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2010/7 塾ジャーナルより一部抜粋

『価値組』学習塾になるNo.1戦略

第2回 限定した範囲で戦う

大咲 元延 (おおさき もとのぶ)
学生時代からはじめた英会話教室を経営するなかで数多くの取り組みを実践し、独自のノウハウを確立。さまざまな業種の中小企業の開業・経営・集客などのコンサルティングを行う一方、年間50回を越す講演会やセミナーで全国を回っている。中小企業診断士、書店経営者。趣味は、合気道、遊書。 著書は「小さなお店でガッチリ稼ぐ法」ほか。
URL: http://www.oosaki-k.com/

地図で戦場を俯瞰する

 ある地方の塾から、生徒募集に関する相談がありました。駅前の大手進学塾が、テレビや新聞広告で大々的に宣伝を始めたので、生徒が集まりにくくなったとのこと。

 訪問する前に用意していただくものをお願いしました。それは、塾生の住まいの場所をプロットした周辺の地図。現在通っている生徒だけでなく、今までに来ていた生徒についても、年度毎に色を変えてプロットしてもらいました。地図には、近隣の進学塾の場所も記入してもらいました。今までのチラシ配布地域と枚数の一覧表とポスターの添付場所を示したものも用意してもらいます。

 これはまさしく戦う場所を俯瞰するということです。

強者の戦略はとらない

 地図を見るとその塾の周辺は、鉄道の線路、河川、道幅の広い国道などが入り組んでいました。生徒の住まいは、広範囲にわたり点在していました。

 チラシは、これまた広範囲にわたり配布されているのが分かりました。理由を聞くと、大手進学塾が広範囲に配布しているため、これくらいの範囲には新聞折込は必要との考えでした。これを競争相手に合わせる「ミート戦略」と言いますが、これはランチェスター戦略でいう強者の戦略にあたります。弱者は決してとってはいけない戦略です。

自分が強く地域を把握する

 ここで弱者がとるべき戦略は、「局地戦」です。まず地図上の鉄道や河川、国道に太い線を引きます。これらは地域を分断するものだからです。

 次にプロットの数を見てみると、他よりも多い場所が必ずあります。一番多いのは、塾の近くです。次には、分断された中でも塾に来やすい道や橋、踏切などがある地域。オピニオンリーダーがいる地域。これがこの塾の強い場所なのです。しかし、ポスターの添付場所を見てみると、その地域には少ないことが分かりました。

勝てる場所を探す

 「局地戦」とは、限られた範囲での戦い方をいいます。弱者は広い範囲で戦っては戦力が分散してしまい、ますます勝つ見込みがなくなってしまいます。逆に狭い地域では、強者は強者たる力を発揮できないため、弱者にも十分勝つ可能性があります。

 まともに戦って勝ち目のない弱者は、勝てる場所を探すか、勝てる場面を作るしかありません。前者は、局地戦の市場で戦うこと。後者は局地戦の状況を作ることです。

経営資源を集中投入する

 この塾においては、地域的な面から、局地戦の市場で戦う手法が適切だと判断しました。現在および今まで塾生がたくさん来ていた地域に集中的にチラシを配布することにしました。

 そして、生徒の家の壁などにポスターを貼ってもらうようにお願いしました。また電柱広告など有料の場所も、その地域に集中して配置しました。

戦うジャンルを作る

 地理的な面だけでなく、商品面や顧客層で細分化し、ある限定されたジャンルでの局地戦の状況を作るやり方があります。

 商品面での細分化は、いずれかの科目の中でもさらに細分化されたジャンルに力を入れることで、その分野においては1番であるとするものです。

 たとえば、理科の実験というジャンルに強いイメージを付けることで、我が子を理系に進めたい保護者の興味を引き付けることができます。

 顧客層を細分化すると、単に年齢だけでなく学力差や所得階層別、目的別で分けることができます。目的別でとらえると、我が子は競争の激しい進学校に進むのではなく、じっくりと一つのことを学べる学校に行きたいという保護者もいます。でも周りの塾がどこも進学校への合格を目指すところであれば、こういった人にとっては選択することはできません。そうでない塾があってもいいのです。

顧客層で細分化

 塾といえば有名中学、高校に入ることを目的とする進学塾が主流かと思われます。しかし、学校の授業についていけず、進学どころではない生徒がいるのも事実です。生徒の学力レベルで言うと、中くらいから下のレベルの生徒です。今や少子化の影響で高校全入の時代なので、高校に入学することは可能です。でも高校に入ってからも授業についていけずに、中途退学する生徒も存在します。

 有名高校への進学を目指すのではなく、毎日の学校の勉強を補習する補習塾があります。補習塾は、生徒の学力レベルを細分化しABCDと分け、Cのレベルを中心とした限定範囲を選択しています。顧客層での細分化の一例といえます。

商品で細分化

 私は以前、英語教室を経営していました。そこでは、英語検定試験の合格と英語スピーチコンテストの参加を目的としていました。もちろん通常の英語の授業は行います。それに加えて、英検の勉強、スピーチの練習を織り交ぜていました。

 入学年次により多少の差はありましたが、小学生で英検5級や4級、中学卒業までに、3級や準2級を取得している生徒が大半でした。

 またスピーチコンテストは、教室内大会を毎年9月に実施していました。全生徒が一人ずつ壇上にあがり、丸暗記した英文を暗唱するというものです。その年の春に入学した生徒も長年在籍する生徒も一緒に発表します。保護者の子どもを見る目がハラハラドキドキしているのを感じました。

“すべての人に満足”はできない

 私の教室は、英検取得とスピーチという2つを前面に押し出した宣伝をしていました。そのため、それに魅力を感じてくれる保護者や生徒が集まってくれました。

 学校の英語の成績をあげたいだけという生徒には向いていなかったかもしれません。でもそれでいいと思っていました。すべての人に満足してもらうことなどできないと思ったからです。

細分化の成果

 私の英語教室の場合は、商品を細分化して、英検とスピーチという限定したジャンルでの局地戦を戦いました。周辺には、そういった教室や塾がなかったため、保護者や生徒にも喜んでもらうことができました。また、両方ともそれなりの成果を上げることができました。スピーチコンテストは、地元テレビ局や新聞社がコンテスト当日取材にきてくれました。全体のレベルも上がってきて、全国大会で小学校中学校それぞれの部で優勝する生徒もでてきました。まさしく、商品を限定して指導した成果かもしれません。

 公園を散歩していた時、ブランコに乗っていた女子中学生が突然、英語を話しだしました。近くにいた友人が「どうしたの?」と聞きました。するとその生徒は「英語教室で覚えたのが勝手に口から出てくるねん」と答えていました。これも成果の一つかもしれません。

どこを強調するか

 顧客層や商品を、限定することをためらう人がいます。それ以外のものを切り捨てると考えてしまうからです。でも決してそうではありません。どこに力をいれ強調して宣伝するかということです。
私の英語教室でも、通常の英語授業は行っていました。授業をしっかりと受けていれば学校の成績が上がるようになっています。定期テストや実力テストにもよい成績をおさめるようになっています。その上で、英検にも合格し、スピーチの訓練もしていたということです。

 もしこれをせずに、英語教室として宣伝していたならば、なかなか他の教室との違いを出すことができずに、生徒募集にも苦戦したに違いありません。

 前回も最後に話しましたが、「良さよりも違い」これこそが究極のキーワードになっていることに、今一度気がつかないといけないと考えます。

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