河野(以下──) 今回は、千樹会でもお世話になっている加納先生です。よろしくお願いします。
加納 よろしくお願いします。
── 率直な疑問ですが、グリーンシートに上場している大手塾の塾長先生が千樹会という生徒1000名を目指すある意味、小さい個人塾の集まりに参加されている理由というのは
何でしょうか?
加納 皆さんは、塾を生徒数などで大手とか個人塾とか言いますが、結局、塾は人だと思っています。どんな大手塾でもそこで働く社員に熱意がないと子どもたちを伸ばすことも育てることも出来ません。千樹会の皆さんは、とにかくその熱意があります。塾の原点は、熱意です。それと、今のマーケットが厳しいせいか、個人塾の先生方の広報企画についても斬新です。こちらこそいろいろと勉強になっています。
── すると、社員教育にもかなり力を入れているということですか?
加納 そうです。今、私の強い想いを全て教育マニュアルに落とし込んでいます。ただマニュアルと便宜上呼んでいますが、通常見られる行動マニュアルではなく、具体的に何をどう指導すれば、生徒が伸びるのか、アタマでは、なく行動で体得する研修テキストを作成しているのです。行動指針であったり、アイ・ラーニングとしての方向性だったりします。
── 先日、私が見せて頂いたものですね。
加納 そうです。河野先生から見て、どう思われましたか?
── いやぁ、かなり細かく書いてあるな?という感じですね。確かにマニュアルというよりも加納先生の塾に対する想いとか人生の目的とかが強いですね。あと、個人塾から組織塾へ脱皮する際に、このようなマニュアルは必須ですが、ここまで自分の哲学やスキルを文字へ落としこんでいるものは見たことがないですね。
加納 やはり塾は人ですし、人が商品でしょう。塾で働く先生が、幸せでないと、生徒たちもハッピーになりませんからね。そして社員には、全員幸せになってもらいたいと思っています。
そのためには、生徒を伸ばすことも大切ですが、社員一人、一人が伸びていくことが大事なのです。もっと社員が、やる気を高め、育つ風土のある組織を作りたいと思います。
※アイ・ラーニングは、沖縄・浦添市を中心とした大手塾です。もともと大阪出身の加納先生が沖縄に魅せられ、そこに塾を作ったのが始まりです。そのためか、社員・塾への想いの他に沖縄への想いも話の端々に出てくるのが印象的です。塾は、ローカルな地場産業です。そのような業界に身を置いている塾長たちが、どこまで地元を愛しているのか?そして、
どこまで地域の人たちに必要とされるか?と考えると個人塾は、まだまだ成長するポイントがあるような気がします。
── 先日、私の塾に来て頂いた際に講師の役割とかアイ・ラーニング(トリプル・アイ、EGGなど)での講師研修のお話をして頂いたのですが、その話をまた是非、聞かせてください。
加納 そうでしたね。先生の塾のスタッフの皆さんには評判良かったですか?
