昨年、私は「7人の多角的提言」で、子どもたちをめぐって、結果として学習塾と学校との共存共栄の道が必ず開かれるという私の考えを、1987年臨時教育審議会・最終答申以降の実践を通して述べさせていただきましたが、その考え、気持ちは現在でもいささかも変わっておりません。
しかし、一方で私の気持ちの中で大きく変化してきたのは、それぞれの立場からの教育改革への関わり方への大きな懸念です。大手学習塾が、区単位で実施している公立学校での補習授業をチラシに掲載し、塾の宣伝に活用してみたり、区の教育委員会が、補習を学習塾に丸投げしてみたり、税金で運営されている学校とは思えないような、なりふり構わない動きが最近、特に目に付くようになりました。まさにかつての国鉄が民営化して、JRになっていった頃の様子が彷彿とされます。
今、子どもたちをめぐって大きな地殻変動が起きています。失われた10年と言われた1990年代、よもや絶対に倒産しないと思われた銀行が、北海道拓殖銀行をはじめとして、多くの銀行、証券会社が破綻し、日銀がゼロ金利政策を導入し、大手15行に約7兆5千億円もの公的資金を注入するなどして、景気の回復を図った結果、昨年景気回復を宣言し、ゼロ金利政策が解除されるまでになりました。しかし、その代償は非常に大きなものがありました。ライブドア・村上ファンド事件にもみられるように、株価を意図的につり上げ、株価が上がったところで売り抜け、利益を得るという不正な取引、不正な決算によるIT企業の急成長およびインサイダー取引など、金融資本主義の持つ問題点が浮き彫りになりました。このすさんだ空気が子どもたちに与える影響は大なるものがあると思います。
大人社会の歪みが子どもたちを変えていく時代に突入したのです。従って、学校で起きているいじめ・自殺は学習塾にとっても決して無縁ではありませんし、学校は学校、塾は塾というように異なる姿を子どもが見せる時代は、とうの昔に終わったことを学習塾の教師たちは知っています。とりわけ私たち中小塾では、2002年から始まった「ゆとり教育」による学力低下を是正するため、自らの生き方をかけて子どもたちを教育し、保護者と子どもたちをめぐって語り合わなくてはなりません。
そこで重要になってくるのが、塾長自らが研鑚し、塾講師、特に将来学校教師を目指して塾で教えている講師の成長を保障することだと思います。このことが冒頭に書かせていただいた子どもたちをめぐって、学習塾と学校との共存共栄への道につながっていくと思います。
― 一部抜粋 ― |