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2005/9 塾ジャーナルより一部抜粋

株式会社立ウィッツ青山学園高等学校開設記念式典
── 知らないと危ない「塾にかかわる法律」を知る ──

  2005年7月31日(日) 於 リゾートパラデュー夢(三重県伊賀市)
主催 株式会社ウィッツ
協賛 株式会社ウィン・株式会社修学社・NPO法人教育支援協会・民間教育連盟
 
     
 

教育特区を活用した株式会社立定時制・通信制高校「ウィッツ青山学園高等学校」が9月8日、三重県伊賀市に開校する。設置者は株式会社ウィッツ。大阪を中心に学習塾を展開する株式会社ウィンの子会社である。校舎は旧青山町立の小学校を借り受け、教室や寮などを整備して使用する。
その開校記念式典が7月31日(日)、同校関係者や伊賀市職員ら約140人が出席して開かれた。式典では、畑康裕校長が「21世紀を代表する学校にしたい」と挨拶。会場から大きなエールの拍手が送られた。式典後は学校見学会も開かれ、改修を終えたばかりの校舎が披露された。

ウィッツ青山学園高等学校は、ひとづくりのあり方として「意育」を、教育のあり方として「共育」を掲げている。「意育」とは、自ら選択、決断できる力を養う教育である。「 how to do (どのようにしてやるのか)」ではなく、常に「 why to do (なぜするのか)」を問いかけ、自分に責任と自信を持って生きていける人間を育成する。
そして「意育」を通して、生徒にかかわるすべての人が成長することを「共育」と呼ぶ。
学校の形態は、午前・午後の「多部定時制」と、インターネットを活用した「通信制」の併修。英語を除く主要科目は、主にインターネットを利用して学習するため、自分の目標や進捗度合い、さらに生活リズムにも応じた授業を受けられる。
「ひとづくり」を教育目標とすることから、地元の協力を得て農業体験・経済活動・ボランティア活動など多彩な体験学習も行う。 また英語教育を重視し、海外の大学へ入学できる道も用意している。「定時制」「通信制」ともに全国から生徒を募集。定時制は全寮制で、募集定員は1学年20名。通信制は、同200名を予定している。

■開校記念式典

記念式典は、株式会社ウィンの梅津雅美取締役理事長の主催者挨拶により幕を開けた。梅津理事長は「『意育』により、判断力を持つ子どもを育てていきたい。その夢を実現するためにも株式会社立の学校として黒字を目指す」と決意を述べた。
続いて元青山町長であり、このほどウィッツ青山学園理事長に就任した猪上泰理事長が挨拶に立った。同理事長は「教職員が生徒と寝起きを共にするという、教育の原点に立ち返った本校の姿勢は保護者に強い安心感をもってもらえると確信しています。この地に本校の礎を築くため、職員スタッフをサポートしていきたい」と語った。
来賓を代表して、中井ひろし衆議院議員と今岡睦之伊賀市長が祝辞を述べた。中井議員が「地元の国会議員として、高い理念を掲げられた高校の開校を喜ぶと同時に、地元もお手伝いさせていただきたい」と述べると、今岡市長も「これが本当の教育だと、この地から全国に発信していただきたい」と開校を祝った。
この後、畑康裕校長(株式会社ウィッツ取締役・NPO法人教育支援協会理事)が挨拶に立ち、「9月8日、私たちは建学の精神でありミッションでもある『意育』を掲げ、高校を開校します。同時に、これからが勝負となる来年度4月生募集に向けスタートを切ることになります。私たちの教育理念にコミットしてくれる若者たちに、ぜひ入学して欲しいと心から願っています」と述べた。そして「まだ見ぬ生徒たちのために、21世紀を代表する学校をつくります」と力強く宣言。会場からは一斉に拍手がわき起こった。
続いてプログラムは「乾杯」へと移った。音頭をとるのは株式会社ウィンの森本一会長。ステージに立った森本会長は、大学時代の恩師から自分の代わりにと学習塾を託され、恩師が望んでいた「塾だからこそできる自由な教育」を実践してきた思い出を語った。そして学校づくりへと歩んできた、決して平坦ではなかった道のりを振り返り、「夢をあきらめなかったから、皆様のおかげで今日この日を迎えられました」と列席者に感謝の意を表した。続けて「ウィッツ青山学園高校が地域に貢献し続けることを願って」と、乾杯の音頭をとった。
しばらくの歓談の後、教育をテーマにしたミニシンポジウムが行われた。コーディネーターを務めるのは、教育評論家として広く活躍され「カバゴン」の愛称で親しまれている阿部進氏。ウィッツ青山学園高校の顧問でもある。

■シンポジウム 
「日本初の試みが担う役割とは」

パネラー(順不同・敬称略)
鳥羽水族館 館長 中村幸昭
文化庁文化部長 寺脇研
NPO法人教育支援協会 代表理事 吉田博彦
コーディネーター 
NPO法人教育支援協会特別顧問・ウィッツ青山学園高等学校顧問 阿部進

