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2009/3 塾ジャーナルより一部抜粋

天神で「0対16の個別指導」を実現
困難極める人材確保より地方で活きる教材確保を

  蒼龍塾(三重県亀山市)塾長 坂本 昌保さん  
     
 個人塾経営者の悩みのひとつに「人材の確保」がある。ようやく見つけた優秀な講師も、泣く子も黙る大手の時給にあっさり宗旨変えされるケースは決して珍しくなく、地方では人材を見つけることさえ難しいといわれる。ならば発想を転換し、人材よりも使い勝手の良い教材を確保したのが、三重県内で蒼龍塾を経営する坂本昌保さんだ。一斉授業を行う塾長と個別指導型の教材の“二人三脚”が生徒の成績を上げている。

会社員を経て開塾
プラスマイナスそれぞれの誤算

 鈴鹿山脈の南東麓、東海道五十三次を江戸から数えて47番目の関宿は、歴史的建造物が当時の面影を今に伝える観光スポット。蒼龍塾はそんな一帯から15分ほど北に入った新興住宅地にある。塾長の坂本昌保さんは、街道を歩き、この地を選んだという歴史好き。塾舎には、京都の醍醐寺の僧侶が揮毫(きごう)したという由緒ある看板に、塾長のこだわりがうかがえる。

 「できれば、関宿の古い街並みに開塾したかったが、送迎の車が出入りすることを考えると現在の場所になった」と少し残念そうに話す坂本さんだが、開塾後、塾周辺には新しい団地が開発され、結果的にベターな選択となった。

 開塾は26年前。それまで塾講師を派遣する企業や教材販売会社で、一通りの事務と営業経験を積んでいる。「人見知りする性格」と自己分析しながらも営業職に就いたのは、当時から開塾する目標をもっていたからだ。塾経営に営業的センスは不可欠と踏んでのことだが、肝心の営業成績のほうはあまり良くなかったと率直な人柄を見せる。その後も20代最後の歳まで学校給食の食材配達の仕事など、ご本人いわく「肉体労働」にも就きながら体力もつけた上で、30歳の起業となった。

 営業で辺地を回っていたとき、近所の子ども4〜5人が1台の車に乗り合わせ、市街地まで通塾する光景を目にした。大手が採算面で敬遠する場所も、個人塾ならやっていけると現在の立地で開塾することに迷いはなかった。ところが、思惑とは裏腹に、当初集まった生徒は6人。後に知ったことだが、同地区では看板を掲げずに営業する塾が数件あったのだ。「地元の人だけが知っている」という、古い街ならではの誤算だった。それでも口コミで2年目には30人、3年目には約50人と順調に生徒数を増やしていった。

 小5〜中3までを対象に「楽しく学べる塾」を目指し、一時は160人の生徒を1人で担当。「体力的にはきつかったが、生徒が多いと質問も多く、活気づいて、授業はやりやすかった」と振り返る。

人件費 VS パソコン教材「天神」

 生徒数が順調に増えていった要因は、地域に小・中学校が1校ずつしかないため、塾長1人でも、きめ細やかな指導がしやすかった点にある。もっとも、開塾当初は英語と数学の一斉授業のみを行っていたため、講師を雇い入れる必要を感じなかった。

 だが、主要3教科の授業を望む生徒の他塾への「流出」が気にかかった。とはいえ、3教科の授業のために地域で人材を探すことに困難を感じていた。見つかったとしても継続して勤めてくれるかどうかという不安もあった。そんなとき、坂本さんのお子さんに教材販売会社から1通のDMが届いた。幼児から高3までの全教科をカバーするパソコン教材「天神」のDMだった。興味を持った坂本さんはさっそくデモンストレーションを依頼した。

 「実際に見てみると、教材は教科書準拠で使いやすく、塾でも使えるのではと思った」と、さっそく導入を検討。1ヵ月の無料体験を試みると、生徒の食いつきは予想以上によく、今では90%の生徒がこの教材を利用している。それまで英語と数学に苦手意識を持っていた生徒も、社会や理科で学習に対する興味を掘り起こされ、それをきっかけに全教科の成績を上げていく生徒が少なくなかった。

 坂本さんはこうしたきっかけを1人でも多くの子どもにつかんでほしいと16台のパソコンを導入。「それで儲かっているわけではないが、ペイはできているし、他塾への生徒の流出を食い止めている」と話す。

 導入したのは8年前で、その間、3教科を担当する講師の人件費と比較すれば、一概に高コストとは言えない。「1対1の個別指導」を強調する塾は多いが、蒼龍塾では「1対1」のメリットはそのままに、コスト面で「0対16の個別指導」を実現していると言える。その様子を見学しようと東京などの都心部はもちろん、石川県や三重県の郡部からも見学者が訪れる。「教材任せで大丈夫か」という質問には、「監督者を常駐させるのが望ましい」と答えているという。

学力よりも危ぶまれる 学習意欲の低下

 坂本さんはパソコン教材の良さを活かしながらも、決して頼りっぱなしではない。「パソコンに向かっているだけで、勉強した気になっている生徒は伸びない」と、家庭学習のためのプリントを併用することを欠かさない。

 一つ興味深いエピソードがある。教材の導入当初、「パソコンだけで何の勉強ができるのか」と疑問視する保護者がいた。が、子どものほうはと言えば、先入観なしに黙々と課題をこなしていく。「天神」は間違った答えを選択するとブザーが鳴る仕組みになっている。これに躊躇せず、坂本さんが驚くほどの集中力で課題を進めた生徒は、小6の入塾時、成績でも性格面でも目立たない生徒だったが、中1の終わりには学年トップとなった。また、「三重県の実力テストの全国偏差値は49程度だが、うちでは52をキープ。国語の成績が最も上がっている」とも。

 「どちらかと言うと、一斉授業で当てられて、上がってしまうような生徒にとっては、自分のペースで学習を進められるパソコン教材がいいようだ」と分析する。全体で同じレベルを一斉に学ぶ「学校システム」は、適っている生徒と苦手な生徒がいる。苦手と感じている生徒が、学校とは違うシステムで学習意欲を持つことができるなら、坂本さんは1人でも多くの生徒にそのきっかけをつかんでほしいと考えている。

 「ここ10年くらいの間に、中3になってから、一念発起して成績を急上昇させる生徒は少なくなり、中学の3年間をかけてコツコツ積み重ねてやっと成績に結びつく生徒が大半。今の子どもたちは壁に当たれば、諦めも早く、学力より学習意欲が低下している」という。そんな中で、坂本さんは、子どもたちを励ます一言や自信に結び付く授業形態を提供したいと考えている。

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