世情のマイナス共通要素
とかく普及率需要を推進する業界や、競争の少ない業種・業態、各種組織におけるサービスの質は低い。
IT関連、役所、病院などはさしずめ典型的な例として挙げられよう。
IT関連では、例えばハードもソフトも共にトラブルが多いし、そのフォローも顧客の不評を買っている。
「役所の隣に、もし民間の同じ機能を持つ施設を作ったらどちらに行きますか?」と尋ねたら、役所の人たちがこぞって「皆さんそちらに行くでしょうね」と答えることからも容易にその実体がわかる。
病院についても多くは患者の修理工場となり、流れ作業で端から矢継ぎ早に片づけ、処理するシステムと化している。「心を持つ人=患者」の対応という概念が失われつつある。
いずれも「片づける」「処理する」「効率を上げる」ことに力を注ぎ、総体的に無機質になっている傾向が強い。
こうした世界は、競争が激しくなると必然的に淘汰されるのは過去の例が示している。
その過程で発生する多くの共通要素は値引き合戦であるが、値引き合戦は不毛の争いであり、最後まで値引きし続けることはできない。行き着くところ無料になってしまうからである。そこまで行かなくとも、値引き合戦は資金力のあるところしか生き残れない。
いま、企業間取引(B to B)においては、インターネット上の合い見積が進んでいるが、これも値引き合戦に拍車をかけている。
内容の検討をほとんど行わないままに、価格・コストだけを優先して決めるやり方の多くは、結局のところ事件・事故を引き起こしている。乗用車、鉄道、航空機、建築物、給湯器、プール、エレベーターなどのケースを見れば、いずれも容易にわかることである。
しかし、個人にしろ企業にせよ、価格が安くなければ商品・サービスを購入しないグループもあるが、付加価値、価値観さえ伴えば、価格には固執しないグループもある。
そのいずれか片方、ないしは両方に、それぞれの特性に合わせて取り組むのが大人の姿勢である。
すべてを決めるのは顧客
ガス・電気・水道代や家賃、給料など、すべてのコストを負担してくれているのは顧客である。給料もトップが払うのではなく、顧客が支払ってくれているが、顧客不在ではどのような世界的規模の企業であっても存続できない。
つまり業績が低迷、ないしは下降線をたどっているのは顧客から見放されている証拠だ。
どの商品にするか、どのサービスを選ぶか、どの店に行くか、どの塾に行くか、再び購入するかどうかを決めるのは、すべて顧客である。
だから「どのようなモノを作れば売れるか」「どのようにして売ろうか」と考えているようではまずは売れない。
顧客が心の底で望んでいる「何か」をキャッチしない限り売れないのである。
その点、いま世間に受けているのは以下のようなポイントとなる。
1.価格競争
これは値引き合戦ではない。
例えば100円均一ショップ。これは99円、98円、97円と価格を下げる競争をしているのではなく、あくまでも100円は定価である。10分1,000円の床屋は、一般の理・美容業界から「あれは値引きだ」と言われているが、決して値引きではない。新しい工夫を凝らしたビジネスモデルなのである。その面から言うと、既存の理・美容業界では4,000円、5,000円で2時間かけているが、10分で1,000円なら2時間では1万2,000円である。一体どっちが値引きしているのだろうか。
2.高級・高額
富裕層なる表現があるが、しっかりした定義があるわけではない。従って、一部は上手くいっているが、多くは失敗している。結局のところ、単に「高額」をねらっているだけだからである。本来なら、高級・一流と表現し、定義しなければならない。高級・一流の特性を一部挙げると、『品質』『技術』『伝統』『普遍性』『国際性(狭い地域においても)』『常に考える』などがその内容を示すキーワードである。
3.ブランド
何も世界中で有名というばかりではなく、一定エリアや特定された分野におけるブランドも増えている。一人の人間がブランドのケースもある。「あの人がいるから、あの人だから」は個人のブランドである。
4.カスタムメイド・オーダーメイド
今時の飲食店でも「その魚を煮て欲しい、焼いて欲しい」など、顧客の要望に応じるお店はファンが多い。塾でも1対1の個別指導をしているが、さらに生徒の特性に合わせた人生の進路、志を共に考えるまで行っているところは少ない。多くは受験のための具体策である。ご存知のベネッセコーポレーション・小学生向け英語学習は、苦手をつぶす方法ではなく、学習を意識させる仕組みで三段階のステップアップ(教材ビーゴBE−GO)は、いずれも95%以上の継続率を続けている。
5.互いに創造する
例えば「この麺に最も合う麺つゆを作って欲しい」ということで、製麺会社の技術者と麺つゆ製造会社の技術者が共に最高の麺つゆを開発する方法が急ピッチに成長している。
こうして開発した内容は、他社に販売してはならない契約となり、その結果、顧客は離脱しないし、利益率は高いからである。
― 一部抜粋 ― |