第1部研修会「首都圏高校受験事情」
新教育研究協会 原 栄久氏
首都圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)では公立高校の入試改革が急速に進み、複雑化してきています。
この数年における主な変更点として、まず「学区制の撤廃」が挙げられます。東京は平成15年度、埼玉は平成16年度に撤廃されました。神奈川も来年度の撤廃を決定しています。
次に、第1回目入試が従来の中学による推薦から、自己推薦型へと移行してきていることです。生徒自身が自己PRを書いて高校に提出し、高校側はこれを選抜判定に加えます。
第2回目、すなわち学力検査を伴う入試では、一定の枠内ですが、学校独自の選考基準での選抜が許されています。
例えば神奈川県は各校で定員の20%を、独自の基準によって選抜できます。通常の選抜では内申を重視していますが、独自選抜は学力検査の得点と部活動の実績などの特記事項をからめて選考しているようです。
また学力検査においても自校作成問題を用いる傾向が広がってきています。平成13年度に日比谷高校が実施して以降増え続け、来年度は12校が実施する予定です。神奈川県においても来年度より、自校作成問題での入試が実施されます。
さらに学力検査と内申の得点配分の比率を変更できるようになりました。学校によって、内申と学力検査のどちらを重視するかを選択できるわけです。
従来の公立高校入試は、学区制のもとで共通問題により実施されていました。しかし、最近では各校の特色に応じた選抜方法へと変わりつつあり、私学に近づいています。
これら一連の入試改革に伴って、受験生の動きも変化しています。
相対評価から絶対評価への移行と自己推薦型導入により、第1回目の推薦入試応募者が増加。公立高校を志望する生徒の多くが、第1回と第2回の2度の受験チャンスを利用するようになってきました。
また、第2回目入試の合格率が下がっています。これは公立高校を受験する生徒が増えていることを示しています。要因としては、絶対評価によって内申点がアップしたため、公立高校に挑戦する生徒が増えたこと。学校改革で誕生した新しいタイプの学校に人気が集まっていること。さらに経済的事情が考えられます。
ところで、絶対評価については中学校間格差が問題となっています。特に学力検査を実施しない第1回目入試での影響が大きく、中学によっては、受験した8割の生徒が合格するところや、2割しか合格しないところもあり、大きな差が出ています。
公立高校の入試改革は、複雑化すると同時に大きな問題点を抱えていると言えるでしょう。
一方、私立入試においては併願可能な推薦入試が広がっています。学校によって、内申基準を下げて応募者数を増やしたり、逆に基準を上げて一定レベルの生徒を確保するなど、戦略は様々です。
また依然として共学化傾向も続いており、今春は8校が共学化。来春も数校が共学化を予定しています。
公立・私立ともに入試制度や内容が次々と変更され、複雑な様相を呈している現状では、常に新しい情報を得ながら進路指導を進めていく必要があると思われます。 |