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中学・高校受験:学びネット

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2010/9 塾ジャーナルより一部抜粋

通信制高校の実態を知る!
塾対象アンケートと在学生の意見

     

〜時代とともに変化してきた通信制〜
学びリンク株式会社 代表取締役社長 山口 教雄

 いま30歳以上の人に「通信制高校を知っていますか」と尋ねても、ほとんどの人は具体的なイメージがないのが普通です。「赤ペン先生の…」と通信教育でイメージを代用するという程度です。これが首都圏などの20代後半になると、やや形を伴ってきます。さらに20代前半になると、中学の同級生や知り合いの誰かが通信制に行ったという具体像が出てきます。
 通信制高校は、ようやく若い世代(とその保護者)に具体像を結びつつあるところまできました。学校数の増加、制度面の変更など、この10年間で通信制は様変わりしました。変化が激しかっただけに、現状は玉石混交ともいえます。

通信制だから「世界も目指せる」

 今年3月に行われたテニス全国選抜で、団体ベスト8、個人ベスト4という好成績を創部2年目で果たして、注目を集めた高校があります。テニス専門誌に「高校に通いながら、世界も目指せる新システム」として特集されました。

 この高校は、相生学院高校(兵庫県)という私立通信制高校です。2008年度に教育特区による株式会社立の高校として開校しました。生徒は、高校が提携したテニススクールでの練習と高校の学習を両立させながら、これまでに例のない実績を残しました。この高校が実例として示してくれたように、通信制のしくみを生かせば、生徒にとって大きな飛躍の道もあります。国内で好成績を残していながら、この高校の生徒の何人かは国内でのプレイに飽き足らず、アメリカなど海外のトーナメントで活躍する道を選ぼうとしているといいます。

マスコミも評価する調べ学習

 今年は阪神・淡路大震災発生から15年目となり、震災の犠牲者を追悼するのと同時に、この震災の残した記憶を忘れないようにする催しが各地で行われています。この震災で新聞社・テレビ局が撮影した写真をもとに、そこに写った人たちが今どうなっているかを追った調べ学習が、通信制高校の生徒によって行われました。今年5月に行われた報告会では、「新聞記者以上の緻密な取材」とマスコミ関係者から高く評価されました。

 その地道で綿密な調べ学習を行ったのは、つくば開成高校京都校(京都市、本校・茨城県)の生徒たちです。阪神・淡路大震災を震災当日に現地から報告し、関連の著書もあるNHKアナウンサーの住田功一さんを特別講師に迎えて、住田さんや同校の先生方の指導も受けながら。見事にやり遂げました。10数年を経た後の調べ学習は、当時の写真と現場が一変してしまっていて手がかりが少ないうえに、被災者にとっては、肉親や友人知人をこの震災で亡くした方々も多く、取材拒否やお叱りを受けながら、深く考えることの多い行程となったようです。調べ学習チームの粘り強い気持ちと助け合いを別にすれば、自由な時間の多い通信制高校だからこそできた調べ学習です。

 つくば開成高校京都校の生徒たちの行った調べ学習の内容なども収録した書籍が、この秋『語り継ぎたい。命の尊さ』(仮題、住田功一著、発行・学びリンク)として発行される予定になっています。

学校数が増えて、小規模化

 通信制高校は、この10年間で大きく様変わりしました。この一番の背景には、私立高校により学校数が増えたことです。

 通信制高校は、現時点で209校が開校していますが、このうち約6割にあたる137校は私立高校が占めています。私立高校は2000年の段階では、44校に過ぎませんでしたから、約3倍に増えたことになります。この間の公立高校はというと、学校統合などもありましたが、学校数としては、69校が72校となっただけです。

 学校数は増えましたが、生徒数はというと、通信制全体で18万人台後半から19万人程度で“横ばい”といった印象です。高校生全体の学齢人数は、この10年で約70万人減少していますから、通信制の生徒の高校生全体に占める割合は、4.5%から5.3%へとアップしていますが、絶対数としては学校が増えたからといって、並行して生徒も増えたということにはなりませんでした。

 学校数は増えたが、生徒数は横ばいという両者を合わせていうと、通信制は小規模化したということです。小規模化ということは、良い面としては、一人ひとりの生徒に目が行き届きやすい面がありますが、学校経営からみると、収支が厳しくなったという面もあります。

 もう少し実態から言えば、私立高校は小規模化しましたが、公立高校の規模はそれほど変わっていません。北海道、埼玉県、神奈川県、大阪府など、公立高校が地域に1校しかないエリアでは、生徒数4,000人以上を抱える通信制があります。大規模な公立通信制高校では、普通の全日制高校の約5倍の規模となっています。

 学校規模という点では、生徒数が最も多い高校は、私立通信制高校のクラーク記念国際高校(北海道)です。生徒数は、1万人を超えています。公立の4,000人以上の高校と比べても倍以上の生徒数を抱えているのですが、このクラーク記念国際高校にしても実は“小規模”なのです。なぜかというと、クラークには61ヵ所の学習拠点が全国にあります。1ヵ所あたりの平均でみれば、生徒数は200名弱ということになります。公立高校のほうは、広大な北海道の有朋高校(札幌市)こそ32ヵ所の協力校をもっていますが、他の大規模校は1ヵ所の校舎に生徒が集まります。公立校の場合は、規模も大きく、また大部分の高校が月2回から3回の登校となっているため、生徒と先生方の接点がどうしても少なくなるため、生徒全体にまで、目が行き届かないのが悩みの種です。

