■他人を雇うということ
いよいよ最終回となりました。前回までに、10人、30人、60人の壁と100人まで
にぶつかる壁についてお話してきました。今回は、100人を越えるには、塾長にしかできない仕事とは?ということについてお話したいと思います。
先生1人で教えるには、生徒数100人というのは、限界に近いものです。
とすると、講師なりスタッフなり、いよいよ他人を雇うということが必要になってきます。
100人を越えるポイントは他人をどう使うか?ということに他なりません。
個人塾は、塾長の魅力で生徒を集めているわけですので、ここに他人が入ると、
生徒や保護者からクレームなどが来ないか?と心配する塾長も多くいます。
確かに塾長の個性が強い場合、そのような問題が起こることはありますし、生徒も講師と
塾長であれば塾長に授業をしてもらいたいと思っているものです。
しかし塾長も体は1つですので、例えば並行して2クラスの授業があれば、
どちらか1クラスにしか入れないのは自明の理です。
となると、他人を入れても不満が出ない仕組みをつくらなければならないことになります。
この不満は、感情的なもの、物理的なものとありますが、これをきちんと分けて対応する
ことが大切です。
例えば、物理的なものとは、数字で表すことが出来る「成績」や「実績」などです。一方、
感情的なものとは、「分かりやすい」とか、「相手にしてもらっている」などです。
これらを他人でも解決出来るようにシステム化していくことになります。物理的な要素は、
まず塾長の授業テクニックなどを分析し、それらを紙ベースに落とし込みます。出来れば、それぞ
れにおいてA4で1枚程度にまとまっていれば、使いやすいと思いますが、自塾なりに
使いやすい形を考えて作っていけば良いと思います。
私の塾では、授業に関しては、白板の使い方と、各科目毎の進め方(テキストの使い方)などが決められています。また、小テストのタイミングや、不合格者の対応なども決めら
れています。これらのベースは、私が授業をしていた時に、どう動いていたかを分析して
書かれたものです。
そして小テストの不合格者は、何度かの再チャレンジがありますが、それでもダメな
ら、全て私が直接対応する仕組みにしています。
これは、感情的な問題を解決するにも役立っています。
小さい個人塾では、塾長がどこまで面倒を直接見てくれるのか?ということが大切になります。生徒が増えると、塾長の密度は下がるものですが、塾長が出ていかなければならないポイントでは出ていくことも大切です。
また心理的な配慮から、面談は、私だけで授業をしていた時よりも、数多く入れています。今では、面談そのものは、教室長が行いますが、何かあれば、直接、塾長へメール等で
保護者から連絡をもらえる仕組みを作っています。
とにかく他人を使っても、以前と「効果」は変わらないように、物理的にも心理的にも
配慮しながらシステムを構築していくことです。
■将来への種まきをする。
すると塾長の時間が多少なりとも空くわけですが、この時間の使い方で今後の業績が大きく変わることになります。大手塾の塾長ですと、様々な会合や、資金繰りに時間を割かれ
るのでしょうが、個人塾や中小塾では、そんなことはあまりありません。
その時間で塾長がしなければならないことは、ただ1つ・・・「将来の売り上げ」を作る
ことです。
今の売り上げは、過去に塾長が蒔いた種を育て、それを現場でスタッフの皆さんが一生懸命、あとを継いでやってくれているわけです。しかし、それが5年、10年と同じことを
してもやっていけれるかどうかと考えれば、答えはNOです。
塾長は、将来に対してのビジョンを持ち、種を蒔き続けなければならないのです。
塾長が蒔く将来の種は、塾によって異なるでしょうが、常にアンテナをはり、時代を読ん
で、来るべき将来に実をもたらすものでなくてはなりません。
実は、個人塾・中小塾には、この力が欠けているのではないか?と感じています。
大手塾やコンテンツ会社の作ったものを無意味に検証もせずに導入し、使えない機材を多く持ってはいないでしょうか?ちょっと流行ったFCやコースを導入したが、結局は止め
てしまったということはないでしょうか?
これらは、全て塾長の意識の弱さに原因があります。
時代を読むということは、常に意識をピンと張り詰めておく必要があります。
現在のちょっとした変化を感じられるようにしておかなければならないのです。
また儲かりそうなものに簡単に手を出しても成功する確率は低いものです。自塾の生徒のためになるかどうか、それが自塾の生徒に本当に必要かどうか・・
つまりは、究極の生徒の姿を常に頭に入れて物事を判断しているかということが、何より
も大切です。
今年は、ゆとり教育の問題からか、大きく生徒数を減らす塾が増えました。私の分析では、
中学受験がある地区の塾は、一般的に好調、もしくは横ばいですが、地方は、どの塾
も、軒並み生徒数を減らしているようです。
塾長のもう1つの役割は、このような危機に直面した際に、手を打てるかどうかです。
意識を持って時代を読んでも、手が打てないようでは、お話になりません。
順調なときには、スタッフに任せていても塾は回るでしょうが、現在の状況はまさに
塾長が出ていく非常時でもあります。
塾長のリーダーシップを問われているときです。
生徒が増えていくと、それだけ責任も増えていきます。塾長の器が広くなるに連れて生徒
も増えていくものです。
日本で生徒数が1番多い塾長は、日本で1番苦労するものです。生徒を増やすということの責任を深く考え、今後も素晴らしい教育を多くの生徒のために行っていって下さい。 |