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中学・高校受験:学びネット

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2010/9 塾ジャーナルより一部抜粋

第44回 火曜倶楽部シンポジウム
新企画・時代の風を読む
注目のセミナーに私学・塾関係者400人以上が参加

  2010年6月22日(火)/於 東京ドームホテル  
     
 

90年代、公立校の学校制度改革やゆとり教育、授業の荒れなどが原因で、私立受験者数は一時期跳ね上がった。しかし、先行き不透明で底の見えない不況に巻き込まれた現代、私学は生徒獲得戦略の変更を余儀なくされている。

啓明舎の後藤卓也氏や株式会社リヴィジョン代表の富永光太郎氏、日能研関東代表の小嶋隆氏らが幹事となって運営してきた「火曜倶楽部」は、この激動の時代の中を私塾と私学の架け橋として活動してきた。

今回は、現在の私学の置かれている状況を見据えた上で、新企画「時代の風を読む」の一環として、有識者4人を招き、『改めて私学の哲学・私塾の戦略を問う』をテーマにしたシンポジウムを開催。約400人以上の参加者は私学・私塾関係者がほとんどで、中には教師10人以上で来場した学校もあり、注目度の高さがうかがえるセミナーとなった

シンボジウム
改めて私学の哲学・私塾の戦略を問う
中学受験は何を、誰を豊かにするのか?

パネリスト

近藤 彰郎氏
東京私立中学高等学校協会 会長
八雲学園中学高等学校 理事長・校長

工藤 誠一氏
神奈川県私立中学高等学校協会 理事長
聖光学院中学高等学校 校長

永瀬 昭幸氏
株式会社ナガセ 代表取締役社長
東進ハイスクール・東進衛星予備校 理事長
株式会社四谷大塚 代表取締役社長

小嶋 勇氏
日能研 理事長
株式会社日能研関東 会長

コーディネーター

清水 哲雄氏
東京私立中学高等学校協会 副会長
東京私学教育研究所 所長

清水 社会の影響や世代交代などで、私立は各学校独自の理念の確認とともに、今後の教育方針をどうあるべきか問われる時代になっています。塾業界も同様に、ブランドによる市場開拓が見込めなくなりました。この状況を踏まえて、今回の火曜倶楽部セミナーではテーマに沿い、それぞれの意見を出していただければと思います。

テーマ1
現在の時代認識を
どのように持っているか

近藤 公立高校の無償化で、一層、公立への進学率が上がると言われていますが、実は今の時代、私学入学を希望する生徒は多いのです。私たちの世代は多くが公立志願でしたが、社会的に成熟した時代となった今、子どもたちにお金をかけても良い教育を受けさせたいと考える親が増え、多様な価値観を持った私学に注目が集まっています。この要望に応えることが、現代私学に求められる必須条件です。
しかし、行政から見ると、まだまだ私学教育は小さな存在として扱われています。私立で良い結果を出した教育方法を公教育へ流そうとする動きや、私学も指導要領通りに教育方針を変更せよという議員も少なくありません。こういった行政の関係者に、私学を理解してもらうための努力をすることも必要ではないでしょうか。

工藤 かつての日本は、小国ながらも技術・経済ともに大国に負けない力を持ち、多くの先進国が日本に向けてさまざまな商品や知識を開発し、提供してきました。しかし、前代未聞の不況に襲われ、技術力も他国に追い抜かれた今、国力がこのまま低下すると、日本に製品やサービスを供給する国は少なくなるでしょう。この現況を突破するためにも、日本人の良さを残しながら、他国の人間のリーダーとなれる力を持つ人材を育成し、他国へ発信していく必要があるのです。そして、それができるのが、建学の精神と柔軟な教育が可能な私学なのです。
現代の中高生は、日本が不景気に突入した時代に生まれ、好景気を知りません。しかし、生まれた時代は選べなくとも、新しい時代を作る力はあるのです。その力を引き出すのが、われわれ私学のこれからの教育と考えています。

小嶋 この夏、ワールドカップが開催されたとき、テレビの視聴率は完全にサッカーに傾き、万人がサッカーファンになるという風が吹きました。教育もまた同じで、公教育無償化という風が吹いているのです。これに勝つためには、私立の風を起こす必要があるでしょう。
そのためにも、今、学校で行っている教育を再確認し、行動を起こしてください。そして、私学と公立は勝つか負けるかの戦う関係であり、必要のない学校はつぶれる可能性もあることを認識して、今後の戦いに挑んでください。その力を付けるために、ハイレベルの塾と提携し、進路指導などの方法を学ぶ姿勢を私学が持つことも大切ではないでしょうか。

永瀬 海外から帰ると、日本全体が元気がなくなっていることを感じます。一番の問題は、日本人が自信を失っていること。先ほど、小嶋先生がワールドカップの話をされましたが、日本対カメルーンの試合で、前評判では絶対に無理だと言われていた勝利を手に入れたとき、日本中が活気づいたでしょう。かつて日本が、勤勉で知能水準が高く、チームワークを重んずる特性を生かし、一時期といえど、経済大国を築き上げたことは事実です。この素晴らしい日本を復活させるために、日本全国に点在する才能のある子どもたちを集めて伸ばす。次代を担う人財を育成することが、私たちの仕事であると考えています。

テーマ2
今後の哲学と戦略

清水 現在、多くの学校や塾において、世代交代を迎える時期に直面しています。自塾や私学を受け継いだばかりの若い人材たちが、厳しい現代社会を乗り越えるためには、今後どのような戦略をたてていけばいいでしょうか。
今回はまず、塾側から意見をいただきます。

