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中学・高校受験:学びネット

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2011/3 塾ジャーナルより一部抜粋

ズームアップインタビュー 顧客への選択肢、ネットワーク構築で細やかに
4つの販売戦略で今後も変革

  株式会社 増進会出版社・株式会社 Z会
代表取締役社長 加藤 文夫さん
 
     
 買収、提携により再編の流れが一気に加速している塾業界。その背景は少子化に加え、教材開発や安全管理費用など施設運営面でのコスト増が指摘されている。そこで注目されるのが業態を超えた提携だ。株式会社Z会を100%子会社として傘下に持つ株式会社増進会出版会は、創業以来の教材開発力を生かし、株式会社栄光、株式会社市進学院ホールディングス、株式会社ウィザスと業務資本提携を締結。また、進学会をはじめ、全国約50社と映像やオンデマンド教材を軸としたネットワークの構築を進めている。三四半世紀を超えた教材開発のノウハウと地域密着の教室運営が生み出す教育業界のイノベーション。その可能性について、増進会出版社・Z会の加藤文夫社長に聞いた。

創業時から受け継がれる
イノベーション気質

── 添削指導の草分け的存在という印象が強いZ会ですが。

加藤 創業者は旧制中学で英語科の教員でしたが、耳が聴こえなくなり、教壇を去りました。そこで思いついたのが、昔からあった「朱を入れる」という学習指導法。これと「郵便」というインフラを融合させて始めたのが通信添削事業の始まりです。

── 当時、イノベーションといえる起業だったわけですね。

加藤 創業は1931年。世界恐慌から2年後の年で、空前の就職難でした。その後、大学の大衆化が進み、大手予備校が爆発的に生徒を集めるようになりました。しかし、まだまだ地方で予備校に通えない、あるいは割安感を求める人がいましたから、そうした大学受験生が顧客となったわけです。

── 当時のターゲットは大学受験生。その後、どのように変化しましたか。

加藤 同じ業態でも、ある企業は小学生、幼児と対象年齢を拡大したり、また別の企業は出版業に特化していったりとさまざまです。Z会も通信教育から教材開発、対面教室展開へと向かいましたが、そこに「成績上位層へのサービス」というコンセプトを設けました。

── 社内の意思統一がなされていたのですね。

加藤 実は、最初は2つの意見に分かれました。大学受験市場が飽和状態になったのを機に、ターゲットを幅広くして事業展開しようという意見がひとつ。もう一つは、従来の上位層をターゲットとするブランドはそのままに、対象年齢を広げようというものです。後者を選択し、結果的に中学受験市場の拡大など時代にマッチしました。Z会の高校生会員は2000年がピークで11.5万人。現在は約7万人と減少しましたが、その代わり幼児・小学生が増加しており、全体の売り上げは当時より上回っています。

── 直近の売上高、経常利益はどのようになっていますか。また事業ごとの比率をお聞かせください。

加藤 2009年度の数字ですが、売上高は約200億円。経常利益が15億円。通信教育部門、教室部門、出版その他の比率は7対2対1程度となっています。

── 小・中学生の上位層をターゲットとしたことが、売り上げ維持につながったと。

加藤 そうですね。それに加えて、大学生対象のキャリア事業部門も伸びています。今後、就職のためのキャリア教育と就職を斡旋する事業がコラボレーションすることによって、就業を保証できるような仕組みができないか思考中です。

中小の塾で好評の
オンデマンド教材

── なぜ、上位層にこだわったのですか。

加藤 教材の執筆陣、添削指導者、社員が一番作りやすい教材が、上位層教材だったということです。言い換えれば、当社にとって経営効率を上げることができる層が上位層だったということです。

── それで、対面指導(教室)部門はうまくいきましたか。

加藤 正直、不得意と言わざるを得ません。上位層密度が高い東京など都心部は黒字でも、地方では赤字。教室経営の効率化を図ることは難しかったのです。

── そこで、塾との提携に踏み切られたと。

加藤 これは実際に塾長さんがおっしゃったことですが、「地方の塾は大衆層をターゲットとしているが、一部の上位層に対しても満足のいく教材が必要。ところが、少数を対象に教材開発をすると、非常にコストがかかる」と。そこで、教材製作と指導のノウハウは持っているが、教室経営の効率化に課題を残す当社との提携が実現したのです。

── 両者が互いに補い合えるわけですね。

加藤 そうです。中小の塾にとっては、それまで(大手の進出で)取り逃がしてきた上位層を取り込めるチャンスがあり、当社にとっては、教室経営を効率的に進められるメリットがあるのです。

── 現在の提携数はどれくらいですか。

加藤 全国で40〜50社にのぼっています。最近は小・中学生に関しては、中位層上位にも対応できる教材を開発していますので、全国的に増えている個別指導型の塾にも教材を提供できるようになりました。

