今回は,平成19年4月15日検定6級・7級の2次:数理技能検定に共通問題として出題された記述式問題の答案の分析です。これらの階級の主な受検者は,6級が小学校6年生,7級が小学校5年生です。
この問題の出題の意図は,「1人あたり」の意味を把握しているか,また表を見てその知識を応用できるかを問うところにあります。与えられた数値を丁寧に検討できるかがポイントです。
世帯人数が5人までは人数が増えるほど1人あたりの使用水量が減りますが,6人になると再び増えることを把握するのは,小学生には難しいだろうと予測されました。
問題作成時点での予想では,世帯人数が1人から3人程度までの1人あたりの使用水量を計算して,答えとしては「正しい」と答える受検者が多いと考えました。
その予想通りに間違った解釈をしている受検者が圧倒的に多くいました。「正しい」という理由として多かったものは,「使用水量÷世帯人数で1人あたり使用水量を求めると,世帯人数が増えるほど少なくなっているから」でした。このように答えた受検者は,6人世帯のときは,5人世帯のときよりも1人あたりの使用水量が増えるので,世帯人数が増えるほど,1人あたりの使用水量も増えるとはいえないことに気がつかなかったということです。3人世帯や4人世帯までを計算し,それを結論としてしまったために起こった間違いです。
また,「使用水量÷世帯人数で1人あたりの使用水量を求めると,世帯人数が2人より多いとき,1人世帯の8.4m2より少なくなる」と答えた受検者が多くいました。これは,「世帯人数が増えるほど,使用水量が減る」の意味が読み取れていないための誤答です。「1人世帯の使用水量に比べると,2人以上の世帯の1人あたりの使用水量は少ない」という結論を導いてしまったことになります。
一方,「正しくない」という理由として多かったものは,「世帯人数に比例して,使用水量も増えていくはずだから」というような内容です。これは,表についてはふれずに予想で答えを導いています。そして,世帯人数と使用水量が比例するという誤った結論に到達しています。
また,「世帯人数が増えるほど,使用水量が増える」という答案が多くみられましたが,これも1人あたりの使用水量についてはふれられていません。
正答達成率は6級,7級ともに10%前後でした。この問題のように,受検者にとって初めて出会ったタイプの問題ですと,学習を重ねるて定着を図るということができませんので,階級による差がでなかったようです。
また,6級,7級ともに無解答の受検者がおよそ10%いました。ここでいう無解答とは,解答欄が未記入のものです。この数字を多いとみるか少ないとみるか。前回5級,4級,3級の記述式問題の調査結果を提示しましたが,無解答率は5級10%,4級6%,3級3%でした。問題が6・7級とは異なりますので簡単には比較できませんが,これを参考にすると無解答率が10%というのは高いということになりそうですが,他で実施されている記述式問題のなかで無解答率が高いものは15〜20%を示しています。今回の「数検」の問題は,6級,7級の受検者にとってかなりの難問だったと思われます。そのことから考えれば無解答率10%はそれほど高い数値ではないでしょう。むしろ90%の受検者が解答を書いたということから問題に真剣に取り組んでいることが分かります。
しかし,正答達成率の低さから考えると,たかしさんの発言の背景を理解すること,表を全体的に見ること,質問を正確に読み取ること,自分の考えを的確にまとめることが,やや苦手なのだろうと感じられます。データを分析し検討する際、規則からはずれた値、例外のように見える値からその事象の本質が分かる場合があります。慣れない問題ではあるでしょうが,分析や表現は大事なことですので,このような力をもっとつけてもらいたいと思います。
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