 この結果、公立通信制の場合の卒業率は、3割程度にとどまっているのが現状です。

「広域通信制」と「独立校」というしくみ

 私立高校が開校してきたことで、学校数が増えてきましたが、増えてきた学校には2つの特長があります。一つは、「広域通信制」が増えたこと、もう一つは「独立校」が増えたことです。私立高校の広域制と独立校の学校数は、この10年でともに約4倍に増えました。

 広域通信制というのは、生徒の入学できる地域を定めた、いわば業界用語です。3つ以上の都道府県から生徒が入学できる高校を広域制と呼んでいます。広域制以外の高校は、「狭域制」と呼びます。こちらは、本校所在地の都道府県だけか、隣接する1都道府県を加えた2つ以下が入学地域となっています。ちなみに公立校は、本校所在地域の生徒だけを対象としています。

 独立校というのは、通信制課程だけでつくられている高校です。独立校に対するものは、併置校と呼ばれ、こちらは通信制以外に全日制や定時制など他の課程も置かれている学校です。独立校の場合は、校舎を通信制の生徒だけが使うことができ、併置校の場合は、校舎を全日制や定時制の生徒と共用する場合が多くなります。これまでの校舎共用校では、通信制は、全日制の生徒が利用していない時期の日曜日や夏休みなどしか使えず、不便でした。通信制の柔軟な教育のしくみを生かしきれていませんでした。

学習拠点がなければ、選択外

 東京の生徒が他府県認可の広域校に入学した場合、この生徒が普段勉強する場所や居場所が問題になります。広域校で、この問題にこたえられないところは、生徒や保護者の選択肢から第一に外されます。通信制を選ぶ生徒や保護者の要望は、第一に確実な高校卒業資格ですが、普段通える場所があるということも要望の上位に入ります。特に保護者の要望の中では、普段通える場所があるという点は、生徒以上に高い要望となっています。

 通信制の理念は、いつでも・どこでも・誰でも学べる高校というものです。だから、通信制の場合は、普段の生活は自己管理、学習は自学自習ということを大義名分としてきました。正直に言えば、ほとんどの人がこの自己管理と自学自習というものを苦手としているにもかかわらず、それがタテマエとしてまかり通ってきたわけです。これは、大人になれば通用するものかといえば、通信制大学の卒業率が、公立通信制高校よりさらに悪い15%程度ということからも想像できます。

 このため、生徒が普段勉強する場所、居場所として、広域校は自前の拠点や提携する教育機関を開設してきました。

通信制の良否に直結する学習拠点

 私立通信制高校の学習拠点としては、サポート校や技能連携校が代表的なものです。他に分校などもありますが、分校は数としては少ないです。

 区分としては、サポート校は無認可施設、技能連携校は都道府県教育委員会の指定施設という分類はできますが、ここ数年設立されたものをみると両者の境界はそれほど明確なものではないといえます。技能連携校といえば、従来は高等専修学校や企業内学校などが中心でしたが、学習塾などの民間施設も最近では指定を得ています。

 ともに通信制高校生の学習拠点として、確実に高校卒業に導くというのは、基本的な機能となっています。このしくみがあるからこそ、私立通信制高校の卒業率がどんなに悪くても90%以上になっています。それだけにサポート校や技能連携校のポジションは、通信制の良否とも直結しています。
通信制のよさは、いろいろな連携ができることです。最初に述べた例では、テニススクールと提携した練習やジャーナリストを講師に招いた学習が正式な高校の授業となっています。教育目標が明確になっていれば、その内容は柔軟に設計することができ、大学や専門学校へ出向いての学習や企業や福祉施設などでの体験なども学校外学修として授業の一環として認められています。

 サポート校や技能連携校などでも、独自のカリキュラムを設計することができないと、見劣りしてしまう時代になりました。

サポート校は小規模校を複数展開

 サポート校は、1991年に東京で誕生しました。先駆けとなった東京文理学院高等部は創立約20年になります。その後、90年代後半に大手学習塾、大手予備校を母体にした設立がありましが、その後大手と呼ばれる塾、予備校は撤退しました。撤退理由の多くは、事業として効率的でなく、マンパワーが必要とされることが嫌われたことです。90年代は、サポート校自体も広域での教室展開を行ったところもありますが、これも効率面で合わずに縮小となっています。

 現在のサポート校は、通信制高校が直営で開設するところと、独立した設置主体が通信制高校と提携して開設するところの2つのタイプとなっています。独立した設置主体の多くは学習塾が占めています。生徒募集で成功しているサポート校は、1拠点の大規模化をねらうのでなく、特定のエリア内に1拠点あたり100人程度の生徒数で運営できるような拠点を複数置くような設計をしています。
サポート校の有力校は、2004年度の構造改革特区法の規制緩和で株式会社により学校設立が認められた制度を活用して、私立高校を設立しました。株式会社立で設立された通信制高校20校のうち、17校はサポート校を母体としています。株式会社立通信制も、今年度は設置者変更により学校法人に転換したところが1校出ました。同じ学校教育法一条校でありながら、現実には株式会社立と学校法人立では補助金、税金、スクーリングなどで格差があるため、設置者変更を行う学校もこれから出てきそうです。

山口教雄氏プロフィール

1958年千葉県生まれ。
学びリンク株式会社代表取締役社長。
1996年創立の学びリンクは、当初より通信制高校やサポート校に関するガイドブックなどの出版物を発行。学習塾団体の民間教育連盟の事務局長も務める。

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