── 個別指導塾のための教材づくりは、難しいのではないでしょうか。

加藤 一般に、個別指導をうたいながら指導は個別でも教材は市販の教材を使っている塾が多く、難易度、個別の進路に対応することが困難だったようです。当社では、全国の学校が選定した教科書、また、その教える順番などを顧客データベースで管理しています。一方で、難易度、進路別にあらゆるテキスト、問題を収めた教材データベースを持っています。この二つを組み合わせることによって、一人ひとり、その時々にあった「オンデマンド教材」をつくることができるのです。

── 実際に塾と提携を始めて、うまくいっていると感じる点は。

加藤 例えば、栄光ゼミナールさんは50人程度で採算がとれる教室運営を打ち出しています。その形態も地域のニーズに応じ、3科塾あり、全科塾ありというように。地域が求めるものを細やかに過不足なく提供する、いわば「教室のコンビニ化」により、高い収益率を上げておられる。顧客単価を無理に上げよう、あるいは顧客を囲い込んで売り上げを増やそうというのではなく、顧客が選べるようにして、企業は無理をしない。そういう方針は当社と共通していると思います。

── 英数の2科しか需要がなければ、5科を取りそろえてまで赤字は出さない。確かに効率的ですね。

加藤 英数2科の教室で、ほんの1〜2割の生徒が全科の指導を求めるなら、そういう生徒さんには、国、社、理の3科でZ会の通信添削を勧めていただいています。

人事交流とネットワークが
ビジネスチャンスを生む

── 塾との提携で売り上げの伸びはどれくらいありましたか。

加藤 現在は1〜2億というレベルですが、近い将来もっと増えると思います。

── 人事交流も行われていると聞きました。

加藤 実は6年前の社長就任時、変革を迫られる環境にありながら、社内には依然として、成功体験の余韻にひたる雰囲気がありました。塾との提携を決断したのも、一つにはそうした雰囲気を変えるため、刺激を受けたいという目的もあったのです。現在は株式会社光から2人の優秀な社員を教室部門に迎え、次年度、うち1人は関西圏の教室部門の管理者として関西全域の教室を任せ、もう1人には首都圏の中学部門「Z会進学教室」の7教室の運営を任せます。当社からも部・課長級2人が、株式会社栄光の関連教材会社に出向・転籍しています。

── 今後、塾との新たなビジネスについてお聞かせください。

加藤 例えば、一地域でしか使われていない優れた教材があるとすれば、全国に販売網を持つ当社が、開発者に代わって売ることは可能です。いわばビジネスのネットワーク化を進めたいですね。

── ネットワーク化とこれまでの業界再編との違いは。

加藤 買収で組織を拡大していけば、やがてどこかで行き詰まりが来るでしょう。全国には教育にこだわりを持った職人肌タイプの塾長が少なからずいます。そうした塾とつながりを持って、トレードする形があっていいと思います。

── Z会の通信添削事業は、今後どう変わっていきますか。

加藤 創業時にはひとつのイノベーションとして受け止められた事業も、時代とともに変わらなければなりません。まず、子どもたちの生活から「郵便」という通信手段がほぼ消え、インターネットに移行しました。そこで、この3月から小、中、高の一部の教材をインターネットを活用した教材に見直し、中、高生向けには映像配信教材を併用できるようにしました。次に、課題提出状況、成績、弱点がWEBサイトの「Z会MyPage」から確認できるようにしました。

── リニューアル効果は期待できそうですか。

加藤 これまで学年やステージによって教材の仕組みがさまざまでしたが、個人のスタイルに合わせて勉強法を選べるようにしました。名付けて「フリースタイル」。インターネット情報サービス、映像配信、塾と添削サービスの融合により、新通信教育のサービスが始まりました。

小学生、シニア、社会人
就活事業に可能性

── 今後の展望についてお聞かせください。

加藤 まず、小学生の通塾の掘り起こしに期待が持てます。来年度から小学校で英語教育が始まりますが、これについては、一歩先を行く韓国の例が参考になります。韓国では今や小学1年生から英語教育を始め、小学校を卒業する頃にはネイティブ並みの実力を持つ子どもも珍しくありません。これは小学生の通塾率8割という数字とも関係しています。通塾の大半は英語塾なのです。日本でも同様の傾向が起こる可能性が大きいと思います。

── なるほど。そのほかに戦略として描いているものは。

加藤 シニア(60歳以上)に対するアプローチも必要でしょう。生き生きとした頭脳活動をサポートできる事業を現在、模索しているところです。また、社会変革の急速に進む中、学生時代に学んだものだけを頼りに50年間の社会人生活を乗り切ることが難しくなってきています。社会人生活の半ばで、必要に応じて知恵をつける仕組みが必要ではないかと思います。最後に、先ほども触れましたが、就業を保証できるキャリア教育というものを実現させていきたいと考えています。

── 本日はありがとうございました。

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