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2005/11 塾ジャーナルより一部抜粋

教育改革は「評価」の視点で

小松 郁夫(こまつ いくお)
1947年秋田県生まれ。東京教育大学大学院博士課程修了。東京電機大学助教授を経て、1993年10月より国立教育研究所学校経営研究室長に就任。その後、2回にわたって英国バーミンガム大学客員研究員となる。現在は国立教育政策研究所で教育政策・評価研究部長と初等中等教育研究部長(併任)を務める。また、横浜市教育改革会議委員(学校運営部会長)、川崎市教育改革推進協議会(座長)、足立区学校支援委員会(委員長)など、各自治体での教育改革に関与している。〈主な著書〉『学校経営の刷新』(共編 教育開発研究所)、『諸外国の教育改革と教育経営』(共編 玉川大学出版部)、『現代教育行政の構造と課題』(共編 第一法規)など。
 
「改革」が共通論点だった総選挙も終わって、いよいよ本格的に教育改革に着手しなければならない時が来た。構造的改革、官から民へ、事前規制から事後チェックへ、ほとんどの先進諸国が国内での対立を含みながらも、総じて共通して取り組んだ改革がこうしたスローガンで語られたものであった。


1.新公共経営論による改革

今、中心となっている改革論の理論的な根拠は、一般的に「新公共経営論」(New Public Management)と総称されているものである。この理論は1980年代の半ば以降にイギリス、ニュージーランドなどのアングロサクソン系諸国を中心に公的活動(行政活動)の現場を通じて実践されてきた革新的な行政経営論、公務活動論である。論者や政策によって、実際はいろいろな特徴があるが、代表的な論者である大住荘四郎が『日本型NPM』(ぎょうせい)や『ニュー・パブリックマネジメント』(日本評論社)などにまとめている内容によれば、一般的には以下の4つのコンセプトからなると言われている。

1. 業績や成果による統制
2. 市場による統制
3. 顧客主義への転換
4. ヒエラルキーの簡素化

2.顧客重視と多様性の保証

すなわち、その趣旨を教育場面に即して考えれば、児童・生徒や保護者の意思を尊重、重視する顧客中心主義、学校の選択制や特色づくりなどを求め、適度の競争的環境を整えた状況で教育サービスを提供する市場主義、事前の規制をできるだけ排除し、事後チェックや評価を重視する結果主義や評価主義、できるだけ官僚主義を廃し、企画・立案機能は中央に残しながらも、サービスの分権化を進め、個々の組織の自主性や自律性を尊重する現場主義などの内容を持ったものである。
全国的な動向として考えれば、この政策は、一方で膨大にふくれあがった財政赤字の解消や累積債務の増大問題を解決しなければならないという大きな政治課題への対応策であり、他方で多様化し、複雑化する国民・市民のニーズにできるだけきめ細かく対応しようとする手法である。全国画一的なサービスを均等に提供するのではなく、地域や個人の要望に応じた、様々な環境を整備し、民間企業などで活用されている経営理念や改革手法を可能な限り適用することでもって、学校教育のような公的活動の効率性、効果性、有効性などを高めようとする試み全体を総称したものである。

成熟した社会における伝統的な活動の抜本的な見直しであり、保護者や児童生徒、学生を公的サービスの受動的な受給者から主体的で、自己責任を重視した利害関係者(ステイクホルダー)と捉え、そうした人々の参加や協働型によって、新しい社会システムを開発しようとする革新的な考えの登場と見ることもできる。
これまでのように、法律や規則などで決められていることを遵守すれば、公務員の職務は勤まると考えられ、創意工夫が疎んじられていた時代から、法や制度の趣旨を尊重しつつ、どのようにしたら最大の効果が上げられ、国民の満足が得られるかを絶えず指向する21世紀社会に移行しようとしているのだと見なすことができる。その際にモデルとなったのが、民間部門における様々なマネジメント手法である。今、日本も含めた先進諸国で進んでいる学校改革の要諦は、この新公共経営論の理念の現実化である。

3.多様な顧客の希望に対応する少子化時代

人々の多様なニーズに柔軟に対応し、豊富なメニューを用意して、顧客満足度(CS)を向上させようとすると、サービスを受ける側を意識した活動が中心となる。すなわち、あらかじめ想定された人々のニーズを推察し、共通・画一的な作業手順などを想定して活動するのではなく、いわば、各現場でのお客に合わせた仕事が求められることとなる。
従来の学校教育は、教育の機会均等原則を尊重する視点から、全国どこでも同じようなサービスが受けられるように、きちんとした制度を作る手法や施策が優先的に行われた。その結果、全国どこでもそれほど質の変化がない、一定水準の教育が保障されるようになり、急速に優れた教育サービスが普及した。特に、義務教育制度の普及といった大きな社会改革にとっては、中央主導型のこの方法がきわめて有効な成果を上げることが出来た。
しかし反面でこの場合は、当事者が意図しているかどうかは別にして、教育現場で創意工夫をする意欲を減退させる機能を持つことが多い。「レシピ」を利用しての料理の提供は、お客の好みに柔軟に対応する職人芸のような最適サービスを提供するものではない。それよりも、誰がやってもサービスの質に大差がなく、お客が安心してまあまあの満足が得られることシステムである。人々の希望に違いがない場合は、それでも良かった。
今や近代的な学校制度がスタートして、すでに一世紀以上が経っている。「邑に不学の戸なく、家に不学の人なからしめん」とした時代の苦労を経て、現在はむしろ少子化で、学校や学級が小規模化し、一部では地域の中心の学校を統廃合する時代に至っている地方も少なくない。こうした時代には、そのシステムだけでは多様なニーズや個性に応じた教育の提供は困難になってくる。既製品よりは、多少高価でもオーダーメイドをかっこよく着こなしてみたいという欲求が人々に芽生えてくるのである。

4.事前規制から事後チックへ

NPM論から派生する最近の教育改革の政策では、「事前規制から事後チックへ」という改革手法の流れが主流を占めるようになりつつある。それは長い歴史を経た公共サービスの場合、とりあえず人々の求める内容を漏れなく提供する時代から、多様化し、個に応じたサービスの提供を要求する傾向が人々の間で強くなって来ていることに対応したものである。そうした人々の要求の変化を見て取るならば、多少高価でも、従って自己負担を多少してでも、より質の高い、より自分に合ったサービスを希望することとなる。何しろ、その費用を負担しているのが納税者であり、サービスの受け手となる者が児童生徒、保護者であるからに他ならない。学習者起点の公教育サービスの提供ということになる。問題は、どのような事後チェックを用意するかである。

 

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