── えぇ〜、それはもちろん。私の塾がある田舎ですと、なかなか他塾の先生に来て頂くことが難しいですし、何より他塾の塾長先生の話など聞けないですからね。
加納 そうですか。まず、講師に関しては、とにかく生徒に「良い影響」を与えられる人になれ!と言っています。 子どもというのは、大人から影響を受けます。大人の子どもに対する態度や言葉を変えるだけで子どもは大きく変わります。それを「善のストローク」という表現で伝えています。積極的・肯定的な表現を使うということですね。また成績を伸ばすことは、講師として最大の課題の1つでもあります。私の塾では、講師研修をしていて気付いたことがいくつかあるのですが、その1つは、授業がうまい講師というのが成績を伸ばしているとは限らないということですね。
── その話は良かったですね。
加納 結局、授業を「伝える技術」と考えた時に、伝えただけで満足してしまう講師が多かったということです。 やはり主役は、「生徒」です。生徒がキチンと受け取ったかどうか、つまりそのチェックが重要なのです。
── よく言われる plan⇒do⇒see ですね。
加納 そうです。つまり講師というのは、それら全てが出来ないと成績を伸ばすことが出来ません。またもう1つ、子どもたちからして魅力的な大人でないと、やはり言うことをきいてくれません。魅力的な先生は、言っていることとやっていることが、あまり違いがないことを生徒たちは、よく知っています。生徒の目は、厳しいですから。
── それはそうでしょうね。何を言うかよりも「誰が言うか?」が重要ですね。
加納 そうです。講師も生徒も魅力的な人間になってもらう!これが私の願いの1つです。そして出来ればアイ・ラーニングに関係しない沖縄の皆さんにも、そうあって欲しいと願っています。そのため、毎週地元の琉球放送ラジオの番組で沖縄のご父母に教育メッセージを担当しています。また、生徒たちを励ましています。明日も、朝から電話で出演です。
── あぁ〜、ならあまり遅くまではインタビューできませんね。それでは、魅力というのは、どのようにして作られるとお考えですか?
加納 まず、何ごとにも本気であるということです。目先の1つ1つ、どんなことでも100%の力を入れてやらないとダメです。 手を抜く、楽をすると魅力が薄れますし、各自の能力も下がっていきます。私の塾では、講師研修が毎週2回ありますが、毎回、私が直接、先程のマニュアルを持って講師たちに直接指導します。塾長が本気で講師と向かい合っていると講師も本気になってくれます。そして授業では、講師が本気でやるから子どもたちが本気になってくれるのです。
それに、優秀な人材の厚みが売上の厚みになりますね。やはり塾の先生は、人材力ですよ。最近は、新人社員から育てるようにしています。女の優秀な先生が育つといいですね。特に、これからの塾の先生は、女性の優秀な先生がいるのといないのとでは、かなり大きな違いがあります。今年は、再度研修システムの全般を見直し、指導知識と指導スキルが一緒になって身に着かなければ、指導や授業力がついてきませんからね。
── なるほどですね。後、合宿などの話も非常におもしろかったのですが。
加納 アイ・ラーニングでは、合宿を年に6回ほど行います。それぞれテーマがありますし、内容も非常に厳しいものです。 そこでは、勉強もそうなのですが、教室対抗なども行い、とにかく講師と生徒が一丸となって頑張るという仕組みを取り入れています。
── 話を聞くだけで大変だな?と思いましたね。
加納 確かに大変ですが、その辺りは講師も理解してますので手際良く準備します。ただ合宿中も校舎は開いてますので合宿所に泊まる講師、合宿所に通う講師と分けています。教室の旗なども作ってかなり盛大ですよ。
── 今度、時間があったら見学させてください。
加納 ぜひ、ぜひ。河野先生が見てもかなりだなと思ってもらえると思います。
── 本日は、お忙しい中、ありがとうございました。
加納 ありがとうございました。これからも、沖縄をもっともっと盛り上げるよう頑張ります。
※加納先生は、大手になった今でも、原点の気持ちを忘れまいと多くの若手塾長と積極的に交流をお持ちです。塾に対する情熱、バイタリティーは、若手塾長にも負けません。今回は、大手塾の塾長先生に登場して頂きましたが、大手塾も、最初は本当に小さな個人塾からスタートしていること。そして大手になるには、仕組みや経営も大切ですが、それ以上に自分の哲学であるということがお分かりになるかと思います。ビジネスは、哲学を具象化したものです。そしてそれをどんどん形作っていくことこそが、醍醐味かもしれません。個人塾との付き合いが多い私にとっては、まさに自分の哲学をどんどん形作り、地域のため、社会のために、もっともっと貢献してもらいたい塾長先生の友人がたくさんいます。原点を忘れず、自分の情熱・哲学を絶やさず、仲間を作り、もっともっと貢献する…そのような人が、これからどんどん増えていく気がします。
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