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2006/1 塾ジャーナルより一部抜粋

「学習する組織」への進化

小松 郁夫(こまつ いくお)
1947年秋田県生まれ。東京教育大学大学院博士課程修了。東京電機大学助教授を経て、1993年10月より国立教育研究所学校経営研究室長に就任。その後、2回にわたって英国バーミンガム大学客員研究員となる。現在は国立教育政策研究所で教育政策・評価研究部長と初等中等教育研究部長(併任)を務める。また、横浜市教育改革会議委員(学校運営部会長)、川崎市教育改革推進協議会(座長)、足立区学校支援委員会(委員長)など、各自治体での教育改革に関与している。〈主な著書〉『学校経営の刷新』(共編 教育開発研究所)、『諸外国の教育改革と教育経営』(共編 玉川大学出版部)、『現代教育行政の構造と課題』(共編 第一法規)など。
 
変化の激しい時代には外界と柔軟に対応し、双方向で成長し、進化することが求められている。このことは個人にも求められるが、組織にも求められている。経験や環境の変化などに対応して、組織自身が新たな知識や技術を獲得し、迅速に行動することが求められている。さらに、組織内外の変化に興味や関心を持ち、思慮深く変化を観察することが重要である。そうすることによって、組織自らが担っている使命を自覚し、適正な価値観を獲得したり、生成することが求められている。そのような組織を「学習する組織Learning Organization」と呼んでいる。「単純、唯一な正解がない」と言われている現代社会にあっては、「何をするか」ではなく、「どう進めるか」が重要になってきている。すなわち、組織内外の要件と不断の対話を重ね、双方向で、ネットワークを活用しながら、自らも発展や進化を目指す組織が成功する組織となる確率が高い。

1.「合意形成主義」の意義と限界

教育界は「合意」や「参加」を非常に大切にする社会である。課題が発生すると、みんなで話し合い、じっくり時間をかけて、組織成員の意思がまとまるまで、話し合いなどを積み重ねることが多い。丁寧に話し合えば必ず分かり合える、というのは教育界を特徴づける神話のようなものである。組織内で意思一致が図られたら、それはまさに「鬼に金棒」のようなことであって、期待される成果は大きいものがある。

しかし、課題そのものの把握が不明確で、複雑化する組織環境の下では、課題を構成する要因が多数絡まっていて、相互関係も複雑化している。学力向上とか、生活指導の充実、などといっても、その内実はそんなに単純ではない。たとえば、「学力」そのものについても多様な定義や解釈があり、その得体の知れない「学力」を向上させようということは、出発点そのものからして、どちらに向かうのかで意見が異なることが多い。これでは、一体的に課題に取り組むこと自身が困難である。

「鍋ぶた型」といわれる教育組織では、賢明に合意形成に努力しても、費やした時間に比例して、良質な意思決定がなされるとは予想しにくい。私は何が何でもトップダウンが最適である、と述べているのではない。決定されるべき課題の軽重にもよるが、決定までに消費される時間とエネルギーを含めて組織における戦略や戦術決定の適否を決定することが重要ではないか、と考えている。変化の激しい時代はどんなに最良な意思決定をしても、タイミングがずれていたら、そのプランはほとんど笑いものにしかならないことを恐れている。

2.組織を変革するための要件

変化が求められる時代には保護者や児童・生徒などの顧客ニーズ、優れた教師として求められるスキル、多様化する価値観などの変化に迅速に対応するために、学校や塾などの組織自身にも変化なしでは、存続すら危ぶまれる状況がやってくる。一体、どのような変化が生き残ることができ、どのような不作為が問題を深刻化させる危険性があるかを考えてみよう。

まず、一人ひとりの改革に向かうエネルギーのあり方を指摘したい。教育改革などを論議する教育委員会の会議などに参加したり、学校内での改革論議を伺っていると、異なる2つのエネルギーが見えてくる。ある改革課題を論議している場面を想像して欲しい。

1つは、そうはいってもこんな心配がある、こんな問題が予想される、ヒト・モノ・カネが不足している、こんな生徒や家庭だから改革は難しい、といった話をする人たちがいる。要するに改革に対して消極的な意見が先に出る人たちである。こうした思考パターンの人は、自分に火の粉が降りかからないように、他人や一見自分には関係なさそうな組織的理由を列挙して、何とかして面倒なことは避けたい、改革的な仕事は他の人が自分とは無関係に行って欲しいと主張する人たちでる。消極思考の組織風土が主力な学校である。

もう1つは、いろいろ難しい問題や課題があるけど、組織をこう変えなければならない、そのためにはこうしていきたい、そのためには自分自身もがんばるという話をする人たちである。話題を常に自分に引きつけて論展開をする思考パターンの持ち主である。

前者のような、まるで他人事のように客体的に話をする人は、組織変革の力にはなりにくい性格や思考回路の持ち主である。それに対して、主体的な話し方をする人は課題に対して、当事者感覚を持っており、自分の中に所属組織や関係者に変革のための働きかけをする力を持った人であると期待できる。組織の変革に対して、いわゆるチェンジ・エージェント(変革の意義や必要性を関係者に伝え、その動きを推進していく役割を果たす人。組織変革の伝道師的役割の人)になる可能性を秘めた人である。

3.個人と組織の結合 ーシステムシンキングのすすめー

組織を変革するためには、いくつかの準備条件が必要になる。まず組織を変革するにはその組織の目的や役割を明確にする必要がある。組織にはミッション(組織の存在理由)やビジョン(組織の理想とする姿)がある。そしてバリュー(組織において遵守・保護する理念や行動指針など)やゴール(ビジョンを多様な視点から設定したもの)がある。ゴールは学力向上であったり、遅刻者を減らすことであったりする。

組織を変える方法には何段階かのプロセスがある。日常的には「改善」があり、これは円滑な活動に関して障害となる点を除去したり、不具合を一定時にまとめて修復するというニュアンスがある。それに対して、「変革」や「革新」は質的な変化を求め、時には全く違った理念や手法で組織を変えていくことを意味する。この違いをシステムシンキングという思考方法を使って考えてみる。

システムシンキングはロジカルシンキング(分析的思考、要素還元的な線的思考)とは異なり、組織を「複雑系Complex System」とみなす。この場合、組織内には複数の要因が存在し、その要因が有機的に絡み合っており、個々の要因の積み重ねでは組織の機能は見えてこないものという認識がある。複雑系の観点は、組織は全体としてまとまって機能する時にその役割を最大限に発揮できるものであるという発想に通じる。ホリスティックな非線形的な思考ともいわれる。つまり、数学で定義されるように、「線は点の集合」であり、連続性を持ったものであるのに対し、システムシンキングは非線形なので、分析された個々の要素を線上に単純につなぐことはできず、突然変異的に進化したりするものであるという性質を持っている。遺伝子や細胞のことが解明されても、それらの要素から創られている生きた人間が解明されたことにはならないという点に通じる観点である。大切なのはそれを担える人を見つけ出し、人事管理面で評価することである。

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