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2005/3 塾ジャーナルより一部抜粋

技術立国崩壊の危機 連載第3回 筒井 勝美
総合的な学習時間、是か非か

筒井 勝美(つつい かつみ)
1941年福岡生まれ。九州大学工学部卒業。九州松下電器(株)入社、16年間新製品開発エンジニアとして、工場長として勤務。1979年円満退職。同年、中学校受験専門塾「九州英才学院」設立。その後、高校受験部門を加え「英進館」と改称。現在は、生徒数15,000人を超え、中学入試・高校入試ともに西日本トップの合格実績を誇る塾の館長。著書に『「理数教育」が危ない!』(PHP研究所)『どうする「理数力」崩壊』(PHP研究所、共著)がある。
 

「総合的な学習の見直し」方針を中山文部科学大臣が表明

2005年1月19日、新聞各紙面に「総合的な学習の見直し」というタイトルが躍りました。日本の子どもたちの学力低下を目の当たりにし、「総合的な学習よりも国語・算数を中心とした基本的な教科の時間を確保する」として、中山文部科学大臣がゆとり教育路線からの転換の考えを示したのです。

学力低下を危惧し、「総合学習の見直し」に賛成の意向を示す現場教師がいる反面、一部の教育学者やほかの現場教師からは「総合学習は新設したばかりで効果がまだ出ないのは当たり前だ」「指導内容をコロコロ変えては現場が混乱する」などの反発も起こりました。

当初の文部科学省の目論み通り、子どもたちが総合的な学習によって勉強に興味をもち、自ら進んで学び、学力がつくのであればこんなに素晴らしいことはありません。

実際文部科学省が調査したところ、小学生の89%、中学生の78%が総合的な学習について「好き」「どちらかといえば好き」と答えています(下図表1)。

一方、保護者を対象にした調査では、「総合的な学習の時間」によって子どもが勉強するようになった、好きな教科ができた」という質問に60%以上の保護者が「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」と回答しています。(下図表2)。

総合的学習がもたらすさらなる学力低下への懸念

確かに実際の体験の中から学ぶことは色々あると思います。時間が無限にあるのであれば体験学習はやらないよりやった方がいいと思いますが、後述の通り限度をはるかに越えた授業時間や教科学習内容の削減を招き、知識教育を犠牲にした総合学習の時間の新設なのです。しかも、物事に興味を持ってもそれが学習へと発展しなければ、中途半端な体験はただのお遊びとなってしまいます。その上、知識が基礎になければ体験したことを新しく発展させたり、理解して頭に定着させ、応用に結び付けることは難しく、真の意味での興味や関心につながらないと思います。むしろ、楽しさだけを追及した体験学習が真実を曲げたり、知識がないばかりに理解できず、失望させる危険すらあるのです。

知識は普遍的であり、応用もききますが、体験は時代によって変わります。例えば、ピタゴラスの定理は紀元前から知られ、その真理は何千年経った今でも通用していますが、「火の熾し方」という体験はピタゴラスの時代と現代では大きく様変わりし、今後変わらないとも限りません。時代によって変わる体験をしたところで、普遍的知識ほど役にはたちません。必要なときに学んでも間に合うからです。

先ほど述べた文部科学省の調査結果では、子どもたちは総合学習を「好き」、「どちらかといえば好き」が多数を占めていますが、保護者の評価とは大きく食い違います。それは、数学の授業であったら数学の公式を覚えたり、問題を解く苦労などの負担がありますが、総合的学習には特に負荷がなく、楽しかったで終わるのですからほとんどの子どもたちが好きと感じるに決まっているからです。昔、私たちが宿題を課された数学の時間より、何の負荷もない美術の時間や社会見学、調理実習の時間を楽しみにしていたのと同じです。今の大学生の学力低下が顕著になった原因の大きな1つは1992年頃からの30%近くに及ぶ大幅な学習内容削減と、宿題を出さなくなったからです。さらに30%削減の現行の指導要領の下で教育を受けている今の児童・生徒たちが大学生になる頃には、さらなる学力低下が危惧されます。

中学生も感じている学力低下の危機

「昔よりも教科書の内容が削減され、完全週5日制も導入されている現在、子どもたちの学力が低下するというのは当然のことだと思います。教育現場を変えているのは大人です。私のような子どもには、こうした大人の決めた流れに逆らうことはできません」

これは2004年12月20日の読売新聞の読者のページに掲載された中学生の記事です。ゆとり教育導入以来、3回の学習指導要領の改訂で、小学算数や中学数学は教科書内容がピーク時の半分以上も削減されています(本誌‘04年11月号図表2、下図表3)。

特に問題解決能力や生きる力につながる論理的思考力を養う文章題や図形証明問題に限っては70%近くも削られています。1992年と2002年の2度の大幅な削減内容を総括すると、2つの重大な問題が浮かび上がります。まず、削減されたため最初から教わらない内容による空白部分の「逸失学力」と、残存内容でもマンガと空白で中味が乏しい上、平易で練習問題量が大幅削減されたことです。それに加えて、授業時間の大幅減と宿題の減少です。このような状況では基礎学力は低下するのは明白であり、総合的学習の目的である思考力・創造力の育成の機会を文部科学省自らが阻んでいるのです。

ようやく、中山文部科学大臣が小・中学生の学力低下も初めて認め、学力向上に向けた明確な方針が打ち出されたことは歓迎すべきことだと思っています。ただ、文部科学省の役人や教育学者の中に、前述したような10年以上も前からの学力低下を招く教育施策を知らないため、大臣の方針に対し、陰で抵抗している人物が結構いることを私は知っています。

知識があってこそ身につく「生きる力」〜早急なる知識教育への転換を

最近の脳科学の発達や認知心理学などの研究からも、多くの知識がなければ、知識をもとに推論へと発展させる問題解決能力、「生きる力」は身につかないことがわかっています。問題解決能力をつけるには、多くの知識を脳に記憶させ、必要に応じて知識を組み合わせ、出力することが必要です。そのためには知識を忘れないために反復練習や、多くの課題に多大な時間をかけて演習をしなければなりません。

また、子どもたちは知識が多いほど物事に興味や関心を持つ機会は多く、興味や関心がある知識ほどいつまで経っても忘れませんが、関心のない単純知識は忘れやすいのです。しかし、その単純知識でもその時はよく理解していなくても一度聞いた知識は後で聞くと、初回の時よりは興味や関心があるものです。しかも、その時役に立たないと思った単純知識が、後にその知識やその知識に関連して得た新しい知識が非常に役に立つことは多々あります。

つまり、子どもたちにとって将来どのような知識が役に立つかを予測することは不可能に近いことなのです。従って、子ども時代には出来るだけ多くの知識を吸収させること、負荷を与えてしっかり考えさせることもまた大切な教育であることを認識し、「詰め込み教育は悪」等と切って捨てるような教育行政は慎まなければなりません。
  実際の教育現場でも、すでに総合的学習の時間をほかの主要教科に振り替えている学校も少なくありません。PISAやIEA(国際教育到達度評価学会)の結果からも学力低下が明白になりましたが、もし、児童・生徒が塾に通わず学校だけの勉強だったらもっと悲惨な結果となったことでしょう。この程度の学力低下で済んでいるのは、塾や予備校による徹底した知識重視教育が寄与していることを認識し、早急なる真の教育改革に取り組んで欲しいものです。

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