小嶋 少子化が多少解消されてきたとはいえ、まだしばらく、塾間での生徒の奪い合いは起こります。私の会社である日能研関東は、創立当初の塾生3人から、現在まで成長をしてきたのですが、その要因は『お客様が喜ぶことだけを考えて』という経営方針にありました。お客様に選ばれ、来ていただき、感謝される、その残りが儲けであると考えた結果が、現在の状況に反映しているのです。私学も同じで、まずは伸びている学校のパンフレットを集め、自分の学校と比較し、常に生徒や保護者が喜ぶことを行うこと。そして、教員は単に知識を与えるだけでなく、恩師として慕われるようになること。これが今後の安定した運営のための戦略になるでしょう。
また、塾を敵視する学校も少なくありませんが、塾は親が立場的に学校に言えないことを代弁する機関でもあります。どうか塾の意見にも、きちんと耳を傾けていただきたいですね。

永瀬 四谷大塚の姉妹校である東進ハイスクール・東進衛星予備校では、東大現役合格を打ち出していますが、大学合格はあくまで中間目標。私たちの仕事の原点は、数多くの社会に貢献する人財を育成し、社会へ送り出すことです。
人財を育成する上で、知を鍛える・体を鍛えるのはもちろんですが、最も大切なのは、頑張ろうという心・モチベーションを持たせることです。そして、その原動力となるのが、将来自分はこうなりたい、という夢を持つこと。生徒の心を動かし、夢を見つけ、夢を育み、志・ライフミッションへと高めていくことです。このような指導は、生徒と直接向き合う私たちにしかできません。
ぜひとも生徒と真正面から向き合い、生徒のモチベーションを高める指導をしていただきたいと考えています。

近藤 私学は、創設者が教育のために私財を投入して、創設した学校がほとんどです。その原点へ戻り、教育を見つめ直した上で、時代にあわせた変化を行うことが大切ですね。公立校は皆に同じ教育を行うことが大切であり、伸びる子や伸び悩む子など、個々に合わせた教育ができません。つまり、個人の能力を引き出し、世界で活躍する人材を育成できるのは私学なのです。
この考えを礎に、教員が使命感を持ち、核となって教育を変えていく必要があるでしょう。そして、そういう命がけで指導する教員には、生徒の心がついていくので、学校と生徒双方が成長することができるのです。

工藤 今、近藤先生が言われたように、公教育は「人はいかにあるべきか」を全面に出し、私学教育は「個々の人間育成」に重点を置きます。そういう意味で、一人ひとりの教育において、私学は自らの教育に自信を持っていいでしょう。また、私学であるからできるのが、創意工夫を凝らした教育です。各々の学校でオリジナルの教育を考え、私学同士のネットワークを生かして協力し合う関係になれば、さらに良い教育が行えると思います。
しかし、教育の基礎となる指導要領は公教育と同じです。今後は、私学独自の学習指導要領や教員免許を設立し、生徒個人に対して充分な対応を行うよう一層の努力をしていきたいと考えています。そして、塾はあくまでも、教育の補完であり、メインは学校であるのですから、私学教育者は教師としてのプライドを持って、生徒指導に当たってほしいと考えています。

テーマ3
私学は塾をどのように位置づけているか
また、塾に対する要望にはどんなものがあるか

清水 最後のテーマになりますが、私学と私塾、互いに交わらないようで協力関係にあるという状況で、相互がどのように相手を把握しているかを話し合っていただきたいと思います。

永瀬 教育に携わる者として、アプローチの違いこそあれ、次代の日本を背負う子どもたちを育てるんだ、という思いは共通の志だと思います。
教育のすべての原点は人の心を変えることです。夢を持つことが、生徒に勇気を与え、頑張る原動力となります。生徒との信頼関係をしっかりとつくり、是非とも生徒と夢の話をしていただきたいと思います。
また、教育とは人が為すもの。私自身、社員の研修・育成に膨大な時間をかけています。私学においても、もっと民間企業との交流を深めるなど、社会との接点を増やし、教師の質を高める取り組みをしてみてはいかがでしょうか。

工藤 私学はそれぞれが独立した教育集団です。そのため、独自の文化を生み出すことが可能です。そこで生まれた新たな価値を次世代に伝え、未来を新しく作り上げていくことのできる人材として育てるよう、今後も邁進していきたいと考えております。

近藤 塾と私学は、互いにその存在がなければ成り立たない関係であり、ある意味、運命共同体とも言えます。経営や教育に対して、われわれ私学関係者以上に熱い情熱を持ち、学校に対しても厳しい意見を出される塾は少なくありません。しかし、『子どもたちのために存在する機関』であることは同じです。私学や塾は今後も互いに競争するものであることは揺るがないでしょうが、有事に際しては協力し合い、問題に対応していけるような体制を作っていきたいですね。

小嶋 企業において、大企業と中小企業の最も大きい差は、資本力の違いにあります。塾の場合では、進学力の差がこれに当たります。その一方で、大企業に比べて中小企業が有利なのは、行動力の早さです。塾も小規模なほど、生徒個々への対応や指導方針が細部まで決めることができ、その分、生徒や保護者から感謝されることも少なくありません。本日は、個人塾や教室展開が数ヵ所という規模の塾が多く参加されているかと思いますが、そういった細やかな配慮は皆さん十分にしておられることと思います。今後はそれに『自塾にしかない特徴』をプラスしてください。また、知識量は豊富なほうがいいのは当たり前ですが、今の時代、それだけでは生きていけません。子どもの良い部分を見つけ、褒めて、その力で生きていけるほどに伸ばすことや、自分に対しても他人に対しても一度した約束は必ず守ることを徹底してください。そうすれば、自然と生徒たちはついてくるはずです。

清水 本日はお忙しい中を、貴重なご意見ありがとうございました。

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