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2005/5 塾ジャーナルより一部抜粋

技術立国崩壊の危機 連載第4回 筒井 勝美
学力低下、もっと深刻に受け止めよう
〜2度もあった教科書内容の3割削減〜

筒井 勝美(つつい かつみ)
1941年福岡生まれ。九州大学工学部卒業。九州松下電器(株)入社、16年間新製品開発エンジニアとして、工場長として勤務。1979年円満退職。同年、中学校受験専門塾「九州英才学院」設立。その後、高校受験部門を加え「英進館」と改称。現在は、生徒数15,000人を超え、中学入試・高校入試ともに西日本トップの合格実績を誇る塾の館長。著書に『「理数教育」が危ない!』(PHP研究所)『どうする「理数力」崩壊』(PHP研究所、共著)がある。
 

「ゆとり教育」見直しを〜批判する教育学者たちの不見識

昨年末(‘04年12月)発表されたPISA(OECDによる国際学力調査)やIEA(国際教育到達度評価学会)による学力低下の結果を契機に、中山文科相が総合学習の見直しを等、ゆとり教育からの転換を発表しました。

学力低下を深刻に実感している塾や理数系の教育関係者をはじめ、朝日新聞の全国世論調査でも78%もの国民が中山文科相の改革案を歓迎しました。

一方、教育行政実務者の一部やそのブレーンである教育学者、評論家からは大臣に定見がないなどの批判も多く、ゆとり教育の抜本見直しが挫折するのではないかと危惧するところです。

以下は批判派の主な共通持論です。

  1. そもそも総合的学習はテストの点数ではなく、「生きる力」を目指すもので、臨時教育審議会以来の流れに沿ってきた。
  2. 学力低下問題が起きたらすぐ見直すのは、大臣としてあまりに定見と責任がない。
    〔上記(1)(2)は大阪教育大学教授 長尾 彰夫氏 教育課程論 朝日新聞より〕
  3. 総合的学習の効果を判定するには時期尚早である。
    (旧文部省役人、ゆとり教育推進者。現 文化庁文化部長 寺脇 研氏)

果たしてそうなのでしょうか?長尾彰夫教授や同氏と同意見の「ゆとり教育」見直し批判者に対し、ゆとり教育の実態を知る者として反論を述べます。

総合的学習が「生きる力」を養成するという発想は情調的、観念的なものであり、科学的には、まるで根拠のないものです。総合的学習が臨時教育審議会で議論された時、教科学習の内容や授業時間数、宿題、反復学習のための章末練習問題数などが、学校5日制や総合的学習を導入するために大幅に削減されました(小・中学の理数教科書内容の3割削減は、‘92年と2002年で2度も行われている!)。それらが学力低下を招くことは自明の理にも関わらず、それらの影響を科学的に検討した形跡がまったく見当たりません。“総合学習で「生きる力」をつける”はお題目であり、知力・学力低下の中、お遊びに近い総合学習・体験学習で「生きる力」を養成できると判断した臨時教育審議会も甘ければ、教育行政のブレーンである教育学者やマスコミ・世論を誘導してきたゆとり教育推進派の文化人、評論家たちの発言もまた同類ではないでしょうか。
ゆとり教育導入以来、教育学者や文化人主導による教育施策は前述の通り学力低下に繋がる事ばかりをやってきました。

私の25年を超える生徒指導の経験から考えても教科書内容の削減・低レベル化、授業時間の減少、宿題も出さず、家庭での勉強も求めず、健全な競争をも否定してきたゆとり教育の下で、もし学力が以前よりつくと言うのであれば、全世界の教育理論やすべての真理は崩壊してしまいます。それほど、矛盾に満ちたことを彼は言っています。

次に学力低下の指摘は昨年のPISAやIEAの結果だけではなく、すでに10年以上
前から起こっています。中山文科相が学力低下を何とかしなければと思ったのは、昨年の結果だけで判断したのではないと思います。