豊かな人生を送るための教育

阿部 最近、校長の畑さんが私に電話かけてくると必ず、最後に一言、「阿部さんと私は一蓮托生ですから」と付け加える。私は彼に命を預けた覚えはないんですが(笑)。それにしても畑校長の悲壮な決意が伝わってきます。
本日はパネラーの皆さんにそれぞれのお立場から「思いのたけ」を語っていただきたい。それが、ウィッツ青山学園高校へのエールにもなると思います。
最初にお話いただくのは、株式会社である鳥羽水族館の中村館長。昭和30年に水族館を設立し、一代で世界規模にまで育て上げられた方です。

中村 私は昭和3年4月1日、鳥羽の海産物問屋の家に生まれました。子どもの頃は身体が弱かったため、祖母と2人で町から遠く離れた山の中の一軒屋に暮らしていました。回りに遊び相手がいないので、自然と動物が友だちになりました。その時、人間も動物も魚も皆、同じ自然界の生き物だという感覚を持ったのだと思います。
大学を卒業して朝日新聞の学芸部に勤めていたのですが、母の病気をきっかけに鳥羽の実家へ戻りました。当時ミキモト真珠島がオープンし、その観光客がうちの生け簀の魚を見に来ていました。生きた魚が珍しいのです。
日本人は魚を食べる民族ですが、どれだけ生態を知っているかというと、案外知らない。それで、啓蒙したいという気持もあり、昭和30年に鳥羽水族館を設立しました。当時は「青二才がやったって3年ももたない」と言われましたが、黒字経営を続け今年50周年を迎えました。日本一の通算入館者数を誇っています。
日本の動物園は公立と私立がほぼ半々ですが、公立はすべて赤字です。なぜかと言うと、「親方日の丸」だから。役所任せで経営努力をしないからです。
今日は教育の話ということですが、教育は人間だけのものではありません。動物も昆虫も皆、社会訓練という教育をしている。
例えば象は、お母さんのお腹の中に22ヵ月もいます。お母さんは4年に1度しか子どもを産めません。それで赤ちゃんが産まれると、大事に育てるために最初の1年間は甘やかして過保護にします。ところが2年目になると、お母さんもお父さんも叔父さんも叔母さんも、子どもの足を蹴り始める。「いつまで甘えてるの」とポンと蹴ると、子どもははっと気付く。自立し始めるわけです。
象の寿命はおよそ80歳です。年寄り象の死期が近づくと、その周りを若い象が囲み最期をみとります。年寄り象が倒れ息絶えるとお葬式。象たちは鳴き声を上げます。それから3ヵ月後、皆で再びその場所に集まり、残った象牙を鼻で巻いて湖の底に沈めるか、山奥へと運び去ります。人間の手に触れさせないためです。
動物は、生まれてから死ぬまでの生涯学習が徹底されています。このごろの青少年犯罪を見るにつけ、人間より動物の方がよっぽど賢いと思わざるを得ません。
人間は大自然の中で生きているのではありません。大自然に囲まれて、生かされているのです。ですから、お金や学歴ではなく、人間生物として豊かな人生を送れることが第一です。そのための教育です。
ウィッツ青山学園で、ぜひともそのような教育を進めていただきたいと考えます。

選択するための意志と意欲

阿部 昨年の学力国際調査の結果、日本の子どもたちの学力低下が明らかになったと、いま大騒ぎになっています。その矛先は「ゆとり教育」と「総合的学習」に向けられ、元に戻すべきだと盛んに論議されています。しかし、元に戻せば済む問題でしょうか。昔から日本の教育はすべて大人の都合で進められてきました。それをそうではない、学ぶ側の都合を考え、「自ら学び、自ら考える力」を育成しようというのが「ゆとり教育」や「総合的学習」の出発点でした。その立場から教育改革を進めてこられた寺脇文化部長。ウィッツ青山学園へのメッセージをお願いします。

寺脇 先ほどの中村館長のお話にありましたように、公立の水族館や動物園はなぜ赤字なのかという問題があります。それは魚や動物のためでも、お客さんのためでもなく、自分たちの都合で休みたいから休むというような運営をしてきたからだと思います。
長い間、行政サービスはすべて「官」の都合。そのうえ、公けのことは「官」でやる。「民間」には任せられないという考えでした。
ところが1981年に「土光臨調」がスタートし、徐々に規制緩和の動きが出始めました。
教育関係は、生涯教育の方から変化し始めました。例えば、図書館が日曜日に休まなくなったようなことです。
しかし、学校はなかなか変わらない。なぜなら、子どもは何をどうしたら良いかをうまく表現できないからです。
学校教育の改革が始まったのは、今から12年前。土光臨調から24年経っていました。しかも改革を始めて最初の6年間はほとんど進まなかった。その後ようやく、高校の総合学科開設に見られるように高校改革が始まりました。総合学科は日本で始めて、生徒が何を学ぶかを選べる学校でした。そして、一人ひとりの願いに沿った教育をしていくために、もっと違うタイプの高校があっても良いのではないかという流れが生まれました。
教育特区による株式会社立の学校は、「地方分権」と「民間」の2つの力が重なった非常に大きなできごとです。
21世紀は、自分の意志で生き方や社会のあり方を選択していかなければならない時代です。自ら選択するためには意志が、言い換えれば「学ぶ意欲」が必要です。そういう意味で「意育」を掲げるウィッツ青山学園高校に期待しています。

