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2011/7 塾ジャーナルより一部抜粋

難関校志望、弱まる傾向に
入りやすい学校に志望シフトか
「今春の受験生はどう動いたか 今後どうなるのか」
安田教育研究所 高校入試セミナー

  2011年4月22日(金)/於 中央大学駿河台記念館  
     
 4月22日(金)、東京都千代田区の中央大学駿河台記念館で「今春の受験生はどう動いたか 今後どうなるのか」と題し、首都圏の高校入試を振り返るセミナー(安田教育研究所主催)が開催された。参加したのは約120人。最新の入試分析資料を元に密度の濃い解説が行われた。

千葉・埼玉で私立希望者増
専門系では理数が人気

 最初に(株)エデュケーショナルネットワーク 開発部データ課課長の池田亨氏が神奈川、千葉、埼玉の高校入試の概況について解説した。

■神奈川県

 神奈川では、進路希望調査での公立全日制希望率が89%とほぼ横ばい〔図1参照〕。私立希望率は県内が2006年から、県外(主に東京)は2009年からジリジリ下がっている。今年の公立普通科前期選抜で志願者数が最も多かった学校は「市ヶ尾」、以下「新羽」「綾瀬西」「川崎北」と続く。旧横浜北部学区(田園都市線沿線)という極めて私学志向の高かった地域の公立高校への志願者増が目立つ。その地域の公立改革が評価され、周辺地域からの受験者も増えたためと思われる。

 倍率では前期・後期とも「横浜翠嵐」が1位。一方、昼間定時制「相模向陽館(AM)」の倍率も高く、人気が高い。さらに後期のコース制や専門・総合学科では「釜利谷」「田奈」のクリエイティブスクールが倍率1・2位だ。両校とも「学び直し」を看板に掲げており、「こうした学校の需要が高く、供給が追い付いていない状況」と池田氏は解説する。

 私立への進路希望者は全体ではほぼ横ばい〔図1'参照〕。オープン入試は今年日大藤沢が廃止し、志願者数縮小かと思われたが、日本大学(日吉)が新設した。同校は一般入試も2回実施し、各入試合計の志願者は昨年より853人増えた1,068人と、1,000人を突破した。

 上位校・難関校を志望する傾向は弱まってきているが、安全志向というより、公立上位校志向の拡大が影響していると考えられる。そうした中でも中大横浜山手は、着実に出願者数を増やしている。

■千葉県

 入試改革の年となった千葉県。昨年度までの「特色化選抜」は、学校によっては学力検査が行われず、選抜枠も募集定員の10〜50%だった。今年度から前期選抜として全校で5教科の学力検査が実施され、募集枠も30〜60%に増えた。募集枠の増加により、少し倍率が下がり、入りやすくなったといえる。また、進路希望調査では卒業予定者の前年対比減少数(1,856人)より、公立進学希望者の減少(2,422人)のほうが大きく〔図2参照〕、県内私立希望率は11.6%から13.7%にアップ、ここ10年で最高の値となった。これは国の分に県独自分を上乗せした千葉県の就学支援金制度が、比較的低所得層に手厚い仕組みのため、私学のアピールと相まって私学志向が高くなった結果と分析している。

 公立普通科の志願者数トップは前後期とも「幕張総合」。以下前期では「東葛飾」「千葉東」「千葉」と例年の人気校が続く。特徴的だったのは、専門系の前期では、倍率トップ3がいずれも「理数」(「船橋」「市立千葉」「柏」)で、理数人気の高さがうかがえた。

 私立で最も志願者数を増やしたのは「東京学館浦安」で、411人の増加。次が「専修大学松戸」の259人と続く。私立では今年の公立の入試改革に伴い、前期開始日が1月17日、後期が2月5日と遅くなった。特に後期は2月5日入試、6日合格発表の学校もあり、翌7日が公立前期の出願日のため、前期の出願がますます増加。後期は二次募集的な色合いが強くなった。

■埼玉県

 公立普通科前期の志願数は、例年通り「伊奈学園」「浦和」「所沢北」「浦和一女」など、人気校が上位にランクイン。総合・専門学科では、昨年まで外国語や国際ビジネス等が人気だったが、今年は理数の倍率がアップ。千葉と同じ動きだ。

 埼玉も千葉と同じように県内私立の人気が上昇〔図3参照〕。卒業生数が減っているにもかかわらず、志望調査では県内全日制私立希望率が、私立内部進学を除いた推計で、前年より1.9%上がった〔図3'参照〕。これも就学支援金の影響と思われる。

