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2007/9 塾ジャーナルより一部抜粋

塾から訴える教育再生
(社)全国学習塾協会新会長が語る

     
塾はあくまでも学校の補完であり、民間教育の一環という認識を受けなかった冬の時代から、学校と協力し、生徒中心の学習指導を行う独立した教育機関であると認知される時代へと変貌した現代。塾業界の雪解けが始まった今だからこそ、塾の立場から日本の教育の在り方を発言していく必要があると、社団法人全国学習塾協会新会長・伊藤政倫氏は語る。

塾と学校が提携し本当の教育を目指す時代へ

社団法人全国学習塾協会 会長
伊藤政倫(KSK進学塾 塾長)

「塾は民間教育の基盤を為すものそれを伝え、発言していきたい」

── 会長就任おめでとうございます。新会長になられた経緯から教えていただけますか。

伊藤 前会長の任期満了に伴い、新会長にという言葉を今年2月頃からいただいておりました。私自身、4年間に渡って前会長を副会長の立場から補佐してきた経験があり、全国学習塾協会が塾業界を代表して発言する時代が到来したことを感じておりましたので、自らその先陣を切ろうと会長に立候補しました。この7月1日の理事会で厳正な選挙の結果選出いただき、正式に就任致しました。

── 塾が発言する時代とは。

伊藤 本協会は昭和63年に通商産業大臣(現経済産業大臣)の許可を受けて設立されたことから、指導内容よりも、塾業界がサービス業の一環として、地域社会や一般消費者に向けて何をしていくべきかを考えることが多かったように思います。そのため、塾の自主基準となる業界内のルールを作成し、法律面などを整える使命を中心に活動していました。しかし、設立20周年を来年に控えた現在では、その作業も一段落しており、今後は塾こそ民間教育の基盤を為すものであることを伝え、教育に関してさまざまな発言をしていきたいと考えています。

── 協会や塾の立場が変化してきているということですか。

伊藤 いえ、時代が変化していると言った方がいいですね。今の教育が抱える諸問題について教育再生会議が設立され、論議されていますが、そこで発言しているのは大学教授や一般企業の方など、それぞれの道では活躍されていても、教育現場をあまりご存じない方ばかりです。したがって、現場の声が反映されていないし、現場も彼らの声を聞こうとしないのが現状です。一方で、塾に対する一般の方々の認識は、昔の拝金主義的なイメージから、学校とのコラボレーションを通じて、生徒の学力を高め、支える役割を担うものに変化しています。塾側もビジネスとして経営を続けていく限り、利益を考えることは確かに必要ですが、それ以上に教育にかける熱意は高く持っています。こういった現状を理解してくださる大学や学校関係者など、塾業界以外の教育関係者や知識人の方々は年々増加しており、塾で行われている教育方法に協力の声を上げていただいています。近い将来、学校と塾の間にあった壁がなくなり、一人の生徒を導くために互いに手を組むことが可能な時代が来るかもしれません。現在は私学を中心とした協力ですが、今後は公立校とも生徒の情報交換を通じ、子どもたちに余計な負担をかけない同じ方向性の指導を進めることができるでしょう。この時代の変化を、塾側から政府や各教育再生機関に発言するために、全国学習塾協会が動く必要があるのです。

── 生徒にとっては嬉しい時代の到来なんですね。

伊藤 ええ、まだ理想の域を出ていませんが、一刻も早く現実化するためにも、協会は学校と塾の双方と話し合い、子どもにプラスになるような指導方法を開拓していきたいですね。その考えで実際に研究しているのが、子どもの学習履歴の作成です。

── それはどのようなものですか。

伊藤 現在、中学校から高校にかけて、進学する際に内申書が前の学校から送られてきます。しかし、その内容は教員や学校によって大きく異なるため、入学する生徒の指導は少なからず混乱をきたします。それを避け、スムーズな学習を促すために、生徒の学習履歴を一定の方法で残しておき、どこの教育機関でも一見すれば生徒の情報が把握できるようなシステムを構築していきたいと考えているのです。アメリカでは職務経歴書について一部マニュアル化が行われていますが、それを修学に応用すれば、学校だけでなく生涯学習分野でも使用できるでしょう。公的補助をもらい、全国の学校などで実際に動かすには、まだ長い期間を要すると思われますが、協会でのシステム構築の研究は着々と進んでいます。

── 確かにそれがあれば、生徒たちや学習現場の混乱は避けられますね。

伊藤 そうです。細かな対応が可能な塾が中心になって作成すれば、現実化できる非常にシンプルなプロジェクトなんですよ。しかし、今までは学校や教育委員会といった生徒を指導する側中心の考えで教育を進めてきたために、この発想がなかった。しかし、これからは子どもが中心で、周囲がそれにどう関わっていくかという方向へ教育が変化していきますから、こういったシステムが必要になってくるのです。実際にある私立中高の先生方からは、内申書の代替になるものとして可能性があるとの返事をいただいており、当面は限定された地域で進めることになりますが、今後は公教育を含め、全国的に広げていきたいと考えています。

── 塾の役割がまたひとつ、新たに産み出されたわけですね。

伊藤 そうですね。これに限らず、今後の教育再生においても、あくまでも子どものために教育を行うというスタンスを崩さなければ、どのような面からでも堂々と話ができると思います。学校で、より良い授業が行えるように学校教員を指導することも視野に入れています。例えば、今多くの学校で習熟度別授業を取り入れていますが、習熟度で分けられた生徒にどのような指導を行えば、最もプラスになるかがわからずに戸惑っている現場もあります。特に小学校では5年生以上になると、塾に通っている子と、そうでない子とのレベル差があり、そういった子どもたちへの指導方法も、塾と学校が連携することで解決できるようになるでしょう。

