「映像授業に関するアンケート」として全国の塾を対象に行った結果、回答は256教室。地域は全国に及び、塾の規模も塾生1,000人を超える塾から50人以下の教室まで多岐に及んだ。
その中で、映像授業をすでに取り入れているのは全体の44%(グラフ1)。「まだ」と答えた(検討中を含む)塾の56%にはわずかに及ばなかったが、映像授業が一般化してから現在までの期間を考えると、数年後にはこの数値が逆転しているとも予想できる勢いだ。また、導入の決め手は(グラフ3)「授業がわかりやすい」や「価格設定が納得できるものだった」に次いで、「高校生部門がスムーズに開設できる」という回答が多く、「生徒募集に期待できる」を大きく上回った。
これは、高校生部門の新展開そのものが新規生徒募集であるため、複数回答を避けた回答者が多かったものと思われる。
導入のメリットで多かったのは(グラフ4)「高品質の授業が受けられる」や「授業レベルの均一化」が賛同を集め、多いのではないかと予想していた「人件費の節約」は3番目にとどまった。差は大きくはないが、導入に経済的効果よりも生徒指導への効果を考える塾が多いということが浮き上がった。また、中には「めずらしいので生徒が楽しそうに受講している」「全体的にシンプルで事務処理が省ける」といった回答もあった。これは、生徒の満足度を聞いた設問(グラフ2)に対し、「満足・普通」と答えた塾が93%を超える結果を出したことからも、うまく映像授業を使用して、生徒を大事に育てている塾が多いことがうかがえる結果となっている。
一方、導入していない塾で、導入しない原因を聞いたところ、「コスト面が合わない」という回答よりも「映像授業に違和感を感じる」「塾のシステム上、必要ない」という意見が大きく上回った。「以前に導入したが、使いこなせなかった」「生徒が途中で飽きてしまった」という意見もあり、どのように使用して、効果を上げていくかを導入時にじっくりと考える必要があることを浮き彫りにした。
しかし、映像授業の今後に関しては「期待できる」と答えた塾が61%。「フォロー次第では有効なので、そちらも重視すれば進化していくだろう」という答えが最も多かった。
塾の指導形態で見ると、個別指導塾と一斉指導塾の割合は、ほぼ50%ずつ。この数字から考えても、映像授業への期待は、塾業界全体的に大きいものと考えられる。
指導にあわせ、使い方さまざま
今回のアンケートでは、個別回答も目を引くものが多かった。
映像授業に関して、どのような使用をしているのかを聞いた設問では、
「講師の指導がメイン、映像はサブとして活用」
「一斉授業のフォローとして使用」
「完全無料なのでフォローはしない、自立型学習アイテムとして使用」
などの意見が出ていた。中には、
「一斉授業の確認テストで理解していない部分があると思われた生徒に、その部分を映像で自習させる」
「映像を30分ごとに止め、そこまでの内容を把握・理解しているかを個別に講師が確認」
「映像授業と個別指導を交互にし、映像で学んだ内容を個別指導で反復することで、十分な理解につなぐ」
などの独特な使用方法もあった。
導入のメリットに関しては、
「高校生部門を映像授業でつなぐことで、小学生から大学入学までを一貫して見ることができる。そのため、大学入学後に卒塾生がバイト講師として帰ってきたときに、指導方針をわざわざ教える手間が省ける」
「メリットもデメリットも使い方次第。高品質な講座には変わりないので、一度使用して駄目だったら、別の使用法を試せばいいから、止めることは考えない」
などの意見が出た。
さらに生徒へのフォローとしては、
「映像を見終わった後にチェックテストや質問を受ける」
という答えが最も多かったが、異色回答として、
「一斉授業と映像授業双方を受講後、『講師と映像の授業の違い』をテーマに生徒同士で討論。知識定着と指導力向上を同時に導く」
「講師に映像授業をある程度受講させ、自らの指導方法の欠点を反省・改良させる」
「映像授業を終えた生徒に、その授業について講師が質問し、答えた内容で生徒の弱点を解明する」
「授業中に眠った生徒にはペナルティーとして、英文詩の暗誦などをやらせている」
というユニークなフォロー方法を採っている塾もあった。
また、導入していない塾からは、
「小学生部門では、講師の目が届かない分、緊張感がうせて、眠ってしまう生徒もいる」
「保護者から『映像だけなら家でもできる』と苦情が出た」
「高価な教材を扱わせるには、生徒が幼い子が多くて危険」
「塾長自身がパソコンを使えないため、理解がなくて無理」
という、設問の答えには、到底当てはまらない答えも出てきた。
ただし、やはり全体的に年齢を問わず、映像授業への興味は高く、中には、「今はオーナーが導入をしない方針の塾で教室長をしているが、独立後には即導入したい」と意欲を語る教室長もおり、さらに発展していく分野であることは間違いないと思われる。
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