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2008/11 塾ジャーナルより一部抜粋

調査結果が示す 塾の実態と未来
文部科学省 「平成20年度 子どもの学校外での学習活動に関する実態調査」発表

     

一部地域に限った情報や評価は手に入るが、日本全国を網羅した業界の情報は手に入りにくい──、というのはどの業界でも同じ。その声を受け、弊社では、平成7年に都道府県別学習塾数やその他文部省のデータを基に特集を組んだ。その後、10年以上が経ち、業界は様変わりしたのであろうか。

今回、文部科学省の「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査」が発表されたと同時に、以前のデータと比較することで、現在の子どもの状況や業界の動向などを特集する。

人口減少しても横ばいの教室数
年々右肩上がりの通塾率

 平成18年に総務省より発表された日本の人口は1億2,775万人(概算値)。平成16年が1億2,779万人、17年は1億2,777万人と少子化の影響を如実に表すかのように、平成16年より緩やかな減少傾向が続いている(図1・総務省統計局より)。出生率も低下の一途を辿り、これに伴って、生徒数の減少による統合や合併、廃校となって消えていく学校も多い。一方で、学習塾の全国数は42,979(塾ジャーナル調査より)。極端な減少が起きていないどころか、平成7年度の調査で出た42,147という数値より約1,000近く増えたことになる。

 大きく数を伸ばしたのは、北海道の1,564件(平成7年度比較283件増・以下同)で、続いて沖縄の820件(197件増)、宮城の736件(144件増)と、地方の塾数が目に見えて増えている。逆に関東の中心部である東京は3,550件(334件減)、神奈川2,599件(60件減)、また、関西では大阪2,542件(424件減)、兵庫1,941件(137件減)と減少した。これは、大手塾の進出や後継者不足による個人塾の閉鎖や、業界内のM&Aなどの提携化が進んだためと思われる。

 この結果の内容を詳しく表しているのが、平成20年に文部科学省より発表された「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査」である。学校外で塾や家庭教師、通信添削、その他の習い事をしている生徒は、小学校〜中学校の各学年すべてで8割前後の数値を保っており、小学校入学と同時に校外での学習が当たり前のように浸透していることが明らかになった(図2)。その中でも、全国平均の通塾率は小学6年の頃には37.8%だったのが、中学1年で45.1%、中学2年で50.9%、中学3年には65.2%と過半数以上に達しており、小学校では習い事、中学校では塾という校外学習の形をとる家庭が多いことを示している。これを通塾率の経年比較(図3)で見ると、最も目立つのが小学1年。昭和60年から一度も下がることなく増加傾向にある。これは、小学校の教育に対して危機感を感じている新入学生の保護者や生徒が多いことを表している。実際、「通塾の過熟化の要因は」との問いには、学校の学習内容に対する不安を挙げた人が全体の66.5%、小学6年生の「塾に求める指導内容」は受験のための進学指導が33.8%と、ともに高い数値を出している。また、以前なら多かった算数(数学)や国語、英語といった主要教科のみの通塾率が減少。社会や理科を含む全教科での通塾率(図4)がアップ。これは、家庭教師・通信添削でも同じ傾向が見られており、公立校の学習内容に対する不安が、中学受験や校外学習率の右肩上がり傾向に加速をつけていることがわかる結果となった。

費用の高騰や犯罪率の上昇
通塾に対する不安は絶えない

 しかし、塾へ通うことによって生じる不安もある。そのひとつが、大きな経済的負担だ。同報告には、校外学習でかかる子ども一人あたりの平均経費が算出されている(図5)。それによると、平成19年度の塾・家庭教師・通信添削・習い事に関する一人あたりの平均経費は、小学校低学年で9,300円(昭和60年度平均6,400円・以下同)、高学年で13,300円(7,700円)、中学生で23,600円(11,000円)。ちなみに現在の公務員初任給を20万とすると、昭和60年当時の初任給は約12万。小学生の経費にかかる負担はそれほど変化がないが、中学生になると現在のほうが負担は大きい。また、学習塾のみで考えると、中学3年生では25,000〜30,000円かかると答えた人が最も多くなっている。