── 今後はどのようなことに対して発言していこうと思われていますか。

伊藤 以前に政府が行った調査では、国民の約7割が『確かな学力を付けてくれるのは学校より塾や予備校であると考えている』という結果が出ています。これは、学習塾にとっては、大きな自信となります。しかし、同時に責任の重さも受け止めています。子どもたちが塾に来る時間は限られているので、充分にその期待に応えられているか、と考えるのです。また、一方で、「塾には行かせたいが、費用負担が大きい」と悩む家庭も増えています。そのために教育バウチャー制度の導入等を訴えたいのですが、塾側からこの声を上げると、「やはり自分たちの利益向上が目的か」と疑われてしまうでしょう。ですから、私は塾費用などの教育減税を訴えます。

── 家庭の塾費用負担を軽減するための減税ですか。

伊藤 はい。年末や年度末の申告時に、生命保険の領収書があれば税控除の対象になるでしょう。人生に大切なのは保険も教育も同じですから、塾の領収書があれば税控除できるという制度を提案します。これは親の負担を軽減するものであり、塾の受け取る費用とは関係ないから、塾業界が利潤を追っての訴えだとは考えにくい。ですから、政府としても実践しやすいと思います。ただし、その訴えを通すためには、学習塾だけでなくスイミングスクールやピアノ教室などの民間教育全般がともに声を上げる必要があると思います。

── それはなぜですか。

伊藤 生徒はさまざまな夢を持っています。そして、やるからには世界的なピアニストになりたい、プロ野球で活躍したい、水泳でオリンピックに出たいといったエキスパートを目標にするでしょう。しかし、五輪選手やプロスポーツ選手が、学校のクラブ活動や体育などの授業だけで、世界に通用する実力をつけることができますか。ほとんどの選手や芸能活動家は、学校外で特訓し、実力を磨くのです。政府が世界に誇るような人材育成を願うなら、そのエキスパート教育を実際に行う民間のクラブをバックアップし、子どもが自らの力を磨きやすくする必要があります。これは、勉強でも同じです。基礎学習や躾などの情操教育、社会教育は学校が、個々の科目の学力アップは塾が分担して行えば、高い専門能力を持つ人材を育成できるのです。そのためにも、教育減税を実践していただきたいと考えています。

「生徒や保護者の生の声を伝えるアンケートを実施」

── 全国学習塾協会主催での大規模なアンケート調査が行われましたね。(別頁に記載)

伊藤 はい、小中学校在学中の通塾している生徒や保護者2万人以上を対象に、今の教育再生会議で取り上げられている内容を始め、非常に細かな項目でアンケートを行い、回答を得ました。協会として発言しても、今のままではやはり塾側の一方的な意見だととらえられかねません。しかし、アンケートの結果があれば、生徒や保護者といった消費者が考えていることを、協会が代弁している証明になるのです。今まで、このように生の声を伝えるアンケートは実施されておらず、そういった意味でも大きな一歩であると考えています。

── アンケートの中で、特に着目される項目は何でしょう。

伊藤 現在、全国の小学校区で放課後の子どもの安全で健やかな活動場所の確保として、学校を開放する『放課後子どもプラン』が政府で審議されています。これは夕方まで学校内で勉強を含めたさまざまな指導を行うといったプランなのですが、親世代の多くが参加させたいと考えているのに対し、子どもたちは行きたくないと答えているのが特徴的ですね。また、夏休みの短縮や土曜授業の復活においても、子どもたちと保護者の意見が逆転しています。この結果と、先ほどの税金控除と合わせたものは、マスコミで大きく取り上げられました。特にNHKでは全国放送で放映されています。また、文部科学省や内閣官房教育再生会議担当室、経済産業省などの関係各省庁にも送付してあり、今後の動向に期待しています。

── 協会としての新しい取り組みは、他にはどのようなものがありますか。

伊藤 先に述べた教育履歴プログラムのシステム構築の他に、いろいろな教育ツールの開発にも取り組んでいます。その中で実際に始動するのが、学習塾講師集団指導2級認定です。

── 目的や内容を教えていただけますか。

伊藤 今までの学習塾は学生講師やアルバイト講師が多く、保護者としてもこのレベルなら通わせたいといった明確な線引きがありません。そのために、学習塾講師能力評価システムを作成し、表示することで、生徒や保護者の塾選びの基準としたいという目的から導入を検討、実施することになりました。この12月には最初のラインとなる2級検定を開催します。さらに1級認定システムを構築し、単に学習指導だけでなく、生徒を引きつけ、伸ばす塾人としての能力を持つかどうかを認定します。この検定試験は、受験しないと塾を運営できないというものではありませんが、地域から信頼を得るためのひとつの手段として、各塾が認識し、受験していただければ良いと考えています。また、毎年10月の塾の日には、さまざまなイベントや講演会を行っていますが、来年は20周年でもあり、全国からカリスマ講師を招聘し、指導技術を競う競技会を開催しようと現在企画中です。こういった企画を協会が主催することで、教科指導の学会を作るなど、新たな教育分野の研究へつないでいきたいですね。

── 非常に多くの企画を実践されているのですね。

伊藤 そうですね、最終的には、学びの各分野で優秀な人材を育成したいと考えています。野球のイチロー選手は、世界の舞台で努力することの素晴らしさを示しているでしょう。協会が頑張ることで、塾や勉強界でのイチローを輩出できればいいなと思います。それを見る子どもたちは、勉強することで決してガリ勉と言われ揶揄されることはないんだ、かっこいいことなんだと思うようになる。そうすれば、今のような教育衰退期は免れるはずです。協会として教育の活性化を図るためにも、今後もさまざまなことを手がけていきたいと考えています。

── 今後の活躍を期待しております。本日はありがとうございました。

 
― 一部抜粋 ―
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