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中学・高校受験:学びネット

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2011/7 塾ジャーナルより一部抜粋

緊急取材 教育の総合商社を目指すために
定員90人体制を貫く塾

  浜松速習ゼミ 代表 前田 哲治さん  
     
 生徒の心が傷つかないように、優しい指導を行う塾や講師は多い。しかし、不登校児の指導などを通して、優しいだけが彼らを立ち直らせる術ではないと、あえて厳しい言葉や難題も与える。そして彼らを決して見捨てることなく伸ばせる人数のMAXが90人だという。塾生の成績をデータという数字で縛るのではなく、個々に興味づけを行い、「走り出す」生徒を育成することに重きを置く。それが浜松速習ゼミの指導法である。

『毎日通塾』で身に付ける
宿題から自立学習へのステップアップ

 「勉強嫌いな生徒が集まる塾なので、できるだけ無駄なく、楽しく成績を上げる方法を生徒に教えていきたい」

 そう主張する前田哲治さんが率いる浜松速習ゼミは、浜松市では数少ない大学入試を視野に入れた個人塾。小学5年生から高校生までの小・中・高一貫に加え、最近は大学生に就活指導も行い、一流企業へ入社させている。

 6〜8年間通塾する生徒は、全体の10%。今いる生徒を自分の子ども代わりのように面倒を見て、新規の生徒募集に時間は割かれたくないと、これ以上の教室展開はせず、開塾以来14年間、その方針に変わりはない。また、生徒のデータや書類は事細かに記録せず、前田さん自身が把握している。人間が作り上げた数字で子どもたちを縛りたくないという主義は、点数を追いかけず、自己成長を促し、子どもたちがいったん「走り出せば」後から点数という数字はついてくるという考え方に基づいている。

 「入塾して来る生徒には、まずは宿題をきちんと仕上げるように、自習室を開放して、毎日来させることから始めています」

 前田さんは学校の宿題を『作業』と『勉強』に分けている。「1+1=2」を何度書いても無意味なように、わかっていることを何度も繰り返させる宿題(作業)をやっているときの脳は思考が停止しているという考え方を生徒にも区別させている。思考能力を強くするためには、『作業』ではなく、問題に対し、自らが進んで考え解いていく姿勢が必要であると語る。

 塾の自習室には講師を常駐させ、誰もが気軽に質問できるようにしている。質問できない生徒には講師が話しかけに行く。また、上級生が下級生を(例えば高校生が小学生を)教えていることもある。学年や学校、性別を越えて、塾がひとつの家族のようなもので、誰とも話さずに塾から家に帰ることはない。受験生は日曜日を含めて毎日通う生徒も多く、時間割上19時までが自習室開放の日でも、それ以降は通路で勉強をしたりして、23時過ぎまでいる生徒も珍しくない。

心にひっかき傷の残る
言葉や指導を心がける

 勉強のきっかけとなるのは、生徒各人の興味を見つけること。例えば海外の地図を見せ、外国の話をして、「英語は勉強しなくてもいいから、英会話ができたらかっこいいじゃん」と英会話を勉強するように目を向けていく。そして、英単語の習得に力を入れ(例えば、小学生5・6年生全員に1,500の英単語を覚えさせたり)、英語検定を合格させることで、自信を植え付けていく。この興味からの指導は、他の教科でも同じである。

 また、珍しいのは高校の国語を重視していること。「国語を数学的に解く」という独自の理論で、偏差値40台の生徒を60以上になるまで指導している。国語の論理性は小論文にも面接にも非常に効果的で、AO入試での受験者は全員が第1志望を突破するほどだ。

 それでも、なかなか勉強への姿勢が整わず、退塾を求める生徒もいないわけではない。こういった生徒には、保護者を含めた3者面談が効果的だという。生徒の自主性を重んじるため、退塾を止めることはしないが、生徒の将来像を考えた面談を行う。ここで発揮されるのが、前田さんの『心にひっかき傷を残す』面談方法なのである。

 「勉強だけでなく、嫌なことがあれば、すぐに逃げ出す人間になってしまってるよ!」

 「勉強が嫌いならしなくてもいいけど、高校に行く必要もないね!」

 「何も努力しない自分を会社が雇ってくれる? 将来、仕事も住む家もないよ!」

 これらは普段父母からも言われ慣れている言葉で、父母も「ほら、ごらんなさい。先生も同じことを言ってくれてるよ」と言う。しかし、生徒にとって、父母の言葉は素通りでも、他人から言われることは堪えるものだ(また、逆に褒めるほうも「○○先生がすごくお前のことを褒めてたぞ!」と他人の伝聞形式で褒める。これも非常に効果的だ)。勉強嫌いな生徒には毎日通塾させる約束を父母の前でさせる。生徒自ら発する「行きます!」の言葉を引き出すのに1時間の面談は当たり前だという。泣き出す生徒も少なくない。そして、言葉でひっかいた傷をそのまま放置するのではなく、絶対に見捨てない約束をする。さらに何かあったときにも絶対守ってあげる約束をする。その記憶は心の奥底に残り、ぐうたらな自分と決別し、チャレンジする前向きな人間に育つのだ。

本当に必要な情報で埋め尽くした
効果的なチラシが生徒を引き入れる

 浜松速習ゼミでは、多くの塾が行っているような生徒が友人を連れてくる「招待状制度」や「無料体験」は取り入れていない。これは、生徒を「営業マン」にしたくないという前田さんの意思の現れである。

 そのため、生徒募集の主体は新聞折り込みチラシ。チラシは前田さんのこだわりで、小さな文字で情報がびっしりと書き込まれている。写真や合格実績はあまり目立つことはない。これは、保護者がどの情報を欲しがっているかを考え、いつまでも取っておいてもらえるようなチラシを目指した結果である。この効果は高く、問い合わせてくる保護者の中には「1年前に入ったチラシですが…」と聞く人もいるほどだ。

 また、教室展開や生徒増員の時間が必要ないため、前田さんは余力でさまざまな分野にも着手している。広域通信制高校と提携を取ったり、不登校児童の指導を行ったり、希望する生徒には能力によって海外留学を斡旋したり、海外の学校を視察したり、ラオスの学校に井戸を寄付するなど、子どもたちに向けた活動も活発だ。

 また一方で、市から依頼を受けて、講演会で壇上に立つことも多い。現在、テーマは前田さんに一任されることが多く、発想の転換や脳の使い方などを講義。講座中には聴講者が参加できるワークを取り入れており、会場全体で楽しめる構成となっている。講義後の自主的に行うアンケートでも好評で、今年はすでに17回の講演が予定されている。

 「いずれは教育の総合商社の設立を目指したいですね。塾と学校は過去、敵対関係であると言われていました。時代は流れ、現在ではともに手を取り合って生徒を指導するまでになりましたが、学校より塾のステイタスが低いという不等号は崩されていません。この状況を、せめて肩を並べるほどまでに塾の社会的地位を上げていきたい。あそこへ相談すれば、教育のことはすべてわかる。そんな信頼される総合商社にしたいのです」

 そう語る前田さんへの浜松全体の期待は、今後も大きくなっていくことだろう。

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