 今年、私立で最も志願者を増やしたのは「昌平」で、776人の増加。続いて、「大宮開成(466人)」、「小松原(450人)」、「浦和学院(445人)」と400人超の増加が目立った。また、全体の出願数は減ったものの、単願・専願の割合が、昨年の11.5%から13.6%に増加、私立希望者の増加が、難関校一般受験ではなく、単願等が主体だったのも今年の傾向。

 最後に池田氏は、「千葉や埼玉で私立志向が高くなったものの、希望者が増えたのは上位コースではなく、入りやすいレベルのコースが多かった。私立側は上位コース重視の方針を強めているが、実は生徒が私立に求めているものは違うのではないかと思われる結果だった」と締めくくった。

上位校敬遠の傾向
都立改革校の人気鮮明に

 次に(株)進学研究会 教育研究所所長の進士高男氏が、都立高校入試の動向について解説があった。

 今年、都立全日制を希望した生徒は70.3%。21年度から7割以上の生徒が、公立を志望する傾向は続いている。また都立でも、定時制・通信制志望が1.02%と昨年の0.93%から上昇。不合格者数は1,423人にものぼり、まだまだ供給が少ないことがうかがえると進士氏は語る。特別支援学校も1.27%から1.34%と増えており、今後も増え続けると予測される。

 都立で100人以上の不合格者を出した学校(志望者数の多い学科校)のトップは「新宿」で、280人〔表1参照〕。次いで「三田」「日比谷」「国分寺」「戸山」がランクイン。同時に25年度の学習指導要領の改訂を控え、抜本的な改革を進めている学校が支持されていることに進士氏は注目している。

 「文京」は国公立大学対応クラスを設定した。「武蔵丘」で専任教員全員が「マニフェスト」を提出。生徒・保護者、地域からの支持を集めている。「東」は入学前に課題の提出を生徒に通知。推薦で合格した生徒が、入学前まで中だるみしないよう工夫している。

 東京では、すべての都立高校で、23年から「学力向上開拓推進事業」を実施。その他にも15校を22年〜24年の3年間、「学力向上開拓推進校」に指定し、授業改善や生徒の学力向上を図っている。さらに外部機関による進学指導診断を実施した学校も22年は10校、23年は9校にもなる。専門的な知識を持つ進学アドバイザーを学校に派遣し、進学指導診断を行うもので、外部機関は「河合塾」「駿台予備校」「ベネッセコーポレーション」「代々木ゼミナール」の4社。

 私立入試の応募者数については、昨年より約3,900人減少。中3生の人口減並みの数字になった。応募者数が増えたのは「東洋」「明治学院」「朋優学院」等。特に「朋優学院」は上位コース志願者の増えが目立った。逆に減った学校は「東海大高輪台」「青稜」等。「青稜」はこれまで2月12日の1日のみの試験日で、1,000人以上の受験者を集めていたが、今年は613人と激減。神奈川県の私立併願優遇措置(日本大学)に流れた層がいると思われ、「東海大高輪台」の減少理由も同じと推測される。

 また稀なケースとして、都立立川に合格した女子生徒が、「八王子」の「普通」コースで不合格になったと報告。予想以上にハードルが高く、偏差値50後半が必要だったと思われ、塾にとっても来年以降、進学指導を厳選する必要があると進士氏はコメント。

 私立上位校では志願者数を減らす傾向があり、「青山学院」「慶応義塾女子」「豊島岡」は減少。都立でもトップクラスの進学指導重点校の志願者(特に男子)の減少が見られた。

 「今回の高校受験者は、小1から2002年から導入されたゆとり教育に9年間浸ってきた生徒。チャレンジするより、一般的な入りやすい学校への志望が多かった」と進士氏は語った。

25年度から東京でも
入試改革?

 最後に、安田教育研究所の平松享副代表から、今後の都立の動きについて報告があった。

 都では、進学指導重点校の再指定を25年から行う予定。その指標の一つが難関国公立大学の現役合格者数で、東大・東工大・京大・一橋・国公立大学医学部に15人以上が最低基準。7校のうちで、今年クリアしたのは「日比谷」、「西」、「国立」、「八王子東」の4校。「青山」は6人、「立川」は4人と、厳しい結果だった。実績を伸ばしてきた「進学指導特別推進校」や「推進校」との入れ替えの可能性も生まれている。特に、今春、中学から入った生徒が難関大10人合格の「白鴎」など、都立中高一貫校の動向も指定の行方を左右しそうだ。

 さらに、偏差値55前後の中堅校の倍率が高くなっている。近年、管理職に力量のある人材が送りこまれており、改善が進んでいる結果だ。

 「平成9年から始まった都の改革推進計画は、王子総合の開校で終了。すでに次の長期計画の策定が始まっているようだ。その中には、25年の入試の改革もあると考えられる」と平松氏は締めくくった。

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