 これは、年齢が上がるごとに、単価の高い個別指導や、指導時間の長時間化など、より内容の濃い指導方法を選択する家庭が多いためと思われる。実際、学習塾をやめさせた原因や通塾に対する不安として「塾の経費が家計を圧迫した」が挙げられているほどだ。特に、中学3年の保護者の30.1%が費用の高さに胸を痛めており、子どもたちも「月謝で親に負担をかけている」と30.2%の生徒が答えている。長引く不況が子どもたちの学習にも影を落としていることは見逃せない現実である。

 一方、最近の犯罪の低年齢化や被害者年齢の低下から、通塾の行き帰りの心配をする保護者も多い。ただし、これに関しては、保護者による車での送迎や塾側の送迎車の設置など工夫が凝らされており、不安要因としては中学生で21.3%と高いものの、平成5年の32.8%と比較して、かなり低下していることがうかがえる。

 また、子どもたちの健康に対する不安も今後の問題点のひとつである。学習塾から帰宅する時間は、小中全体で21時以降20.0%、22時以降23.0%。子どもの「塾が嫌いな理由」でも、「疲れるから」が小学校高学年から中学生では62.7〜72.8%と高い率を占めている。この他にも「家族との触れ合いが少ない」「遊ぶ時間がない」「睡眠時間が短い」「生活習慣が乱れた」などが挙げられており、どのようにこれらの問題を解消するかが問われている。

学校の授業といかに共生するか
公立校との連携に期待

 このように、教育改革以降、信頼を失う傾向にあったと思われる公立校の指導だが、東京都や大阪府のように塾との連携に向けて動き始めようとしている地域もある。実際に塾と連携し、校内で大手塾の人気講座を受講できるという通称「夜スペシャル(夜スペ)」を導入した杉並区の和田中学では、成績上位者を対象とした有料の講義であるということで物議を呼んだ。しかし、今回新たに大手家庭教師派遣業者と手を組み、成績下位生徒のフォローを実践。再度注目が集まっている。和田中の前校長である藤原和博氏は、この実績が認められ、大阪府の政策アドバイザーとして特別顧問に招致。早速、府内の市立池田中学校で無料の夜スペを提案し、9月より実践している。

 大阪府は今年度行われた全国一斉学力調査結果で、小6・中3という受験年齢の生徒の成績が全国平均を大きく下回ったこともあり、今回の夜スペでの塾との連携が、今後の成績にどう影響してくるか、大きな期待が寄せられている。

 夜スペなどに関しては、「特定地域の生徒だけがこのような優遇を受けることは許せない」との反対派の声もある。しかし、公立校全体が塾業界との提携を組み、ともに協力して日本の学生全体の学力向上を行うようになれば、反対意見も消えるだろうというのが推進派の考え方だ。生徒たちが学習塾を好きな理由として、「友人に会えるから」「教え方がわかりやすいから」「学校で教えてくれないことを教えてくれるから」などが、全学年で過半数を超えていることから考えても、夜に学校で塾の授業を受けるのが、生徒のモチベーションにプラスになることは容易に想像がつく。

 以前、本誌に寄稿していただいたPS・コンサルティングシステム代表・小林弘典氏の文の一節に、『新しい学校のコンセプトとしてわれわれが提唱するのは、「合校」である』とあった。基礎基本の指導は現在の学校で責任を持って行い、応用部分やその他の範囲は民間の塾に委ねるという、文字通り「公民合わせた教育」である。

塾と学校が共存共栄

 通塾経験がありながら、現在は通っていない生徒は、小中全体のわずか9.3%。生徒は一度通い始めたら、塾への依存度は急激に高まることがうかがえる。しかも、通い始めた理由には、「学校の授業だけでは充分な勉強ができない」が33.9%(中学3年)、塾に行って良かった理由には、「学校の授業がわかるようになった」が36.7%(中学全学年)と、公立校での指導の限界を示している(図6・7)。

 今後、このままさらに公立校の指導が悪化していけば、塾には追い風となるとは思われるが、子どもたちの正常な成長を願う業界としては、それは本意ではないだろう。通塾が過熱することで抱える懸念の中で、「学校教育が軽視される」ことを挙げた人は30.7%。生徒も保護者も、民間・公立双方の教育機関が共存し、指導してくれる状況を望んでいるのが調査結果に表れているのだ。

(本文図2〜図7は文部科学省、「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査」報告より)

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