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中学・高校受験:学びネット

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2008/1 塾ジャーナルより一部抜粋

8人の多角的提言

  教育改革が叫ばれている中で、民間教育機関としての学習塾が何をなすべきか。
学習塾と学校の“共存”というより“競争”でしかないのか!
8人のプロフェッショナルが提言する。
 
 
 

“ 学習塾の経営戦略 共存の視点から差別化を図る ”

田大進吉
現職財団法人日本数学検定協会理事長
日本理科学検定協会代表
数学教育の研究のためCAI私塾協議会を主宰、学習塾講師の資格化について今も研究を続けている。

大手の学習塾と学校の共存関係は
はっきりと観えている

マクロに観ると、生徒数の減少から特に私立の学校は生徒集めに熱心にならざるを得ない。そこで、大手の学習塾と学校が手を結ぶ共存関係ははっきりと観えている。

大手の学習塾は多くの都市部で、私立学校を擁する入試説明会を単独で開催している。これに対し、中小の学習塾は組合などを介して同様の説明会を開いているのが、一般的な構図である。

果たしてその逆のパターンがあるのか、私は未だ聞き及んではいない。つまり、学校が開く入塾説明会は存在し得るのであろうか。学校が、「こんな生徒が欲しいから、学習塾で思う生徒づくりをしてくれ」と、いうわけである。

中小の学習塾が、近隣の学校に自塾のよさや特徴をどれほど知ってもらっているのだろうか。

このような疑問からあるべき学習塾の経営戦略を考察したときに、私の数理的感性に訴えてきた解は、「スモールワールドから生涯学習へ」という道筋であった。これから大手の学習塾が自塾の講師に望む戦略の一つは、「スモールワールドの数理的概念とその実践であろう」と予想する。

果たして何人の学習塾の先生方が、「スモールワールド」という概念について理解しているのであろうか。

人の世界もネット社会も
スモールワールドになっている

全く知ることのない学生が一人いたとする。その学生と自分は一体どれほどの関係を有しているのであろうか。

この問題を象徴する例として、「エルデシュナンバー」というものがある。これは、数学の共著論文を介して、ハンガリーの数学者ポール・エルデシュと世の数学者たちの関係が何次の隔たりをもっているかを表す指標である。

ポール・エルデシュは20世紀に生きた放浪の天才数学者である。そこでエルデシュ本人を0として、エルデシュと直接共著論文を書いた数学者のエルデシュナンバーを1、次にエルデシュナンバー1の数学者と共著論文を書いた数学者のエルデシュナンバーを2としていくのである。

つまり、エルデシュナンバー5の数学者は、ポール・エルデシュと5の隔たりを持った数学者であることを意味する。私のエルデシュナンバーは4である。日本の数学者たちのエルデシュナンバーは多くは5や6である。

数学者の世界はわずか6次の隔たりで、ほとんどが網羅されてしまうのである。

実は、6という隔たり次数は数学者の世界だけに限られるものではなく、他の多くの世界の基数となるものである。ワールドワイドネット社会でも。

もちろん、学習塾業界の多くの集合体もこのようなスモールワールドになっていると見做される。

全く知らないある生徒と自塾の生徒の隔たり次数は、高々6次程度である。

生徒間の関係や先生間の関係には
強い関係と弱い関係がある

自分と強い関係にある人はいったい何人いるかと自問してみる。すると、3人とか4人の名が挙がる。そして、それらの強い関係にある人たちは多く似通った行動をとっている。食事会やゴルフ。かくして、強い関係にある人たちの活動や行動はいつしかマンネリとなり、外からは発展性に乏しい集団に観えてくる。

上図で、Aの集団(1,2,3)、Bの集団(1,2,3,4)、Cの集団(1,2,3,4,5)がそれぞれ強い関係で活動しているとする。あるとき、A3の人とC1の人がある種の弱い関係を結ぶと、たちまち、Aの集団とCの集団のいずれかは大きく飛躍する可能性が出てくるということである。

スモールワールドや強い関係、弱い関係などの複雑性の研究成果を学習塾の先生方はもっと深く知る必要がありそうだ。

弱い関係を活用する学習塾経営戦略を立てる

強い関係は先に指摘したように行き詰ってくる。これを打破するのが、弱い関係のネットである。

「数検」は塾にとって、まさに弱い関係を築くツールとして開発されているのである。大手の学習塾はそのことに気付いているのか、比較的採用する率が高い。

「数検」がどのような点で、塾にとって弱い関係になっているかを述べる。

「数検」の1級・準1級に合格したものが、「数検」の行う一定の講習を受けて「数学コーチャー」という資格を得ている。「数学コーチャー」は教育より学習という立場で学びの場を観ている専門集団である。

彼らの活躍の場はなんと学校の先生方の学習支援であり、地域の学校に赴いて生徒の学習指導を手伝っているのである。学校は彼らを先生のアシスタントとして気軽に活用することができる。数学に関しては、小学校・中学校の先生方より、「数学コーチャー」のほうが遥かに高い専門知識を有している。事実、小学校の先生方が「数検」1級を受検しても合格はまず難しい。中学校の先生方が受検しても合格できるのはほんの一部の人であろう。

