域で育てるものでしょう」。いたって真っ当な面もみせる。

 授業では、特に決めた教材というものを持たない。その時々、必要と思われるプリントをつくり、一斉授業後に配る。宿題も出すが、忘れてきたり、わざとやって来なかったりすると、ペナルティーとして「土下座」を科す。土下座は、する人間の人格を一時的にせよ放棄させるため、教育の場にはふさわしくない。が、島田さんは生活指導という側面では、「今の子はそこまでやらないとわからない」と、きれいごとだけで済ますつもりはないようだ。島田さんにとって土下座は、最終的に子どもが自発的に宿題をするよう持っていくための方法でしかない。

 こうした指導が賛否を分かつのは当然で、地元では「絶対に行かせたくない」と「本当にありがたい」と評価は分かれる。だが、島田さんは「塾長は経営するもんじゃない、子どもに寄り添っていればいい」と、厳しい評価にも全く動じる風はない。

●経営のポイント
「経営」に縛られない。子どもと納得のいくかかわり方をもつため、副業収入を確保するくらいの気持ちで。

 

もうひとつの塾論

 「学歴のある塾の先生は、教えるのがうまいと思っている。でも、本当の塾はそういう(成績を上げることだけに専念する)ものじゃないんじゃないですか。僕はそんな塾を壊したいですね」。島田さんの、学習塾かくあるべき論は次第に過激さを増していく。

 今後、蛍友セミナーがどんな形に変化していくのか、確たるモデルはないし、青写真を描くのも島田流ではなさそうだ。ただ、「人とかかわる仕事を続けていきたい」ことははっきりしている。

 インタビューで最後の質問を終えると、急くように島田さんは競馬場へ出かけて行った。「これも仕事」という言葉を放って。この人にとって、生きることすべてが仕事につながっているのかもしれない。

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