いくつか例をあげます。

まず、東京理科大の澤田教授。澤田教授は1975年と2000年の中学校数学の問題正答率を比較し、学力低下の実態を表しました(図表1)。各問題ともそれぞれ約3〜5割の低下となっており、学力が大幅に低下していることが分かります。また、京都大学経済研究所の西村和雄教授も著書「分数の解けない大学生」等、多くの著書や新聞各紙面によってデータを示し訴えてきました。東大の苅谷剛彦教授は、『科学』2000年10月号(岩波書店)の中で、文部省が1983年と1995年から96年にかけて実施した理科の共通問題での正答率の差を発表しました。19問中5%上がったものはわずか3問、下がったものは9問、変わらずが7問という結果でした。この事実をもとに苅谷教授は学力低下を明確に指摘しています。私も拙著『「理数教育」が危ない!』(1999年、PHP研究所)によって、塾の現場から見た学力の低下を指摘し、また、第14回・15回日本カリキュラム学会での研究発表でもデータを基に、“さらに進む学力低下”への警鐘と改善提言を行っています。

以上は、一例にすぎませんが、そのような具体的なデータが世に出ているにも関わらず、学力低下を頑なに認めようとしなかったゆとり教育擁護派の旧文部省役人や教育学者、評論家たちはまったくの不勉強、怠慢としか考えられません。授業時間数、教科書内容、自宅学習時間、宿題等の激減データを見れば、学力低下は起きるべくして起きた教育行政の失策、人害であります。

身内の失敗をあえて認め、ゆとり教育の転換をやらなければ日本の将来は危ういと決断した中山文科相の英断を歓迎すべきであって、学力低下問題が起きたら意見をコロコロと変えて、大臣には定見がないなどと発言する教育学者こそ、不見識だと思います。

甘い目標正答率にも届かなかった4県統一学力テストの惨憺たる結果

去る3月4日、福岡県教委が岩手県や宮城県など全国4県で実施した。「4県統一学力テスト」の結果を公表しました。小学生はほぼ期待した水準に達したそうですが、中学生は社会・数学・理科の3教科で50%台の正答率にとどまりました。また、4県とも論述形式の問題に弱く、問題に取り組むこともしない回答欄が空白の「無回答率」も目立ちました。小学理科では選択形式の62.5%に対して論述はわずか17.4%でした。また、中学数学の文章問題では正答率21%、図形問題でも51.7%と低い正答率となりました。

県教委はこの中学数学の文章問題に対し、「学習指導要領の範囲であり、70%程度の正答率を見込んで出題した」と述べています。

この事は極めて重大な意味があります。“あらかじめ設定された目標正答率”とは現行の学習指導要領下ではこれくらいの正答率はあるだろう、取って欲しいという期待通過率のようなものであり、恣意的要素が多分に含まれます。従って、この設定数字そのものが3割削減の学習指導要領にもとずく、現行カリキュラムの下で設定された、極めて甘い目標正答率です。それすら大幅に下回ったという結果を教育学者はおろか、教育行政もマスコミも国民も深刻に受け止めなければなりません。

さらに、このテストの結果は案の定、私が著書『どうする(理数力崩壊!)』や前号までにでも述べてきた通り、70%近くも削減された図形や証明問題、文章問題など削減幅が大きい箇所ほど正答率が低いというごく当たり前のことが実証されました。

更に進む学力低下!〜今の現象は前回1992年での3割削減の影響だ

1月8日(土)東大でのシンポジウム「世界の科学教育」での発表や前号までの本誌記事でも述べてきましたが、学習内容の3割削減は2002年だけでなく、1992年にも行われています。

今回の4県統一学力テストを受けた子どもたちは3割削減が2度も行われた現行学習指導要領の下で学んでいますが、2度目の削減は2002年に行われ、まだ2年しか経っていないのですから、今回のテストを受けた子どもたちの学力低下は前回の1992年に行われた削減の影響だと分かります。現行の3割削減が2度行われたカリキュラム下で学習している今の小・中学生はさらなる学力低下が危惧されます。前述した通り、子どもたちの学力低下は極めて重篤な状態であることを、文部科学省をはじめ全国民が認識し、あらゆる学力向上に向けた施策を同時進行で実施すべきだと思います。

経済の国際競争は激化し、科学技術は日進月歩で進んでいます。資源のない日本にとって、教育の充実こそ将来の日本を担う子どもたちに残さなければならない大人たちの責任です。

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