事業は二つの柱から成り立っており、子ども、保護者、教職員に寄り添い、保護者と学校との問題を迅速かつ穏やかに解決していくことを目指している。
ひとつは平成20年7月に設置された学校問題解決支援チーム。『保護者対学校』の状況を改善しながら、互いの絆を強めることができるよう、第三者的な立場で保護者と学校の間に入り、解決に向け、取り組みを進める。具体的には教育委員会の要請を受けた専門家が、関係機関とも連携を図りながら、必要な助言や支援、対応プログラムの作成を行っている。現在、多様なケースに模索しながら、対処、解決へと進めている状態だ。
もうひとつはサポート会議。こちらは平成18年に設置されており、何よりも子どものことを中心に置き、生じた事案の早期課題解決を目指した事業を展開している。豊中市では、保護者や子どもが学校や子どものことで相談できる各種相談窓口を設置している。それらの相談の中で、解決が困難な事例が生じたときに課題の整理をし、専門家によるさまざまな視点からのアドバイスを受け、必要に応じて、子どもや保護者のケア、課題解決に向けた学校支援も行っている。事案の中には、学校が保護者の思いを受け止めつつ、適切な対応を継続することで、保護者との信頼関係を再構築し、子どもが充実した学校生活を送ることができるよう課題解決に向かった事案も出ている。
子どもが充実した学校生活を送れるために
教育委員会では、相談を持ちかけてくる親を、モンスターペアレントとは認識していない。学校と保護者のどちらもが、子どもが健康的で楽しく、充実した学校生活を送れることを望んでいる。だが、少数の子を育てている親と、大人数の子を指導する学校とでは互いの立場が異なるために、意見が食い違うこともある。その立場の違いから行き違いが生じ、互いの関係に溝ができることもある。そこにマスコミの造語であるモンスターペアレントの言葉が入り込み、問題を大きくするのだ。
豊中市教育委員会学校教育室で、この事業を担当する課の職員はこう語る。
「教育相談総合窓口に電話相談される保護者の中には、『私はモンスターじゃない』『こういう相談をするとモンスターと思われるのか』と言われる方もおられます。そう思われることの怖さに、相談できない親もおられるでしょう。しかし、その多くが学校と保護者が、子どもを中心にして理解し合うことができれば解決できる問題です。解決した方の中からは、相談して良かったとの声も上がっており、今のところは非常に有効に事業が機能していると言っていいでしょう」
一方で、学校の対応力向上に向けたリーフレットの作成も、徐々にではあるが進められている。保護者からの相談の中には、学校の初期対応のまずさから、問題が大きくなったと考えられるケースも少なくない。子どものことで悩み、疲れた保護者の相談に丁寧な対応が求められる。そのため、教職員を対象とした研修や事例検討会をもつことも必要である。学校の対応力が向上すれば、モンスターペアレントの名前が消えるほどに、問題解決が進むだろうと期待されている。
学校と保護者の関係は、子どもがいる限り必須である。そのため、一度両者の間で問題が起これば、保護者が子どもを預けることに不安を覚えるだけではなく、教員にとっても、より良い指導が継続できる状態であるとは言いにくくなる場合が出てくる。そのときにそのどちらの立場でもない第三者的な解決支援機関が働くこと。これは、全国的に期待されていることであり、そのために豊中市の学校問題解決支援事業は、現在、多くの地域や機関からその動向を注目されているのだ。 |