しかし大切なことは、学校の先生方のネットは教育について互いに強い関係を有したネットワークだということである。

これに対し、「数学コーチャー」は教育について弱い関係を有するネットワークで構成されている。しかるに、学校は大いにこれを活用することができるのであり、その結果、学校は劇的に変化する。事後調査の結果、ある小学校の算数好きの割合が以前の50%台から70%台に向上した。2年後、その小学校は「数検」グランプリで「文部科学大臣賞」を授与され、現在もこの学習支援を活用し続けている。

ある組織にとって、その組織と弱い関係にある集団の活用は組織の目的とする結果を劇的に飛躍させる力をもっている。そのことは数学的にも証明されているのである。

学習塾に対しても同様のことが言える。塾の講師はいずれ、その学習塾と強い関係を持ってくる。そうしなければその学習塾の講師として使いものにならないからである。必然的に強い関係集団になる。

ところが、「数学コーチャー」は生涯学習の発展に資する専門集団として輩出されているのである。生涯学習市場はいまだ学習塾市場に対して弱い関係にある。よって、彼らを学習塾の支援に活用するならば、その学習塾に劇的な変化を齎(もたら)す可能性がある。
つまり、彼らの背中には生涯学習市場が広がっているからである。

改正教育基本法に生涯学習の理念が明記されたことを考えると、これから生涯学習市場が徐々に広がってくることが予想される。

ちなみに「数検」は、生涯学習社会の発展に資するために開発された制度であり、そのことが、全国の学校12,000校余の団体受検に結びついていると理解している。

学習塾市場と生涯学習市場がまだ弱い関係にある間に、これを自塾に合うかたちに市場デザインすることが肝要である。

知っている方も多いと思うが、毎年開催され、日本で最も参加数の多いイベントは「生涯学習フェスティバル」である。このイベントは各県を回り持ちで開催されており、学校動員も盛んに行われている。

「数検」と組んでの出展も可能であり、学習塾単独での参加も可能だと思われる。平成19年は岡山県で開催されたが、平成20年の10月には福島県で開催される予定である。この生涯学習フェスティバルも学習塾にとっては弱い関係のイベントだと判断される。

学習塾が弱い関係の発展性を意識して例えば、「数検」−「生涯学習フェスティバルへの参加」−「大義名分のもとでの地域学生と学校の先生との弱い関係づくり」−「数学コーチャーによる支援」−「確たる信用と専門指導」−「学校との共存関係の確立」等々を、生涯学習の観点から醸成すべき時である。

弱い関係が学習塾に劇的飛躍を齎す旨を認識し、今後の展開を計画すべき時である。

生涯学習社会と学習塾経営の核心

生涯教育から生涯学習に理念の転換がなされ、平成元年、第1回生涯学習フェスティバルが千葉の幕張メッセで開催されて、既に18年の歳月が流れた。

この間に、生涯学習の概念も大きく変化し、平成18年12月、生涯学習の理念が改正教育基本法に明記された。これに沿って、現在の教育施策が疾風の如く検討・整備されつつある。全国学力調査の結果から学習指導要領の改訂になる一連の流れも然りである。

生涯学習市場も飛躍的に拡大することが予想される。生涯学習というと社会人教育をイメージしがちであるがそうではない。子どもとその親をまとめて学習活動に導く方法、生徒と塾または学校の先生をまとめて学習活動に参加させる方法など、さまざまな形態が考えられる。

「数検」では「かがやく算数・数学講習会」を各所で開催し、活況を呈している。そこには子どもと親が大勢参加してくるが、その親たちには「数学コーチャー」や「知のパスポート」「Intellectual Passport」についてお話させていただいている。親たちは即生涯学習の対象者であり、親たちにどういう知を提供できるか一考する時でもある。

学習塾が実質的に社会貢献できるかどうか、その核心が生涯学習社会との強い関係づくりにある。これは、私立大学や私たち検定事業者が目指す経営戦略でもある。学習塾も大学も私たち公益団体も、教育界にかかわる限り変わるはずもない。

生涯学習の核心は表彰にある。学習塾でがんばった子どもの親にどのような形態の表彰がふさわしいか判らないが、子育ては最高の教育であり、生涯学習の華であることを気づかせていくことが重要かと思う。親がいなくとも祖父母が見事に子育てを成し、その子が成績優秀ならば祖父母を表彰すべきである。塾長が高田ならば、高田賞を創設してこれを普遍的にすれば、受賞した者は生涯こころに残り、その塾を誇りにすることであろう。生涯学習とは、生涯こころに残る自らの誇りであり誉れである。

学習塾が社会に貢献し、卒業生がこれを誇りにするようになれば、その社会貢献度にふさわしい対価が報われるものと考える。

これが、地域社会と生涯学習を核にした強い関係づくりであり、共存する学習塾のあるべき将来像ではなかろうか。

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