「意育」の可能性

阿部 昨年から文部科学省は「子どもの居場所づくり」をNPO団体など民間に推進するために、3ヵ年に限り予算を計上しています。今年度予算は87億6千万円。文部科学省が学校教育以外の民間に大きなお金を出すというのは歴史的できごとです。
そこで、長年にわたってNPO活動に取り組んでこられた吉田さん。学校経営という観点から、この高校の今後の見通はどうでしょうか。

吉田 今回のお話を森本会長から最初にお聞きしたとき、NPOで開設されるということでしたので、きっぱり反対しました。
理由は二つあります。一つは、いま学校教育を少し変えたところで、日本の教育全体に大きな影響を与えないということ。学校で何かすると、子どもはそれが嫌いになってしまう。学校には何かブラックホールのようなものがあるみたいです。私は、子どもの関心や意欲を高められるのは社会的な取り組みだと考えていますので、反対しました。
二つ目は、税金が公立の学校に投入されるので、勝負にならないことです。ところが森本会長は、それでもやると言う。さらにNPOではなく、株式会社立で、とのこと。それなら資金も確保できるだろうから、我々も応援できますと申し上げました。
しかし、そこにいたるまで私は何度も「無理ですよ」を繰り返していました。なぜなら、いま私学の多くは大学進学実績を伸ばそうと躍起です。そうでなければ保護者が子どもを預けないからです。そんな社会で、「意育」を掲げる学校が果たして私立の学校として成り立つのかが懸念されたからです。
今回、この高校の先生方を拝見して、ここでの教育は成功するだろうと確信しました。今後、より多くの保護者にご理解いただけるよう、我々も精一杯応援していきたいと思います。

阿部 力強いお言葉をいただきました。これでウィッツ青山学園高校の明るい未来も見えてきたのではないでしょうか。本日はどうもありがとうございました。
シンポジウムの後、畑校長より同校の「サポートソング」が紹介された。「サポートソング」とは、「お仕着せの校歌ではなく、子どもたちが卒業した後も口ずさめる歌」である。畑校長がロックアーティスト染谷俊氏の作品を熱望。オリジナル楽曲の中から4曲が選ばれた。染谷氏が畑校長の熱意に応え、同校のイメージに合わせて編曲した。
この日は、染谷氏のピアノ弾き語りにより3曲が披露され、会場の列席者はその見事なピアノ演奏とストレートに心に訴えかけてくる歌声に聞き入っていた。
演奏を終えた染谷氏と畑校長はステージ上で固く握手。大きな拍手に包まれた。
式典の最後に、同校で生徒と生活を共にする専任スタッフ10名が壇上に並び、畑校長が一人ひとりを紹介。そのなかにはネイティブの英会話教師の姿も見られた。いわば24時間、生徒と向き合い共に成長していこうとする若き教師たちに、会場からは惜しみない拍手が送られた。

■学校見学会

記念式典終了後は、マイクロバスで移動し学校見学会が行われた。
ウィッツ青山学園高等学校は、近鉄大阪線「青山町」駅より車で10分ほど。豊かな自然に囲まれた丘陵地帯にある。校舎は、昨年3月に廃校となった旧青山町立上津小学校(伊賀市北山)を借り受け、「意育」と「共育」に適したスタイルに改修した。校舎は鉄筋平屋の管理棟と鉄筋3階建ての教室棟とからなる。
管理棟には職員室、校長室、食堂などがある。校長室の奥にはドアがあり、畑校長が開けて見せると、ベッドを据つけた4畳ほどの居室。今年7月からこの部屋で寝起きしているという。管理棟と中庭をはさんで教室棟がある。教室棟3階には、パソコンで授業を受ける広々としたメインルーム、芸術室、各学年のクラスルームが配置されている。メインルームには100Mの無線LANを完備。快適なインターネット環境を実現している。また生徒は、ノートパソコンを持ち歩き、校舎内の他の場所で授業を受けることもできる。タイムスケジュールは、基本的に生徒が決める。
2階には対面授業用のライブレッスンルーム。丸テーブルを配置した英会話用の教室と普通授業用の2種類の部屋が用意されている。1階には図書・理科室がある。
教室棟には生徒の寄宿舎や職員寮も設置されている。「男子寮」は1階、「女子寮」が2階だ。寮は男女ともに5人共用部屋が6室並ぶ。したがって定員は男女各30名ずつ。室内にはそれぞれベッドと勉強机が用意され、カーテンで仕切って個人の空間を確保できる。室内にユニットバスも完備している。
見学会に参加した人々は、同校スタッフから説明を受けながら、校舎内を熱心に見てまわった。生徒と教職員が生活をともにし、「意育」を通じて互いに成長する。新しい高校教育が、この校舎を舞台に幕を開ける。

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