日々の学習習慣
世の中の親御さんは、みなさんこう思われているのではないでしょうか。「勉強することが習慣になればいいのに」クラブ活動やテレビゲームは習慣になっても、勉強はなかなかそうなりにくいようです。でも、学習の習慣化をしてくれる塾があったとしたら、そういったところには入学させたいと思います。勉強を教えてくれると同時に、学習の習慣をつけてくれるというのはありがたいことです。
多くの学校で、朝の10分間読書が実践されています。朝礼の前に10分間だけ好きな本を読むことで、読書の習慣をつけさせようという狙いです。読書が大切なのは言うまでもありません。でも読もうとしないのです。だから毎日少しずつ読書をさせることで、本を読むことの抵抗感を少なくしていこうということです。効果は上がってきているようです。
毎週土曜日の始業前に、英単語の小テストをしている私立高校があります。これは、テストが習慣ということではなく、テストのために日々英単語を覚えることを習慣づけているということです。動機はどうであれ、たくさんの数の英単語を覚えてしまう習慣づけは学生にとって必要不可欠なものです。
江戸時代の寺子屋では、論語などを子供に声を出して素読させていたようです。意味がわかるかどうかという以前に、論語の世界にどっぷりとつかるという意味もあったようです。いわゆる“門前の小僧習わぬ経を読む”ということです。これも一種の学習の習慣化です。
行動習慣は学習にも影響がある
塾における生活行動の習慣化も魅力の一つです。授業の始まりや終わりに大きな声をだしての挨拶、勉強するときの姿勢、脱いだ靴を揃えることなどは、入塾当初に教え込み、繰り返しすることで習慣化します。すると家や外出先でも脱いだ靴は揃え、挨拶ができ、はっきりとした声で「ありがとうございます」が言えるようになります。
こういった行動習慣は、確かに入塾させる本来の目的ではありません。目的はあくまでも学力をつけることや希望する学校に合格する実力をつけること。では、机に向かって、授業を聞き問題を解いてさえいれば、学力がつくのかというと必ずしもそうではないようです。
始業の挨拶で気持ちの切り替えができ、声を出す事で、先生からの質問にも声をだして答える準備を身体がしているのです。坐る姿勢も背筋がピシッと立っているから、頭がスッキリとして、先生の講義のポイントが頭に入ってきます。学習をするというのは、総合的に考えていかなければならないのかもしれません。
トレーニング・セミナー
私が、自分のセミナーで実施している効果的な学習の習慣づけをお話します。私の場合は、受講者は経営者や経営幹部など大人の方です。でも、彼らは何十年間も机に向かって勉強していないということからすると、塾が対象としている子供たちよりも、学習に対しては不慣れかもしれません。そういった人たちに2時間以上退屈をさせずに講習をして、なおかつ効果を上げている方法です。私はこのセミナーを“トレーニング・セミナー”と呼んでいます。
講師の話をノートに取る習慣
私がためになる話をしていても一向にメモを取ろうとしない人がいます。「頭にしっかりと入っているのだからいい」といわんばかりです。しかし、いくら記憶力が優れた人でも、時間とともに記憶は薄れていくというのは常識です。“エビングハウスの忘却曲線”というものがあります。ここでは、人は話を聞いた1時間後には56%忘れてしまうのだそうです。そして、1日後には74%。1ヶ月後には79%を忘れてしまいます。忘れることを防ぐには、すぐにメモをとっておくこと。するとメモを見ることで話を思い出すことができます。メモは非常に重要です。
しかし、ノートを取りなさいとは教えても、ノートの取り方を教えていない学校や塾は多いようです。ノートの取り方には、さまざまな方法があります。人間の能力や性格が違うように、ノートの取り方も人によって違って当たり前です。
左脳系の人は、箇条書きが得意です。講義の内容を、項目をつけて、内容は短く区切って箇条書きにしていきます。後で見たときに、要点が絞られており、見やすいノートになっています。
一方、右脳系の人は、箇条書きにすることは苦手です。マインドマッピングや図、チャートなど視覚に訴える形のノートが得意です。これらは少し訓練すれば書けるようになります。
私は、以前中学生に教えている時、予習や復習と授業の時に取るノートを一つにした“ミラー方式”というノート作成方法を考案しました。これも大変学習効果が上がり、成績アップにつながりました。
今回は、それぞれのノート作成方法については紙幅の関係から詳細はご紹介できませんが、機会があればお話しします。
重要度を考えながら話を聞く習慣
私はセミナーで、会社に帰ってすぐにできることには“A”を、少し工夫を凝らしたらできることには“B”を、すぐにはできないが面白いから頭にとどめておきたいことには“C”をレジメに書き込むように言っています。会社に帰ってから何からしたらいいのかの行動の重要度を示しているのです。これを“ABC学習法”と言っています。
授業においても、先生は重要個所には力を入れてお話をされます。でも生徒がそれを受け取っていないと、先生の努力は宙を舞ってしまいます。重要度をしっかりと区別をする印をつけてマーキングしながら話を聞く習慣があると、帰宅してからの学習に役立つだけでなく、頭の隅に確実に残ります。
また塾や学校でもよくされていると思いますが“質問学習法”があります。脳は質問されるとその答えを探し始めます。質問にはすぐに答えを出さずに、しばらく答えを探させるという行為が重要です。これはコーチングやカウンセリングでも用いる方法です。考える習慣をつけさせるのです。
身体を使って話を聞く習慣
11月号で書きました“売上構造表”の各項目を空欄にしておき、話を聞きながら自分で書き入れてもらうという、穴埋め方式などは、身体を使ってやってもらう学習方法です。人は空欄や虫食いという未完成のものは、完成させたいと思う心理が働きます。手を使って空欄を埋めるという作業をさせることで、脳の働きが活発になります。
人は身体を動かさない状態が続くと動き出すのが億劫になります。初動にエネルギーがいるのです、ちょうど車の発進と同じです。でも始終動いていると、次の動きにも素早く動くことができます。身体は常に動かすという習慣をつけないといけません。
身体を使って話を聞く学習方法には、他に重要個所を一つずつカードに書いて日々持ち歩く“カード学習法”、ノートや教科書に色分けと大きさ分けをしたポストイットで重要度を区別する“ポストイット学習法”などがあります。
人は小さなことを続けていくことで、大きな成果を出すことは知っています。でもなかなか今までにない習慣をつけることは難しいので、やることに消極的です。しかし、一定時期、強制力をもってさせることにより、習慣になってしまいます。習慣化されると自分で勝手に動き出すものです。
学習習慣や行動習慣。これらをつけさせてくれる塾は、親にとって大変ありがたい存在です。学力をつけるというのは、塾として当たり前です。それがいくら優れたものであっても、それだけで集客することは難しいと考えます。これからは「良さ」より、「違い」を訴えていかなければいけません。 |